卒業の日 #22 三月三日(最終回)
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校門の看板の前は、写真を撮る人が並んでいた。
カンナが振り向く。
「あ、智ちゃん。」
後ろには同じクラスの智花がいた。
「ひさしぶり。二月三月、ほとんど来てなかったよね。」
「入試あったしねぇ。」
智花の力の抜けた言い様に、カンナは笑う。
カンナの隣に立っている男性が軽く会釈した。
背が高く、落ち着いた雰囲気だ。
智花も小さく頭を下げる。
カンナが言う。
「うちのパパ。今日は、お仕事あったんだけど、今日だけ時間つくったんって。」
男性は苦笑する。
「無理やりじゃないよ。」
「ね、パパ、卒業式終わったら、お昼はあそこに行きたいな。」
「……いいよ。」
そうこうしているうちに、式が始まる時間になった。
*
卒業式は淡々と進んでいく。
――木内カンナ
名前が呼ばれた。
「はい」。
どんどん、クラスメイトの名前が呼ばれていく。
最後に総代が卒業証書をもらう。
後ろの席で、カンナの父がそれを見ていた。
ただ、じっと。
(カンナも、もう卒業か……)
*
式が終わった。
悲喜こもごものざわめき。
そうした中の最後のホームルーム。
担任の水野先生が話し出した。
「皆さんに、最後のお話をします。卒業と言うのは、ただ「終わり」ではないです。「終わり」があれば「はじまり」がある。新しい始まりのための区切りだとも思います。」
「先日、テレビでコンビニで働く外国の方がこんなことを言っていました。『みんな毎日、小さな卒業をしている』と。心に残った言葉です」
(小さな卒業か……)
こうして、ホームルームも終わった。
「カンナちゃん」
智花が話しかけてくる。
「記念に一枚写真いい?」
「いいよ!」
「智ちゃんのパパは?」
「うちは、卒業式だけ。引き継ぎのお仕事あるって」
「じゃあ、撮るよ」
カンナの父が、シャッターを切った。
「ありがと。カンナ。三年間楽しかった」
「こちらこそ。智ちゃん、結果教えてね」
「うん!」
こうして、カンナは学校を後にした。
*
「ね、パパ。お昼は約束したよね」
「そうだな。じゃあ、駅からタクシーを使うか」
カンナは、父と肩を並べて歩く。
後ろから、卒業生の男子二人が話しながら通り過ぎる。
「今日で、『LAST SAMURAI2』がサービス終了って知ってたか?」
「昔、よく遊んだよな。俺たちの卒業の日に終わりだなんてな」
*
カンナと父はそのまま歩いていく。
駅近くのコンビニの前では、外国人の店員が掃除をしていた。
「アリガウゴザイマシたー。」
少しだけ訛りのある日本語。
時々、使っていたがいつも対応が丁寧だった。
もう使うこともないだろう。
このコンビニからも卒業だ。
*
駅に着く。
タクシー乗り場に行くと、一台のタクシーが入ってきた。
乗り込む。
「どちらまで?」
カンナは、父の方を一度だけ見る。
そして、行き先を告げた。
*
タクシーは10分ほど走ると、目的地に着いた。
車が止まる。
ドアが開く。
二人で降りた。
大通りから、路地裏に入っていく。
そこには、一軒のカフェがあった。
『毎日が小さな卒業』
その言葉を胸に、彼女は扉を開けた。
カラン。
扉の鈴の音が鳴った。
そこは、優しい珈琲の匂いで包まれた空間だった。
(完)
📚ZAPPING POINT
智花の物語→#1 父の泣き顔
智花の父→#2 引き継ぎの付箋
この物語のはじまり→#12 物語が始まる日
コンビニ店員→#14 サヨナラ、ニッポン
「LAST SAMURAI2」→#19・#20
この物語の読者→#13 誰も知らない卒業
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いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。
物語があなたの癒しになれば幸いです。
チップはご無用です。一緒にドキドキしてくれた思いを伝えてくだされば・・・。それがうれしいです。