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卒業の日 #22 三月三日(最終回)

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校門の看板の前は、写真を撮る人が並んでいた。

カンナが振り向く。

「あ、智ちゃん。」

後ろには同じクラスの智花がいた。

「ひさしぶり。二月三月、ほとんど来てなかったよね。」

「入試あったしねぇ。」

智花の力の抜けた言い様に、カンナは笑う。

カンナの隣に立っている男性が軽く会釈した。
背が高く、落ち着いた雰囲気だ。
智花も小さく頭を下げる。

カンナが言う。

「うちのパパ。今日は、お仕事あったんだけど、今日だけ時間つくったんって。」

男性は苦笑する。

「無理やりじゃないよ。」

「ね、パパ、卒業式終わったら、お昼はあそこに行きたいな。」

「……いいよ。」

そうこうしているうちに、式が始まる時間になった。

卒業式は淡々と進んでいく。

――木内カンナ

名前が呼ばれた。

「はい」。

どんどん、クラスメイトの名前が呼ばれていく。
最後に総代が卒業証書をもらう。

後ろの席で、カンナの父がそれを見ていた。
ただ、じっと。

(カンナも、もう卒業か……)

式が終わった。
悲喜こもごものざわめき。

そうした中の最後のホームルーム。

担任の水野先生が話し出した。

「皆さんに、最後のお話をします。卒業と言うのは、ただ「終わり」ではないです。「終わり」があれば「はじまり」がある。新しい始まりのための区切りだとも思います。」

「先日、テレビでコンビニで働く外国の方がこんなことを言っていました。『みんな毎日、小さな卒業をしている』と。心に残った言葉です」

(小さな卒業か……)

こうして、ホームルームも終わった。

「カンナちゃん」

智花が話しかけてくる。

「記念に一枚写真いい?」

「いいよ!」

「智ちゃんのパパは?」

「うちは、卒業式だけ。引き継ぎのお仕事あるって」

「じゃあ、撮るよ」

カンナの父が、シャッターを切った。

「ありがと。カンナ。三年間楽しかった」

「こちらこそ。智ちゃん、結果教えてね」

「うん!」

こうして、カンナは学校を後にした。

「ね、パパ。お昼は約束したよね」

「そうだな。じゃあ、駅からタクシーを使うか」

カンナは、父と肩を並べて歩く。

後ろから、卒業生の男子二人が話しながら通り過ぎる。

「今日で、『LAST SAMURAI2』がサービス終了って知ってたか?」

「昔、よく遊んだよな。俺たちの卒業の日に終わりだなんてな」

カンナと父はそのまま歩いていく。
駅近くのコンビニの前では、外国人の店員が掃除をしていた。

「アリガウゴザイマシたー。」

少しだけ訛りのある日本語。
時々、使っていたがいつも対応が丁寧だった。
もう使うこともないだろう。
このコンビニからも卒業だ。

駅に着く。

タクシー乗り場に行くと、一台のタクシーが入ってきた。

乗り込む。

「どちらまで?」

カンナは、父の方を一度だけ見る。
そして、行き先を告げた。

タクシーは10分ほど走ると、目的地に着いた。

車が止まる。
ドアが開く。
二人で降りた。

大通りから、路地裏に入っていく。

そこには、一軒のカフェがあった。



『毎日が小さな卒業』


その言葉を胸に、彼女は扉を開けた。
カラン。
扉の鈴の音が鳴った。

そこは、優しい珈琲の匂いで包まれた空間だった。

(完)


📚ZAPPING POINT
智花の物語→#1 父の泣き顔
智花の父→#2 引き継ぎの付箋
この物語のはじまり→#12 物語が始まる日
コンビニ店員→#14 サヨナラ、ニッポン 
「LAST SAMURAI2」→#19#20
この物語の読者→#13 誰も知らない卒業

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一条 詩紋 いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。 物語があなたの癒しになれば幸いです。 チップはご無用です。一緒にドキドキしてくれた思いを伝えてくだされば・・・。それがうれしいです。