2025年夏の移籍が噂されるドイツ・ブンデスリーガ注目の若手逸材5選を紹介! FOKUS Bundesliga!!! #53
ドイツ・ブンデスリーガの若手逸材

ドイツ・ブンデスリーガは、潜在能力のある若手選手が活躍するリーグだ。赤字の許されない健全経営主義や、国内外の企業・個人による経営権買収を阻止する「50+1ルール」の影響で、比較的安価な給与と高額な移籍金収入を見込める若手選手の起用が重視されるためだ。また2000年代、2010年代には育成や戦術面での改革が行われ、インフラ整備や優秀な監督が生まれる土壌が整っていった。
ボルシア・ドルトムントに代表される育成・登用術に長けたクラブの存在は、まさにブンデスリーガにおける「若手主義」の象徴だ。近年は、圧倒的な資金力を誇るFAプレミアリーグやスペインの強豪レアル・マドリードCFに優秀なタレントを輩出している。カイ・ハフェルツ、アーリング・ハーランド、ヨシュコ・グヴァルディオル、ジュード・ベリンガム、オマル・マルムシュは代表格だ。
2024/25シーズンのブンデスリーガにも、国内外を代表する優秀な若手選手が多く在籍している。本テキストでは、優秀な若手選手のなかでも今夏の去就が注目される5人の若手選手に注目し、紹介していく。
Ⅰ. フロリアン・ヴィルツ

Florian Richard Wirtz
現所属:バイエル・レバークーゼン
生年月日:2003年 5月3日(21歳)
出身:プルハイム, ドイツ
身長:177cm 利き足:右足
2024/25シーズン:25試合 9ゴール10アシスト
契約期間:2027年6月30日満了
2024年、ラミン・ヤマルと並び、世界中でもっとも注目を集めた若手選手が、フロリアン・ヴィルツだ。2023/24シーズンにブンデスリーガを無敗で優勝したレバークーゼンの中心的存在で、自国開催のユーロ2024で開幕ゴールを挙げるなどサッカードイツ代表でも圧倒的な存在感で魅せた。
ヴィルツ最大の魅力は、ドリブルでの局面打開力。相手のディフェンスラインの前でボールを受けると、ターンやフェイントを織り交ぜながら、2〜3人手玉に取り、裏のスペースにスルーパスを供給する。独特な緩急で間合いを詰めにくいうえ、自らボックス内に持ち込んで得点を狙うこともできるため、対応が非常に困難だ。
ヴィルツが今夏にレバークーゼンを離れる可能性は、決して高くない。しかし問題となるのは、今年2月にジャマル・ムシアラとFCバイエルン・ミュンヘンが行った契約延長だ。ヴィルツと同じ2003年生まれのムシアラは、延長に伴って推定2600万ユーロとされる年俸を受け取るとされる。それに対し、ヴィルツが受け取る給与は推定450万ユーロ。大きな開きが生じてしまう。
現在の給与体系を鑑みるに、レバークーゼンがヴィルツに2000万ユーロ近くの給与を提示して契約延長する可能性は限りなく低い。そうなると無視できなくなるのは、マンチェスター・シティFCによるヴィルツへの関心だろう。1億3000万ユーロと噂されるヴィルツの移籍金を用意することを何の苦ともしないほどの金満クラブであり、給与面の問題もないに等しい。ヴィルツの今後の動向から目が離せない。
追記:6月21日、ヴィルツのリヴァプールFCへの移籍が発表されました。推定される移籍金は最大1億3700万ユーロ。プレミアリーグ王者での活躍に期待です。
Ⅱ. ヨナタン・ブルカルト

Jonathan Michael Burkardt
現所属クラブ:1.FSVマインツ05
生年月日:2000年 7月11日(24歳)
出身:ダルムシュタット, ドイツ
身長:181cm 利き足:右足
2024/25シーズン:22試合 15ゴール2アシスト
契約期間:2027年6月30日満了
ドイツ代表は、長らくCFCFの不在が大きな問題だった。その問題をティム・クラインディーンストとともに解決することが期待される選手がヨナタン・ブルカルトだ。今季のリーグ戦で望外の躍進を見せる1.FSVマインツ05最大の牽引役であり、クラブや世代別のドイツ代表でキャプテンマークを巻くなど、ドイツ国内で最も期待を集める若手選手の1人となっている。
ブルカルト最大の特徴は、前線で細かく動きながら得点に絡める能力。例えば、味方がサイドで好機をつくってクロスを上げた場合、相手の間隙をついてゴール前に走り込み、ヘディングや得意の右足のワンタッチから得点を奪ってしまう。また中央でカウンターに持ち込めた場合には、ブルカルト自身がドリブルでボックス内に侵入し、強烈なシュートから得点を狙う。
勢いやシュート技術を武器とするうえ、大柄ではないにも関わらず、ポストプレーで起点となれる体幹の強さを持ち合わせており、相手DFとしては対応が難しい。負傷が多い点は玉に瑕だが、それを考慮してもブルカルトに興味を持つクラブは多いだろう。2000万ユーロとされる契約解除条項は破格で、ドイツの主要クラブの関心が噂される。とくに多くの出場機会と高水準の給与を提示できるであろうアイントラハト・フランクフルトは、ブルカルトの目に魅力的に映るだろう。
追記:7月5日、ブルカルトのフランクフルトへの移籍が発表されました。ウーゴ・エキティケと後釜としてのブルカルトの活躍に期待です。
Ⅲ. ウーゴ・エキティケ

Hugo Ekitike
現所属:アイントラハト・フランクフルト
生年月日:2002年 6月20日(22歳)
国籍:ランス, グホン・テスト, フランス
身長:190cm 利き足:右足
2024/25シーズン:25試合 13ゴール4アシスト
契約期間:2029年6月30日満了
2024/25シーズンのブンデスリーガ前半戦におけるMVPを1人選ぶなら、誰もがオマル・マルムシュの名前を挙げるだろう。そのマルムシュと2トップを組み、フランクフルト躍進の立役者となったのがウーゴ・エキティケだ。フランクフルトのSDマルクス・クレーシェのお気に入りである彼は、昨冬にパリ・サンジェルマンFCからレンタル移籍で加入。リーグ戦5試合で4ゴール1アシストを記録し、今夏に完全移籍を果たした。
繊細且つしなやか、それでいて力強さもある同選手のプレーは多くのサッカーファンを魅了する。古豪スタッド・ド・ランスのユース出身のエキティケは、長身でありながらスピードに乗ってドリブルを仕掛け、相手を躱してフィニッシュするプレーを得意とするのだ。
また狭い局面でのプレーも苦にしない足元の技術を有しており、ヨーロッパリーグの第7節フレンツヴァローシュ戦で決めたターンからの得点は、名手デニス・ベルカンプさえ彷彿とさせる。ヨーロッパリーグのベスト16でみせたジャン=マテオ・バホヤとのワンツーでのアシストも見事だった。
圧倒的な足元の技術、スピードに乗って決めるフィニッシュ、味方と連携してのアシストなど、前線で多くの選択肢を持つエキティケの才能はリーグ内でも群を抜いている。プレミアリーグ方面からの興味関心が騒がれているなか、フランクフルトも移籍を容認する構えとの報道も出てきた。高額な移籍金が動くだろうことを考えれば、前線で起点となれるCFを欠くプレミアリーグの上位クラブが現実的な移籍先となるだろう。
追記:7月24日、エキティケのリヴァプールFCへの移籍が発表されました。推定される移籍金は8000万ユーロ。プレミアリーグ王者での活躍に期待です。
Ⅳ. ベンヤミン・シェシュコ

Benjamin Šeško
現所属クラブ:RBライプツィヒ
生年月日:2003年 5月31日(21歳)
出身:ラデチェ, スロベニア
身長:194cm 利き足:右足
2024/25シーズン: 25試合 10ゴール5アシスト
契約期間:2029年6月30日満了
シェシュコは、既に欧州の主要なクラブが熱視線を送る優秀なストライカーだ。同じくレッドブル・ザルツブルクが輩出したアーリング・ハーランドと並び称される驚異的な身体能力を持ち、豊富な得点パターンでゴールを量産する。高身長を活かしたヘディングに加え、DFBポカールのフランクフルト戦では相手GKケヴィン・トラップをダブルタッチでかわして得点するなど、器用な一面を併せ持つ。
また左右両足から強烈なミドルシュートを放つことができるため、ボックス内に引いて守る相手からも得点を狙える。長いストライドを活かしたスプリント能力も武器で、ドリブルでの持ち上がりやハイプレスへの参加などで攻守に貢献する。ロイス・オペンダやシャビ・シモンズとの連携も見事だ。今季のリーグ戦では、オペンダに2つの、シャビに3つのアシストを提供している。
身体能力を活かした理不尽な得点力に加え、足元の技術や味方との連携にも優れたストライカーは当然、移籍市場でも大人気だ。かねてから関心が噂されるマンチェスター・ユナイテッドFCなどのプレミアリーグの強豪クラブに加え、バイエルンも彼をターゲットの1人とみなしている。残り4年の契約期間があるとはいえ、RBライプツィヒは選手を留めることのみに重きを置くクラブではない。シェシュコの今夏の去就に大きな注目が集まる。
追記:8月9日、シェシュコのマンチェスター・ユナイテッドへの移籍が発表されました。推定される移籍金は総額8500万ユーロ。ユナイテッドでの活躍に期待です。
Ⅴ. ジェイミー・ギッテンス

Jamie Jermaine Bynoe-Gittens
現所属クラブ:ボルシア・ドルトムント
生年月日:2004年8月8日(20歳)
出身:レディング, イングランド
身長:175cm 利き足:右足
2024/25シーズン: 26試合7ゴール3アシスト
契約期間:2028年6月30日満了
「優秀な若手選手を育成し、高値で売却するリーグ」というイメージをブンデスリーガに定着させたクラブはドルトムントだが、現在の同クラブに所属する選手のなかで最も期待されるのがジェイミー・ギッテンスだ。2024年12月1日に行われた「デア・クラシカー」で、単独での仕掛けから先制点を挙げるなど鮮烈な印象を残したギッテンスは最早、リーグ最高の左ウイングと形容して差し支えない。
マンチェスター・シティFCのユース出身の同選手は、左サイドでボールを持つと、フェイントを駆使した右足でのドリブルと緩急を武器に相手DF2〜3人を突破する。またリーグ開幕戦となったフランクフルト戦での2ゴールに象徴されるように、フィニッシュの精度の高さも大きな特徴。左サイドでボールを持つだけで相手の脅威となれる特別な才能の持ち主がギッテンスだ。
母国プレミアリーグの強豪やバイエルンなど様々な興味が囁かれるが、3年近く残る契約を考えてもギッテンス自身が今すぐに退団を希望することは考えにくい。しかし問題となるのが、ドルトムントの順位である。ドルトムントがもしUEFAチャンピオンズリーグでの出場権を獲得できなかった場合、収益が大幅に減るため、すぐにでもまとまった資金を捻出する必要に迫られる。
ドルトムントの状況は、主力の1人であるユリアン・ブラントの放出が囁かれるほど深刻で、もしギッテンスに高額なオファーが来たとき、順位次第では放出を検討せざるを得なくなるだろう。またギッテンスとしても、若く、好調なコンディションを維持しているうちにチャンピオンズリーグでの経験を積みたいというビジョンがないわけがない。ドルトムントがシーズンの残りの試合をどのように戦うのか、目が離せない。
追記:6月6日、ギッテンスのチェルシーFCへの移籍が発表されました。推定される移籍金は総額5500万ユーロ。チェルシーでの活躍に期待です。
あとがき:広がりつづける「格差」

是正し難い格差、そういっても過言ではない。プレミアリーグのクラブとそのほかのリーグのクラブでは、放映権料による収益で絶対的な格差がある。チャンピオンズリーグのベスト8に残ったクラブをみてもわかるように、現在、プレミアリーグのクラブと対等に渡り合えるクラブは欧州内で7~8クラブほどしかない。
絶対的な収益を誇るレアル・マドリード、パリ・サンジェルマンFC、バイエルン、不安定な経済状況ながら高い実力を維持するインテル・ミラノ、FCバルセロナ、ドルトムント、この6クラブにアトレティコ・デ・マドリードとACミランを加えた8クラブが、プレミアリーグのクラブと渡り合える可能性があるだろう。
ただ上記の8クラブのうち、パリ・サンジェルマンを除く7クラブは決して安泰といえる経済状態ではない。個人的には、その表れが「欧州スーパーリーグ構想」だったのではないかと考える。フロレンティーノ・ペレスが顔役となったこの構想にはプレミアリーグのクラブも参加したので状況が複雑だが、構想の背景には高騰し続ける移籍市場の存在がある。移籍市場の高騰を招いているのは、間違いなくプレミアリーグのクラブだ。
プレミアリーグへの抵抗
チェルシーFCの移籍市場での常軌を逸した立ち回りや、マンチェスター・シティFC、アストン・ヴィラFC、ニューカッスル・ユナイテッドFCに代表される金満クラブの存在は、移籍市場でのバランスを大きく変化させた。最早、移籍市場でプレミアリーグのクラブと対等に渡り合えるクラブは、レアル・マドリード、パリ・サンジェルマン、バイエルン以外に存在しないだろう。
バイエルンがサディオ・マネ、ハリー・ケイン、ジョアン・パリ―ニャ、マイケル・オリーセをプレミアリーグから引き抜いた動きや、レアル・マドリードがトレント・アレクサンダー・アーノルドをフリーで獲得した動きはその象徴だ。ただ拡大し続けるプレミアリーグの収益を考えると、それが今後も続けられる可能性は高くない。実際、バイエルンは下部組織に投資し始めるなど、選手獲得に頼らない道を模索し始めている。
選手にとっても、プレミアリーグは夢の舞台だろう。給与面はもちろん、多くのタレントが集まるリーグで才能を発揮できれば、自身の評価を高めることにもつながる。ブンデスリーガから数多くの若手選手がプレミアリーグへ移籍するのは必然だろう。サンドロ・トナーリやグリエルモ・ヴィカーリオ、リッカルド・カラフィオーリなど、セリエAのタレントもプレミアリーグへ移籍する傾向にある。
ブンデスリーガが目指すべき「道」
ではブンデスリーガはどのような立ち回りをみせるべきか。私は「若手選手が活躍するリーグ」というアイデンティティをより強固にしていくべきと考える。実際、ブンデスリーガは数多くのタレントを輩出した実績があり、今でもその文化は継承されている。リーグ・アンやエールディビジなども似た評価を受けるが、リーグの競争レベルはドイツの方が明らかに高い。
ドイツは戦術面で独自性を有している。ドイツ代表監督にユリアン・ナーゲルスマンが就任したことで、代表レベルの選手や各クラブの戦術面は目に見えて改善した。若手のドイツ人選手の台頭も著しい。1999年生まれ世代はハヴァーツとニコ・シュロッターベックを除いてタレントが不足しているが、以降の世代はタレントの宝庫だ。
何より「50+1ルール」でリーグの独自性が保たれていることは、ブンデスリーガ最大の魅力だ。「50+1ルール」によってバイエルンがリーグタイトルを独占しているかのような論を展開する文章を以前noteで読んだが、それはまったく的外れな指摘だ。ブンデスリーガは、各クラブがそのクラブの文化と独自性を保つことに「価値」を見出しているのだ。
先進的な戦術を学べる点、優秀なドイツ人タレントと切磋琢磨できる環境、健全経営主義や「50+1ルール」に基づくファンから愛されるクラブ運営こそがこれまで多くの優秀な若手選手を輩出してきたのだ。そのアイデンティティを保ち続けることが、ブンデスリーガが目指すべき方向性だと私は考える。
読了していただき、ありがとうございます!
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