ハンジ・フリック(Hans-Dieter Flick):FCバルセロナを率いるドイツの「名伯楽」
ハンス=ディーター・フリック

Hans-Dieter "Hansi" Flick
FCバルセロナ 監督
生年月日:1965年 2月24日(61歳)
出身:ハイデルベルク, ドイツ
FCバルセロナ3人目のドイツ人監督

FCバルセロナには、ドイツ人が監督を務めた歴史がある。ヘネス・バイスバイラー(1975〜1976)とウド・ラテック(1981〜1983)。ドイツを代表する2人の名将が、ブラウグラナで一時代を築いた。そして2024年、FCバルセロナ史上3人目のドイツ人監督が誕生する。2019/20シーズンにFCバイエルン・ミュンヘンをUEFAチャンピオンズリーグ優勝に導いた名将、ハンジ・フリックだ。
フリックが率いた2024/25シーズンのFCバルセロナは、圧倒的な強さを誇った。財政難の影響もあり、シーズン前に獲得した選手は、RBライプツィヒのダニ・オルモの実質1人。それにも関わらず、リーグ戦では前季王者のレアル・マドリードCFを退けて優勝。コパ・デル・レイでもレアル・マドリードに決勝で勝利し、国内2冠を達成した。2人の先駆者が成し遂げられなかった偉業だ。
ドイツ人最高の「名伯楽」

フリックには監督として幾つか突出した能力がある。その1つが、選手の潜在能力を見抜き、自身の戦術に組み込む能力だ。バイエルン時代は顕著で、左SBだったダヴィド・アラバをCBに、WGだったアルフォンソ・デイヴィスを左SBに固定し、ワールドクラスとしての才能を開花させた。バイエルンの「10番」ジャマル・ムシアラをデビューさせ、トップチーム定着に導いたのも彼だ。
また、選手をモチベートし、能力を100%引き出す優れた采配能力も持ち合わせる。FCバルセロナ戦では途中出場したフェリペ・コウチーニョが古巣相手に2ゴールを決め、CL決勝パリ・サンジェルマンFC戦でもキングスレイ・コマンが古巣相手に決勝ゴールを記録した。選手の能力を見抜き、よく対話し、100%を引き出すことにかけては、フリックの右に出る者は存在しないだろう。
FCバルセロナで成し遂げた「偉業」

実際、フリックはFCバルセロナでも、その辣腕を遺憾なく発揮する。選手層が十分とはいえないなかで、マルク・カサド、マルク・ベルナル、ジェラール・マルティンといった「ラ・マシア」の逸材を積極的に起用。また、見放されつつあったフレンキー・デ・ヨング、ラフィーニャ、イニゴ・マルティネスを中軸に据え、過密な日程のなかでも勝ち続ける、強靭なチームを作り上げたのだ。
なかでも恩恵を受けたのはラフィーニャだ。加入後の2シーズンで20ゴール23アシストに留まった彼は、フリック監督が就任した3シーズン目に34ゴール22アシストを記録。プレスの先鋒として守備でも躍動したことで、バロンドール候補筆頭と呼ばれるまでに成長した。フリックは選手の能力を引き出し、シーズン開幕前に誰も予想できなかった成功をFCバルセロナにもたらしたのだ。
ハンジ・フリックの先進的な戦術

また、フリックが優れるのはマネジメントのみではない。戦術の面においても、彼は他の追随を許さない。「私はキャリアを通して、常にバルセロナを模範としてきました。」とフリック本人が語るように、フリックが展開する4-2-3-1は、ヨハン・クライフとペップ・グアルディオラの支配と攻撃的な精神を重視するサッカーに、ドイツ的なエッセンスを加えた先進的な戦術に裏打ちされている。
ウイングを基調とするサイドアタックと素早い攻守の切り替えによる支配的なサッカーで選手の能力を全面に引き出すスタイルは、ルイス・エンリケにも通じる部分がある。戦術面でもっとも恩恵を受けたのは、ラミン・ヤマルだろう。支配する時間が増えたことで、圧倒的な身体能力や得意のドリブルを活かせるようになり、2024/25シーズンは55試合で18ゴール21アシストを記録した。
「再現性」ある指導で成し遂げた偉業

フリックは、クラブのインタビューで以下のように語った。「私たちは選手たちの成長を支援するためにここにいます。100%の力で練習しなければ、100%の力で戦うことはできません。(中略)日々向上しようとする若いチームを見るのは素晴らしいことですが、経験豊富な選手たちにも成長したいという意欲が感じられます。彼らは競争を楽しみ、共に喜びを分かち合います。」(引用元)
フリックが見事な点は、その「再現性」にある。下降線を辿るクラブの監督に就任し、様々なコンペティションを戦い抜ける強力なチームに作り直すのは、容易な仕事ではない。彼は、それをバイエルンとFCバルセロナという2つの歴史ある強豪クラブで成し遂げたのだ。若く有望な選手を登用し、ベテラン選手の指揮を高め、先進的なスタイルをチームに落とし込む。素晴らしい偉業だ。
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