「行く資格がない」と思ってた文フリ。初めて行ったら散財したので、全部紹介する
あまり公言したことはないが、じつは大学時代に文芸サークルに籍を置いていた。
とはいえ、想像力が皆無で実体験ベースの私小説しか書けなかったわたしは、毎年文化祭にて500円で売る冊子のなかに一遍の短い小説を寄稿するので精いっぱいで、同期や先輩の“作家のたまご"たちが「文フリに出展します!」とTwitterで投稿するのをひっそりと見守っているだけだった。
それもあってか、「文フリ=才あるものしか出展してはいけない」というイメージがあったのだと思う。さらに、来場者として訪れることでさまざまな才能を目の当たりにし、「自分は才能がねぇ」という事実が突きつけられるのも嫌だった。いっちょ前にプライドだけは高い凡人である。
そんな文フリに10年越しに初めてやってきた。きっかけは、微力ながらインタビューで推しへの愛を語らせてもらった沼落ちZINE『Aila』である。

ME:IのMOMONA(笠原桃奈さん)について唾を飛ばしながら喋くったものが、まさかの巻頭を飾らせていただいており恐縮の極みである。ケンティーやSnow Manなどのアイドルを始め、宝塚やシルバニア、石焼ビビンパなど、ジャンルを越境してさまざまな「推し」への愛がギュッと詰まった濃厚な1冊。実際に桃奈ペンが手に取ってくれたらしく感無量である。
本が刷り上がったところで、編集のおきありちゃんに「郵送でも、現地での受け取りでも大丈夫ですよ」と言われ、「せっかくなら現地でもらおうかな…」と自然と答える自分がいた。即チケットを申し込む。
たぶん、心のどこかでは気になっていたのだ。文フリなるものが。あの聖なるイベントが、どんなふうに開催されているのか。この目で見てみたかったのだと思う。
・・・
結論、びっくりするほど散財した。

最近引っ越したばかりで、泣く泣く実家にたくさんの本を置いてきたのに、それをすべて回収する勢いで買ってしまった。
普段はnoteで書き手ばっかりやっているので、今日は読み手になって紹介していきたい。
結局大丈夫でした日記 / りょかち

まずはりょかちちゃん。IT企業を辞め、脚本家へと軸足を変えて活躍する彼女は、いつだってわたしの憧れである。今回の新刊は入院中の赤裸々な想いを綴っているそうで、「これがみんなに読まれると思うと今さらながら恥ずかしい…」と照れながら渡してくれた。わたしはわたしで彼女が入院していたことをちっとも知らず、恥ずかしかった。
みんなどうせすぐ死ぬのに、つかの間の時間、着飾ったり美味しいものを食べたりして、とても可愛らしい。みんな精一杯楽しく生きようとしていて、可愛い。どうせ死ぬのにね。
入院中にいろんな人の体験談を読み、「結局大丈夫でした!」という言葉で締め括られることを自分の励みにしていたという彼女の日記からは、死生観が移ろう様子が伝わってくる。(そしてちょっぴりシニカル)これからさまざまな病が待ち受けているであろう、アラサーのお守りにしたい。ほんまに他人事ではない。
働く女と生活と。 / 小沢あや

続いて小沢あやさん。こっそりお慕いしているハロヲタ仲間である。日々の暮らしの随所随所にハロー!が散りばめられていてにんまりする、スッペシャルな1冊。
彼女にとっては平凡な日常なのかもしれないけど、ものすごくパワフルに毎日動いていて、「大人でもこんなに遊んで良いのだな」と元気をもらえる。お仕事の傍ら、マンションを買ってリノベしたり、パーソナルジムに月に8回も通ったり、出張帰りに飲みに行ったりしていてパワーがものごっつい。
冒頭では衣食住を綴ったエッセイが収録されているのだが、彼女が衣食住においてさまざまなマイルールを設けていて、日々自分のご機嫌を取りながら生きているからこそ、遊べる余力があるのかもしれない。
一方で、なんで自分は何もしてないのにこんなに疲れてんねんと反省し、惰性でサブスクしているジムの予約をするなどした。
Letters / 伊佐知美・古性のち

旅をしている2人ならではの情景描写が素敵すぎる。波の音や森のざわめきが聞こえてくるような文章。そのくせテーマは「30代、どう生きていこう?」なので、絶賛アラサーのわたしに刺さりまくっている。
のちさんに「子どものエッセイ読んだよ。わたしもすごく悩んだ」と言われて、勝手に人生における先輩ができたような気持ちになった。先輩たちの実体験を胸に、わたしも突き進んでいきたい所存です。本を読みながら、思わず今の自分と年齢を照らし合わせてしまう。ふーん、35歳のときはこんなことを考えていたんだ。こんなことをしてたんだ。わたしもまだまだ軌道修正できるかもな。ってな具合に。
個人的には、「大学から付き合っていた彼氏が旦那です!」という、なめらかな人生に死ぬほど憧れているんだけど、一方で人のあたたかさも失うことの寂しさも知り、何度もズタボロになりながらもひとりで道を開拓してきたふたりだからこその格言が胸に沁みます。気付けばわたしも全然順風満帆ではない人生を歩んでいるので…(笑)。
この本を読めば「なんか大丈夫そうな気がしてくる」。そんな気がする。
あとかた / ひらりさ

新刊『まだまだ大人になれません』とセットで購入。じつは、ひらりささんのイスタンブール旅行記をベースにこの夏、イスタンブールでトルコ風呂やらワインバーやらにお邪魔させていただいたので、その感謝も伝えられました。実際にこの本のなかでもイスタンブール旅のことが書かれている。
それにしても、ひらりささんの日々のインプット量にはびっくりする。バレエやパーソナルジムにせっせと通う傍ら、映画や展示会に足繁く通い、漫画や本を貪り読む。何なら会社員としての仕事もあるし、文筆家としての仕事もある。どないなってるんでしょうか。
さらに、日記のなかにちらちらと潜む元彼の残り香が印象的で。無理に忘れるでもなく、上書きするでもなく、そこに佇んでいる感じが大変リアルである。「いつでもぉ〜探しているよぉ〜」とまではいかないんだけど、ふとした瞬間に出てくるあの幻影は何なのでしょうね。一生付き合いつづけなければいけないのかもしれない。(リアルタイムで3種類の元彼(の残り香)が日常でプンプン漂っている女より)
大人バレエ(ずっと)入門記 / 月岡ツキ

ひらりささんブースのお隣にいらした月岡ツキさん。じつはわたし、7歳〜17歳でバレエを習っていたことがあり、最近運動不足に伴って「バレエを再開しようかしらん」と思っていたところに飛び込んできた1冊でございます。
読んでみると、バレエを始めて週4〜7回レッスンをし、コンクールにも出て海外留学までしている(!)ということで、のめり込み具合がえげつない。逆にわたしの場合はなぜバレエを始めたのかも覚えていないし、なぜ10年続けていたのかもわからない。強いて言えば「やめるのももったいないから」という感じで、「バレエ楽しい!最高!」と思った記憶もないので、ツキさんの目に映るバレエが新鮮でたまらなかった。
「たしかに、レオタードって抵抗あるよな」「そういえばフランス語で指示されてんな」と当たり前のことに気付かされる。それにしても、ツキさんのバレエ愛というか根性には感服する。本当にすごい。わたしだったらコンクールの打診が来ても「無理っす」と言ってしまいそう。わたしのなかに眠っていた「バレエってどんな感じだったっけ」という記憶を呼び起こしてくれたので、早速近所の安いバレエ教室(1回¥2,000)の体験レッスンに申し込めた。一歩前進である。
意味よさらば / 古賀史健

いやもう…本じゃん!!!!!
…と装丁のすばらしさに感動し、帯をめくって隠された仕掛けを楽しみ、知られざる古賀さんの幼きころの夢や思い出、家族や趣味の話などをたっぷり堪能する。ライターならではのお話も度々出てきて(全然同じ土俵ではないけれど)うんうん、と頷いてしまう。「そう言えばこれを書きながら気付いた」と次々に新しいエピソードが飛び出してきて、古賀さんがエッセイを書く過程で内省しているというか、リアルに頭のなかを覗かせてもらっている感じがして面白い。
『意味よさらば』とは言い得て妙で、つねに「なんのために書くのか」を問われる商業ライターにとって、その問いを捨てることにはすごく葛藤があるんじゃないかと思う。
実際にわたしもnoteを始めたてのころ、「こんなもん、書いてどうするねん」と思いながら書いていた。(そう思いながらも書くことをやめられないから不思議である)でも、いつだって意味づけをしてくれるのは読んだ人なのである。これを読者として手に取ることができてよかった。とても本です。
カモを見てぶらさがる / 田中青紗

Xで拝見したことはあったけれど、実物を手に取ってみると想像以上に可愛らしい。ざらざらとした手触りにほっこりとしたイラスト、裏表紙のぷりっとしたカモのおしりが良い。
「椅子の子」とか「鴨ルーティーン」とか、思わず口ずさみたくなるような見出しが並ぶ目次に心躍り、全然奇想天外でも何でもない平凡な日常を見つめる眼差しを羨ましく思う。チャイをこぼしたとか、ぬいぐるみのタグが切れないとか、電車で聞いた小学生の会話が面白いとか。たったそれだけのことが、なぜこんなにもあたたかく心に残るエピソードに昇華されるのだろう…(いやそれがエッセイというものなのかもしれないけど)。
何気ない日常のなかに、青紗ちゃんの自意識がチラチラと見える。妄想したり、考え込んだり、名前をつけてみたりと、普段のひとり遊びを覗かせてもらっているようなエッセイ。
そんなこんなで、わたしの初めての文フリは幕を閉じた。
正直、「こんな薄い本が¥1,000も…!(原価率を考えると妥当なのだが)」と最初はビビっていたのだが、実際に目にすると「欲しい」と思うし、薄いからこそすぐに読めるし、中身はすんごいクローズドなことが書いてあって面白い。まさに一次情報という感じがする。さらに、著者さんと直接お話ができるのも楽しい。それも含めての文フリというイベントなのだなと思った。なぜ10年以上も行かなかったんだろう。
いかんせん体力がないので1時間半でヨレヨレになってしまったが、また次回も行きたい。「出展しないんですか?」と何度も言われたが、果たしてこのゴミ体力で、さらに大学時代にトラウマのある接客業ができるのかと言われたらマジで自信がなさすぎる。でも、ZINE自体は作ってみたいな〜と思うので、今日から日記(のようなもの)をつけている。
インターネット老人会なので書いたらすぐに公開する癖があるのだが、一生懸命我慢して書き溜められたら嬉しい。あまり期待せずに見守っていてほしい。
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