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IAEA International Atomic Energy Agency 1957- / 国際原子力機関 - 何に使われているかを確かめる

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国際原子力機関 核を「なくす」のではなく、「何に使われているか」を確かめる

核技術には、二つの顔がある。
原子力発電、医療、農業、研究など、人間社会に利用できる技術である一方、同じ核物質や関連技術は核兵器へ接続する可能性を持つ。
では、国家が「 平和利用 」と説明したとき、国際社会は何を根拠にそれを信じればよいのか。

その問いに対して生まれた国際機関が、IAEA( International Atomic Energy Agency / 国際原子力機関 )である。
国家の宣言だけに頼らず、核物質と原子力活動を国際的に検証する仕組み。

核の時代と「Atoms for Peace」

1945年、核兵器は実戦で使用された。
その後、米国だけでなくソ連、英国なども核兵器を保有し、同時に原子力技術そのものも世界へ広がり始めた。
無制限に拡散させれば、原子力の普及とともに 核兵器開発能力 まで広がる可能性がある。

1953年12月、米国大統領 ドワイト・D・アイゼンハワー国連総会 で、後に “ Atoms for Peace ” と呼ばれる演説を行った。
原子力を破壊だけではなく平和目的へ利用し、そのための国際的な機関を設ける構想だった。

そして1957年7月29日、IAEA憲章 が発効。
International Atomic Energy Agency が正式に発足した。IAEA国連 の専門機関そのものではなく、独立した国際機関として 国連 と関係協定を結んでいる。( 本部はオーストリア・ウィーン )

02|「利用する」と「監視する」

IAEA には、最初から一見すると相反する二つの役割が存在した。

原子力の平和利用を促進する

放射線や放射性同位体は、医療、がん治療、農業、食品、工業、環境調査、科学研究などにも利用される。
IAEA はこうした原子力科学・技術の平和利用を国際的に支援する。

軍事利用への転用を監視する

原子力技術が核兵器へ転用されないよう、核物質や関連施設について検証する( Safeguards(保障措置))。

IAEA は1959年に初めて保障措置を適用し、1962年にはノルウェーの研究炉で初の現地検証を実施した。
つまり IAEA は、「 平和利用を認めながら、それが軍事利用へ転用されていないかを確認する機関 」なのである。

NPTとIAEA

IAEA の役割を大きく変えたのが、NPT( 核兵器不拡散条約 )だった。
NPT は1968年に署名開放され、1970年に発効。
NPT 第3条によって、非核兵器国 には IAEA との 保障措置協定 を締結し、核物質が核兵器などへ転用されていないことについて検証を受ける仕組みが組み込まれた。

NPT = ルール
IAEA = そのルールを技術的に検証する中核機関

そこで国家の申告だけではなく、核物質の記録、施設、査察、測定などによって確認する。

Safeguards 何を確かめているのか

IAEA 保障措置では、核物質の量や移動を確認し、施設での活動を検証。
IAEA がどこまで検証できるかは、その国が締結している保障措置協定などの法的枠組みによって決まる。
つまり、監視能力があることと、監視する権限があること は別なのである。

イラクが変えた保障措置

1991年の 湾岸戦争 後、イラクが申告していなかった 核兵器開発計画 を進めていたことが明らかになった。
従来の保障措置は、国家が申告した核物質や施設を確認することに重点が置かれていた。

しかし、「 申告されていない活動をどう発見するのか 」という問題が突きつけられた。
これを受けて IAEA の保障措置制度は強化され、1997年には Additional Protocol( 追加議定書 )のモデルが承認された。
追加議定書によって、IAEA が取得できる情報やアクセスできる場所の範囲が拡大し、未申告の核物質・活動を発見する能力の強化が図られた。

申告されたものを確認する、そこから、申告されていないものが存在しないかも確認する、検証という考え方そのものが一段進んだのである。

北朝鮮 査察できなければ何が起こるのか

IAEA の限界を象徴する事例の一つが北朝鮮である。
北朝鮮は1985年に NPT へ加入し、1992年には IAEA保障措置協定 が発効したが、IAEA による検証の過程で核活動をめぐる疑義が生じ、査察をめぐって対立が深まった。

1994年には北朝鮮が IAEA から脱退。
その後も核問題は続き、2003年には NPT からの脱退を表明した。
そして北朝鮮は2006年、最初の核実験を実施する。
ここに IAEA の根本的な限界が見える。

IAEA は査察・測定・分析によって事実を確認することはできる。
しかし、主権国家に軍事力で査察を強制する機関ではない。
国家が協力しなければ、問題は IAEA だけでは完結しない。
その先は国連安全保障理事会、各国政府、外交、制裁、安全保障という政治領域へ移る。

Iran 核合意と検証

イランの核問題でも、IAEA は中心的な役割を担ってきた。
問題になったのは単に「 核施設が存在する 」ことではない。
原子力発電などでも必要となるウラン濃縮技術は、条件によっては核兵器用核物質の製造能力にも接続する。

外交交渉で政治的な合意を作ることと、その合意が実際に履行されているかを技術的に確認することは別の仕事、IAEA は後者を担う。

08|原子力安全というもう一つの役割

原子力施設の安全、放射線防護、核セキュリティ、事故対応などについて国際的な基準や協力体制を形成してきた。

1986年の チェルノブイリ原子力発電所事故、2011年の 福島第一原子力発電所事故 など、国境を越えた情報共有と原子力安全の重要性が認識された。
福島第一原発 では事故後も、日本側と IAEA が協力しながら核物質の再検証や監視方法を構築し、廃炉過程でも保障措置活動が続いている。
IAEA は現実から生まれた国際インフラでもある。

IAEAは「核をなくす組織」ではない

NPT : 核兵器を持つ国を増やさないための国際的枠組み。
IAEA : 核物質・原子力活動が申告された平和利用から転用されていないかを検証する中核機関。
CTBT : 核兵器の実験的爆発などを禁止する条約。
TPNW : 核兵器そのものを包括的に禁止する条約。

その世界で、「 約束したから信じる 」から「 約束したことを検証する 」へ、国際秩序を一歩進めたところに、IAEA の歴史的意味がある。

信頼ではなく、検証する

すべての国家が同じ価値観を共有することを前提にした制度は、現実には成立しにくい。
行動と物質を観測する、IAEA が作った仕組みは興味深い。
その積み重ねによって、国家間に最低限の予測可能性を作る。

IAEA は、核という巨大な力を管理するために人類が作った機関であると同時に、異なる国家同士が、完全な信頼なしでも共通の秩序を形成するための一つの方法 を示した制度でもある。

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