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「空ばかり見てるんじゃない。地上を見ろ」

僕には、「熊×人間」のドキュメンタリーを撮ることになる必然が、実は前からあったのだと思う。その原点は、前作『虚空門GATE』の終盤シーンを撮影していた時にさかのぼる。

『虚空門GATE』のラストは、たくさんの光体が夜空を飛び交う場面になる。
あの映像を撮るために、僕は三か月にわたり、竹富島と波照間島に通った。夜ごと空を見上げ、光を待ち、風を感じ、カメラを向ける。そして、十分に神秘が撮れたと確信できた、ある夜のことだった。
暗い空を見つめていると、突然、言葉が降りてきた。

「空ばかり見てるんじゃない。これからは地上を見ろ」
「地上は人間だけが住んでるんじゃない」

あまりに鮮明だった。
何故か涙が溢れた。

それが自分の内奥から湧いた声なのか。
外側から届いたものなのか。
潜在意識の言語化なのか。
天空からのメッセージなのか。

今も判別はできない。

ただ、その言葉だけは、はっきりと脳裏に焼き付いた。

『虚空門GATE』が完成し、公開され、日常が戻ってからも、その声は消えなかった。ふとした瞬間に思い出し、その意味を考えていた。

なぜ地上なのか。
なぜ人間だけではないと言われたのか。
答えは、すぐには来なかった。

けれど2025年7月、北海道福島町で新聞配達員がヒグマに襲われ亡くなる事件が起きた。続いて富士山麓では、鹿が増え、人と野生の距離が変わり始めている気配を感じた。

その時、点だったものが線になった。
あの声は、このことだったのではないか。

人間中心に見ていた世界から、同じ地上に生きる存在たちへ視点を移せということ。山も森も町も、人間だけの舞台ではないということ。

そう気づいた時、「熊×人間」のドキュメンタリーを撮りたいという衝動が、一気に現実味を帯びた。

前作では空を撮った。
次作では地上を撮る。

しかもそこには、人間と野生がぶつかり合い、すれ違い、共に生きようとしている最前線がある。

あの時の声は、作品を越えて次の作品へ続いていたのだと思う。

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「虚空門GATE」監督 小路谷秀樹 Hideki Koujitani 『ヒグマカルマ』は現在も北海道・東北で取材と撮影を続けています。 もし活動を応援していただける方がいましたら、サポートいただけると制作継続の力になります。 いただいた支援は、移動費・撮影費として大切に使わせていただきます。