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熊とカラスと野生の情報ネットワーク

今週から、北海道での撮影は4回目に入る。
新たな土地、新たな人物との縁も繋がり始め、期待と同時に、得体の知れない畏れのような感覚が静かに広がっている。
この感覚は、毎回変わらない。
以下は、昨年11月16日、3回目の北海道撮影入り前に書いた制作日記。
――――――――――
明日から北海道入りします。
向かうのは、道東にある、熊が頻繁に現れる森。
その森の境界に暮らすKさんは、
「ここに限らず北海道全域で出ますよ」と淡々と言う。
だが、甥からも「あそこは特別な森だ」と聞いていた。

ハンターのYさんから聞いた話が興味深い。
「熊がいる場所の上空には、よくカラスがいる」
理由はシンプルだ。
カラスは、クマの動きを利用している。
クマが木を倒し、地面を掘り返し、川で魚を追い込む。
その“おこぼれ”を狙って、カラスが空から集まってくる。

地上の王者と、空の観測者。
この二者の関係は、すでに原初的なネットワークのようにも見える。

さらに興味深いのは、カラスはクマだけでなく、人間――とくにハンターの接近にも敏感だということだ。
銃を持つ人間を識別し、警戒の鳴き声を上げることがある。
実際、カラスがざわつき始めると、クマがふっと山奥へ引き返すこともあるという。
もちろん、カラスにクマを守る意思などない。
ただ、自分たちの食料の機会を失いたくないだけだ。
だが結果として、
カラスの警戒は、熊への警報として機能している。

さらに熊は、人間には聞き取れない低周波の音波によって、離れた個体同士で位置確認などのコミュニケーションを取っているとも言われている。
そして、カラスはその音を聞き取っている可能性があるという。

もしそうなら――
森の情報網は、僕たちが想像しているより遥かに深く、複雑だ。
樹木の季節変化。
微生物や昆虫との共生。
光と風のわずかな変化。
獣たちの交信。

山や山際に立つたび、野生の情報ネットワークの気配、情報濃度に圧倒されている。
意図を共有していないのに、森には無意識の共助が息づいているのだろう。

その網の目の中へ、これから入っていく。
書いている今も、すでに静かな緊張が走っている。

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#ヒグマカルマ

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「虚空門GATE」監督 小路谷秀樹 Hideki Koujitani 『ヒグマカルマ』は現在も北海道・東北で取材と撮影を続けています。 もし活動を応援していただける方がいましたら、サポートいただけると制作継続の力になります。 いただいた支援は、移動費・撮影費として大切に使わせていただきます。