さまざまな日本語文法モデル(2)学校文法・橋本文法モデル
私たちが習ってきた学校文法は、橋本進吉とその弟子がつくった文法モデルを、ほぼそのままのかたちで踏襲したものです。
その歴史をみますと、1943年に文部省は国定教科書『中等文法』を編纂しましたが、その際に指導にあたったのが東大教授の橋本進吉でした。そのために国定教科書の文法が橋本文法の影響を受けたものとなったとのことです[1]。
日本の学校では、いまでも橋本文法モデルが日本語の文法として教えられています。その一方で、そのほかにも数多くの日本語文法モデルがあるということについては教わらないので、ほとんどの日本人には日本語の文法とはすなわち学校文法・橋本文法モデルのことであるという誤った刷り込みがなされています。これは、特に翻訳にとってたいへんに残念なことです。なぜなら、学校文法・橋本文法モデルと学校英文法モデルの一対一対応が「正解」だという歪んだ考えを生み出す温床となっているからです。学校文法・橋本文法モデルがよいか悪いかといった問題ではありません。学校文法・橋本文法モデルイコール日本語の文法という思い込みをつくりだす教育体制が問題なのです。
学校文法・橋本文法モデルの大きな特徴としては、言語の形式や機能を分析のための基準に用いていること、「文節」という概念を分析の基本単位に据えていることが挙げられます。
モデル構築の原理としては、近代西欧学問の基盤である客観的視点からの分析統合原理を用いています。具体的には、日本語をひとつの「客体」と想定して、それを最小単位にまで分解してから、いくつかの規則によって再統合化していくというものです。近代西欧文法で用いられている概念も十分に取り入れています。西欧へのキャッチアップを国是とした近代日本の政府にとってはそのニーズに満たすに適した文法体系であったといえますが、いっぽうで、日本人としての世界の捉え方や心の働き方に関しては特に注意を払ってはいません。以下に学校文法・橋本文法モデルでの簡単な構文を示しておきます
鳥が(文節(主語)) 鳴く(文節(述語、動詞))。
桜の(文節(修飾語)) 花が(文節(被修飾語、主語))
咲く(文節(述語、動詞))。
語彙分類については、それ自身で文節を構成する「自立語」と、それ自身では文節を構成できない「付属語」に分かれます。学校文法モデルでの具体的な品詞分類は、以下のようなものです。
学校文法モデルの品詞

一方、橋本文法モデルの品詞表は次のようなものです。学校文法モデルとの同一性がよくわかります。
橋本文法モデルの品詞表

さまざまな日本語文法モデル(1)はじめにhttps://editor.note.com/notes/n88be39839091/edit/
さまざまな日本語文法モデル(3)山田文法モデル
https://note.com/naruseyukio/n/n6b7e429316df
さまざまな日本語文法モデル(4)時枝文法モデル
https://note.com/naruseyukio/n/n0d532a4e1725
さまざまな日本語文法モデル(5)松下文法モデル
https://note.com/naruseyukio/n/n4199578815bf
さまざまな日本語文法モデル(6)三上文法モデル
https://note.com/naruseyukio/n/n8718ca0aa894
さまざまな日本語文法モデル(7)日本語文法の特徴
https://note.com/naruseyukio/n/n404909917678
