アリョーシャの落ち着きにナウシカの名セリフ「ほらね 怖くない」を連想してしまう「カラマーゾフを読む」(33)
アリョーシャの落ち着きにナウシカの名セリフ「ほらね 怖くない」を連想してしまう「カラマーゾフを読む」(33)
第四編 病的な興奮 三 中学生たちとの結びつき
この章ではやがて物語のカギとなっていく少年たちと出会うことになります。
いいですね。物語がどんどん展開していっています。もうここまでくればドストエフスキーの語りにも慣れてきた頃だと思います。しかもこの章ではややこしい思想や歴史なども語られません。純粋にストーリーを楽しみましょう。
さて、この章でまずポイントとなるのはアリョーシャと子どもたちとの関係性です。アリョーシャは子どもたちと仲良くなるのが非常に上手な青年でした。しかもそれが何らかのテクニックを駆使してというよりも、本能的なものだったというのが重要です。
後に別の箇所でもアリョーシャは言われてしまうのですが、彼はまるで子どものようなのです。その純粋性、無垢さこそアリョーシャの魅力でもあります。そしてそれがあるからこそ見えてくる救いというものがあるのです。これは物語の後半で語られていくことですので、楽しみに待つことにしましょう。
そしてこの章では子どもたちのケンカを見ていくのでありますが、これも何も事情を知らないアリョーシャ視点で語られるので私たち読者もなぜこんなことになっているかが最初はわかりません。ですがこうして謎な状況を前フリとして巧みに置くのがドストエフスキー流。我々読者はまんまとそれに乗せられ「なぜこんなことになっているのだろう」と引き込まれてしまいます。
しかもそんな謎の状況の中、さらにカオスな状況へと進んでいきます。いじめられていた少年がアリョーシャに何度も不意打ちを仕掛け、最後には骨に達するほどの強さで指に嚙みついたのです。
カオスにカオスをぶつけるドストエフスキー的な物語展開は以前も見ましたよね。フョードル邸でのアリョーシャの発作とドミートリイの乱入がまさにそれです。
そんなドストエフスキー的混沌がここでも現れました。ただでさえ謎な少年。その彼が骨に達するほどの力で噛みついたのですから、アリョーシャだけでなく私たち読者も「なんで?」と驚かずにはいれません。しかもその謎が放置されたまま話が進んでいってしまいます。謎が謎を呼ぶ展開。「『カラマーゾフ』はサスペンス小説である」という声が上がるのもわかる気がします。
そしてタイトルにも書きましたが、この嚙みつきに対するアリョーシャの対応にあの『風の谷のナウシカ』の名シーンを連想してしまいました。著作権の問題でそのシーンはここではお見せできませんが、ユパが連れてきた野生のキツネリス(テト)がナウシカに噛みつくも、全く動じず「ほらね、怖くない」と言ったあの場面は強烈ですよね。テトの耳がしゅんとなる瞬間はたまりません。
そのナウシカのシーンを連想してしまうほどアリョーシャの対応は優しく、落ち着いたものでした。やはり彼も只者ではありません。
この少年は一体何者だったのか、それを楽しみにしながら読み進めていきましょう。
続く
次の記事はこちら
前の記事はこちら
連載記事「『カラマーゾフ』を読む」記事一覧はこちらのマガジンにて
以下の記事ではドストエフスキー小説をもっと楽しむためのおすすめの解説書をまとめています。ぜひこちらもご参照ください。
ドストエフスキーのおすすめ書籍一覧はこちら
「おすすめドストエフスキー伝記一覧」
「おすすめドストエフスキー解説書一覧」
「ドストエフスキーとキリスト教のおすすめ解説書一覧」
ドストエフスキー年表はこちら
「ドストエフスキーの旅」はこちら
関連記事
