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運命への挑戦だよ、はてない挑戦だ!「カラマーゾフを読む」(29)

運命への挑戦だよ、はてない挑戦だ!「カラマーゾフを読む」(29)

第三編 好色な男たち 十一 もう一つ、台なしになった評判

カテリーナとグルーシェニカの衝撃的な対決の後、アリョーシャは道すがらドミートリイと再会します。

相変わらず彼のシラーっぷりは健在です。ここでのドミートリイのセリフは特に『群盗』っぽさが出ています。

そしてアリョーシャは先ほどの出来事をドミートリイに話すことになったのですが、ここでも彼は錯乱したかのように様々な表情を見せます。まさに「なにか病的な」までに「ふいに」「だしぬけに」感情を爆発させるのです。

さすが詩人。もはや我々にはついていけないほどの感情の振れ幅です。

そしてここでドミートリイが語るカテリーナ評は極めて重要です。

そこが彼女のプライドなのさ、大博打を打とうというやむにやまれぬ気持なんだ、運命への挑戦だよ、はてしない挑戦だ!

新潮社、原卓也訳『カラマーゾフの兄弟(上)』P384

お前は、彼女が抜目ない計算のもとに、わざと自分が先にグルーシェニカの手にキスしたと、そう思うかい?そうじゃない、彼女は本当に、本心からグルーシェニカに惚れ込んだんだよ、つまり、グルーシェニカじゃなく、自分の夢に、自分の夢物語にさ、なぜって、それはあたしの・・・・の夢、あたしの・・・・夢物語だからさ!

新潮社、原卓也訳『カラマーゾフの兄弟(上)』P385

さすがドミートリイです。彼はカテリーナのことをよく知っています。

それにしても、「つまり、グルーシェニカじゃなく、自分の夢に、自分の夢物語にさ、なぜって、それはあたしの・・・・の夢、あたしの・・・・夢物語だからさ!」という言葉の破壊力たるや・・・!

カテリーナの本質をずばり言い当てたこの言葉。しかもこれが本人不在の場で語られているのがミソです。これを後に本人に直接ぶちまけるのがあろうことか彼女を愛するもう一人の男、イワンなのです。イワンもドミートリイもこの女性をしっかり見ています。そして彼女を知った上で泥沼の三角関係に陥っているのです。もう最悪です。どうにもならない地獄の人間模様ですが、それがカラマーゾフの宿命なのです。

身内のこんな地獄のような恋模様を見せつけられたアリョーシャはさすがに落ち込みます。

なぜ、なぜ自分は外に出ていったのだろう、なぜ長老は自分を《俗世間》へ送りだしたのだろうか?ここには静寂があり、ここは聖地なのに、向うは混乱と闇で、入っただけですぐ自分を失い、道に迷ってしまうんだ……

新潮社、原卓也訳『カラマーゾフの兄弟(上)』P

この言葉を読み、私は親鸞を連想せずにはいられませんでした。親鸞も日本仏教の聖地比叡山を下り、俗世間へと足を踏み出した僧侶です。そこには多くの葛藤や苦悩があったことでしょう。しかしそんな険しい道へと送り出してくれたのが師匠の法然でもあります。私はやはりゾシマ・アリョーシャを法然・親鸞に重ねてしまいます。

続く

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