≒JOY(ニアジョイ)が教えてくれた「3番手の戦略論」——指原莉乃のポートフォリオ経営とPMの本質
プロローグ|「3番手」には、固有の強みがある
プロジェクトマネジメントの世界で「3番手」は難しいポジションだ。
1番手には先行者優位がある。2番手には「打倒1番手」という明確な目標がある。では3番手は何を武器に戦えばいいのか。
指原莉乃が自身の理想のアイドルをプロデュースするために代々木アニメーション学院とタッグを組み結成した=LOVE、≠MEに続く第3のグループとして、2022年3月29日に≒JOYが誕生した。
=LOVEは8年、≠MEは7年の実績がある。その2グループを姉として持つ≒JOYは、どう独自の道を切り拓いたのか。
PMとして、この問いには普遍的な答えがあると思っている。
第1章|「≒」という記号に込めた哲学——「ほぼ等しい、でも違う」
指原莉乃はグループ名について「メンバーと、これから応援してくださるファンの皆さんが出会ったときに、喜びだったり幸せだったり、そういう気持ちになってもらえたらいいなと思って、≒JOYというグループ名にしました」と語った。
=LOVE(イコール)、≠ME(ノットイコール)、そして≒JOY(ニアリーイコール)。
3つのグループ名を並べると、指原の設計の緻密さに気づく。
「等しい」「等しくない」「ほぼ等しい」——数学の記号3つで、3つのグループの個性を表現している。
PMとして言えば、これは「プロジェクトのポジショニング設計」の教科書だ。3つのプロジェクトが同じ市場で共存するとき、それぞれの「立ち位置の違い」を最初に明確にしておかないと、内部競合が起きる。指原はグループ名の段階でこの問題を解決していた。
≒(ニアリーイコール)が持つ「ほぼ等しい、でも違う」という意味は、3番手の本質を突いている。 先輩2グループから学びながら、でも同じではない——これが3番手の正しい立ち位置だ。
PMとしての教訓:複数のプロジェクトや組織が共存するとき、それぞれの「立ち位置の違い」を最初に言語化しておくことが、内部競合を防ぐ最初の仕事だ。
第2章|「聴覚にハンデがあるメンバー」の合格——多様性という新しい価値
≒JOYには、他の2グループにはない特徴がある。
≒JOYのメンバーとして活動し始めてしばらくたった2022年6月3日、福山萌叶は公式Xで聴覚にハンデがあることを公表した。指原は福山の合格について、聴覚にハンデがあることを理由にしたわけではないと説明。彼女は過去に≠MEのオーディションも受けていたが落選。その後≒JOYのオーディションで再会し、前回よりも成長した姿を見た指原は一緒に仕事をしたいと思い合格にしたことを明かしている。
指原は「どんな人でも夢を見ることはできるし、挑戦もできるし、誰かの希望になれる、そんな世の中になったらいいのになと思っています」と語った。
PMとして、この判断に深いものを感じた。
「ハンデがあるから合格にした」ではない。「成長した姿を見て合格にした」——この判断の順序が重要だ。多様性を「目的」にするのではなく、「実力を見た結果として多様性が生まれた」という設計だ。
これはPMBOKの「チーム構築」における最も難しいテーマの一つだ。多様性を意識しすぎると「バランスのためのアサイン」になり、チームのパフォーマンスが落ちる。多様性を意識しなさすぎると「同質のチーム」になり、想定外の事態に弱くなる。
指原がやったのは「実力で選んだら、自然と多様なチームになった」という理想の形だ。
PMとしての教訓:多様性は「目標」ではなく「結果」として生まれるとき、最も機能する。「この人と仕事したい」という純粋な判断の積み重ねが、強くて多様なチームを作る。
第3章|メジャーデビューまでの1年9ヶ月——「焦らない」という戦略
≒JOYは2022年3月のお披露目から、2024年1月のメジャーデビューまで約1年9ヶ月をインディーズで過ごした。
=LOVEは約5ヶ月、≠MEは約2年でメジャーデビューしている。≒JOYの約1年9ヶ月という期間は、3グループの中間だ。
ただし、この期間の使い方が興味深い。
インディーズ期間中、≒JOYはライブを重ね、SHOWROOMでの配信を続け、ファンとの関係を地道に積み上げた。「メジャーデビューを急ぐ」のではなく「デビューしたときに受け皿があるチームを作る」ことを優先した。
PMとして言えば「リリース前のベータテスト期間」だ。市場に出す前に、小さなコミュニティで仮説を検証し、改善を繰り返す。アジャイル開発の「スプリント」に近い発想だ。
先輩2グループの経験から「何が大事で何が不要か」を学べる立場にあったことも、≒JOYの強みだった。3番手には「学べる先輩がいる」という固有の優位性がある。
PMとしての教訓:後発プロジェクトには「先輩プロジェクトの失敗から学べる」という固有の優位性がある。この優位性を活かすには、先輩を「競合」ではなく「先生」として見る文化が必要だ。
第4章|お披露目に駆けつけた=LOVEメンバー——組織の「心理的安全性」の設計
≒JOYのお披露目会には、=LOVEから大谷映美里、齊藤なぎさ、佐々木舞香、髙松瞳、山本杏奈が応援に駆け付けた。
これは「セレモニー」ではない。「組織文化の設計」だ。
新しいプロジェクトが立ち上がるとき、既存のプロジェクトメンバーが「脅威」と感じるか「仲間」と感じるかで、組織全体の空気が決まる。
=LOVEのメンバーが≒JOYのお披露目に駆けつけ、笑顔で迎えた——この一幕が、指原プロデュースの3グループ体制の「心理的安全性」を象徴している。
指原は「ファンの皆さんに喜びを与えながら、自分も成長していって、優しくて強い最強の女性になれるように、イコラブ、ノイミーメンバーと一緒にこれから頑張っていきましょう!」と≒JOYにエールを送った。
「一緒に頑張っていきましょう」——この言葉が示すとおり、3グループは競合ではなく「同じ方向を向いた仲間」として設計されている。
PMとしての教訓:新しいチームを立ち上げるとき、既存チームが「歓迎する側」に回れる文化を作ることが、組織全体の心理的安全性を高める。これは意図的に設計しなければ、自然には生まれない。
第5章|3グループ並立が生み出す「ポートフォリオの強さ」
=LOVE、≠ME、≒JOY——この3グループ体制を、PMとして改めて俯瞰してみる。
3グループはそれぞれ異なるファン層を持ち、異なる強みを持ち、異なるステージにいる。
一つのグループが困難な局面を迎えても、他の2グループが活動を続ける。一つのグループの成功が、指原莉乃プロデュースというブランド全体への信頼を高める。3グループが同じステージに立つ「イコノイジョイ」というフェスは、単独では生まれない熱狂を作り出す。
これはPMとして言えば「リスク分散されたポートフォリオ経営」だ。一つのプロジェクトに全リソースを集中させるのではなく、複数のプロジェクトを並走させることで、組織全体の安定性と成長可能性を同時に高める。
≒JOYという3番手の存在が、このポートフォリオを「完成形」に近づけた。 1番手の安定、2番手の挑戦、3番手の可能性——この三層構造が、指原莉乃プロデュースの本当の強さだ。
エピローグ|指原莉乃が証明し続けていること
=LOVE、≠ME、≒JOY——3グループのPM論を書いてきて、一つの結論に辿り着いた。
指原莉乃が証明し続けているのは「人を信じて、環境を作れば、人は育つ」ということだ。
23歳で覚悟を決め、10年近くプロデューサーとして走り続けた。失敗もあった。批判もあった。それでも3グループを並走させ、今もアリーナを埋め続けている。
PMとして最も難しいのは「技術」ではない。「人を信じ続けること」だ。
メンバーを信じ、ファンを信じ、自分の判断を信じる——指原莉乃のプロデュースから、PMとして学べることはまだまだ尽きない。
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=・≠・≒——3つの記号に込めた哲学
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©shiraco|PMPおじさんの実践ノート @NoteCcm42090
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