『障害者になった日』──戻らない現実と見えない選択
【第2話】
「奥様の身体が──
今後も大きく変わることは、
期待できないです」
目の前に座る医師から告げられたのは、妻の『症状固定』でした。
その瞬間から──
“治療“は"介護"に切り替わり、
リハビリは改善を期待したものではなく、残った機能を維持するか、
活かすものになる。
つまり、その日から──妻は、
『障害者』になったということでした。
けれど、その現実を受け止める前に、
すでに次の選択が、
私たちの目の前には迫っていました。
あの日常が──
もう戻ることはない。
医師から、その説明を聞いても、
しばらくは信じることが出来ませんでした。
もう変わらない?
こんなに回復してきたのに?
そんなバカな話があるか!
けれど、その最後の瞬間まで、
信じ続けてきた思いとは裏腹に、
私の頭の中では──
かつての当たり前だった日々や、
これまで頑張ってきたリハビリの記憶が、
駆け巡っていました。
その瞬間、
むせ返るほどの感情が一気に吹き出してきて、
外来をあとにしても、
とても妻がいるリハビリ室には、
戻ることができませんでした。
フラフラと、
そのまま駐車場に向かい。
車に飛び込むように入って──
声にもならない声をあげながら私は、
ひたすら泣き続けていました。
誰にも、
その感情をぶつけることもできずに。
大事なものを失ったことすら、
まだ理解できないまま、
とてつもない“悲しみ“が襲いかかり、
そして、"悔しさ"や“怒り"が、
その後を追い掛けきました。
なぜこんな目に、
合わなきゃいけないんだ?
いったい妻が、
何をしたって言うんだ?
妻が倒れてからずっと抱えていた、
そんな思いが──
車内に溢れかえっていました。
それから、どれほどの時間、
車にいたのかは分からず。
ふと外を見れば、
いつもと変わらない病院が、
そこにはありました。
しばらくして、リハビリ室に戻ると、
もう妻は病室に戻っていました。
あとひと月もすれば──
妻の退院は、
決まっていました。
それまでには、
決めなければいけませんでした。
──退院後どうするのか。
ということを。
それは介護を“家"でするのか、
それとも“施設“でするのかということ。
妻の病室に向かいながら、
私は考えていました。
医師から聞いた説明を
妻にどう伝えるのか。
何より、
退院したあとのことを
どうするのかを──

『障害者になった日』
──戻らない現実と見えない選択【完】
▼この話は『第3話』へ続きます。
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