『障害者になった日』──いともたやすく終わる夢
【第1話】
もし仮に、
大事な家族や大切な人が、
ある日を境に、
障害者になったら──
その現実を受け入れることが、
できるだろうか?
脳出血で倒れた妻は、
重い後遺症を負いながらも、
まだ回復の途上だった。
それまで朝から晩まで、
ふたりでリハビリに次ぐリハビリに、
明け暮れた日々──
願っていたのは、
それまでにあった"当たり前の日常"。
そんな些細な希望すら、
もう二度と戻らないことを
その日、知らされる。
【症状固定】
──それ以上の症状の改善が、
見込めない状態。
後遺症が固定される状態。
つまり、その日をもって"治療"が終わり、
それ以降は、もう終わらない"介護"が始まるということ。
妻のそれは、
あっさり訪れました。
その日の私は、
妻を手術した医師から呼ばれていました。
「◯時ごろお話しがありますので、
脳神経外科の外来に来てください」
そこは、妻が運ばれ、
絶望を告げられたあの日と同じ場所。
あの時のことが、その日は幾度となく、
フラッシュバックしていました。
医師が私に何を伝えるのかは、
分かっていました。
その日は妻の、
『症状固定の日』
リハビリ室にはラジオが流れ。
入院患者や、
介護士の先生たちの声が溢れて、
いつも通りに賑やかでした。
その中で、
何も知らない妻は、いつもと変わらずに、
リハビリに励んでいました。
……ざわついていたのは、
私だけでした。
妻のリハビリの様子を見守りながら、
それまでと同じように声援を送り続けていました。
「ほら、あと少し、あと一歩、
大丈夫、絶対できるようになるから」
「ほら、もう少し…」
ここまで、何ヶ月間も、
言い続けてきた言葉を繰り返して。
その時間になり──
外来で医師から告げられた言葉は、
私たちのこれまでの全てを
確実に、終わらせるものでした。
「奥様の身体が──
今後も大きく変わることは、
期待できないです」
「これからは、その機能を維持したり、
上手く使えるようなリハビリに、
切り替えます」
それが、
妻の『症状固定』でした。
頭では理解していましたが、
それを受け入れることはできませんでした。
それを聞きながら、心の中では──
今まで、こんなに頑張ってきたのに?
もう回復しない?
そんなバカな話あるか!
行き場のない悔しさと怒り。
けれど、もう戻らないという『現実』を、
ただ聞き入れることしかできませんでした。
こうして、
私たちが描き続けた夢や希望は、
いともあっさりと──
終わりを告げました。
そして、その日を境に。
新たな『現実』が、
私たちに、頭をもたげ始めていました。

『障害者になった日』
──いともたやすく終わる夢【完】
▼この話は、『第2話』へ続きます。
▼前回の話
※フラッシュバックするあの時のこと。
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