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『もしかして、バカなんじゃない?』──妻とポロンとカスミソウ


妻は、花が好きな人でした。


元気だった頃も、
ときおり自分で花を買ってきては、
部屋に飾って楽しんでいました。


中でも特に好きだったのが、
カスミソウ。


それに合う花を自分なりに組み合わせ、
生けていました。



在宅介護が始まってから、しばらくは、
私がスーパーに買い物に行くついでに、
花を買って帰るようになりました。

妻が好きそうな花を選び、
花瓶も新調して。


帰ると妻はいつも嬉しそうに、
花に見入っていました。

「これは何て花?」
「あ、この花はよく買ってた」


そう言って、にこにこと笑いながら話しかけてくれるのが嬉しくて、

私は毎週のように花を選んでいました。





そんなある日──

飼っていた猫「りぼん」が亡くなってしばらくした頃、
我が家に「ポロン」がやってきました。

チンチラシルバーの女の子「りぼん」とは正反対の性格をしていて、

ミヌエットの「ポロン」は男の子で、
とにかくヤンチャ。

目につくものすべてに興味を示し、
片っ端からちょっかいを出すタイプでした。



届いたAmazonの荷物を開ければ、
そのダンボールに真っ先に飛び込んでくる。

テレビでアナウンサーが指し棒を振れば、それを追っかけるように、画面をガリガリと引っ掻く。


ありとあらゆるものに、
彼は興味津々でした。


当然、毎週のように買っていた花も、
ポロンの標的に──



気づけば、
買ったばかりのカスミソウが、

花を辺り一面に飛び散らせ、
枝と茎だけの無残で切ない姿になっていたり…

食べてしまっては大変と、
毎回あわてて片付ける羽目に。


そんな様子を見た妻は、
いたって真面目な顔をしながら私に、


「ねえ、もしかして、ポロンって、
バカなんじゃない?」
と…


「いや、そんなことないよ」
と言いながら──私も、

「もしかしたら、、」と…

人間の年齢では、
ゆうに成人を超えていましたが、
ポロンの後ろ姿に、らしさを感じることは少しもありませんでした。



結局──
ポロンが来てからというもの、
花を飾ることはなくなりました。

妻は、少し寂しそうでした。


けれど、そのうち──

ポロンは毎日、花の代わりに、
妻に“何か”を届けてくれるようになり、

花のことを、妻が話すこともなくなっていきました。




いまでもポロンの、そのヤンチャさは、
変わらず──



今日もポロンは、
テレビの天気予報と格闘しながら、

飽きることなく元気に、私たちへ、
新しい“何か”を届け続けています──。





『もしかして、バカなんじゃない?』
──妻とポロンとカスミソウ【完】


※関連した話:
①ポロンが家族になるまで

②チンチラシルバーのりぼん





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