『介護への道』──希望のないMRI画像
あの日──
妻の右手がピクリとも動かない様子を見て。
私の中には、
確かな“予感”のようなものが芽生えていました。
そしてそれは、数日後──
医師の口から、
はっきりと言葉になって告げられることになります。
医師から、妻の状態について、
詳しい説明を受けたのは──
それは彼女が目を覚ましてから、
しばらく経った頃のことでした。
医師は妻の脳のMRI画像を指し示しながら、私に説明しました。
「左脳皮質下出血による、
右側上下肢の完全麻痺および失語症状を伴う、高次脳機能障害があります」
「残念ですが重い障害のため、
奥様が元のお体に戻るのは、
……難しいと思います」
私はまだ、現実を真正面から受け止められずにいました。
けれど医師は、
さらに分かりやすく言葉を続けてくれました。
つまりそれは──
右半身が麻痺により、
全く動かすことは出来ない。
言葉はほとんど話せない。
そしてあらゆる物事を
理解することが困難。
記憶や認知する力も、
著しく低下している。
──要するに、
これまでの日常生活を妻は、
もう二度と送ることができない身体になった。
そういうことでした。
説明を受けながら──
私は妻の脳の1/5ほどに空いた真っ黒な穴を見つめていました。
涙が止まりませんでした。
その穴は以前よりも小さく見えました。
けれどそれは、
脳が回復したわけではなく。
出血により腫れていた脳の腫れが、
ただ引いただけとのこと──
説明を終えた医師に、
私は震える声で言いました。
『妻を助けていただき……
本当にありがとうございました』
そう言いながら、
私は深々と頭を下げていました。
MRI画像に映された現実は──
私たちには、
まだ何ひとつ希望を示しては、
いませんでした。

『介護への道』
──希望のないMRI画像 【完】
▼『左脳という名の喪失』へ続きます
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