『破壊される家計』──金に憑かれたクズの詩
【反撃編 第3話】
ICUで寝ている妻の横で、
株のトレードを始めた日々。
それは、数字との戦いでもあり、
"感情"の地獄でもありました。
人生と家族を賭けたギャンブル。
私は徐々に、精神的に追い詰められていきました。
その時に壊れていたのは、
妻や家族や家計──ではなく、
"私"でした──

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スマホ片手にチャートを睨み、
1日に何度も売り買いを繰り返す
リスクの高いデイトレード。
勝った利益は極力、
支払いに回すため払い出し、
残った分でまた次の銘柄を買うという。
それはまさに息継ぎのない、
──チェーントレード(連鎖投資)。
負けた日は、体中が、
ガタガタ震えるほど恐ろしくなり。
スマホであらゆる株の指標や、
先物の値を確認しながら、
朝を迎えていました。
気がつけば四六時中──
頭の中はお金のことばかり。
次第に、食事の味も、時間の感覚もなくなり、ただただ自分をすり減らし続けていきました。
何よりも──
目の前にいる妻のことすら、
どこか遠い存在のように思える時間が増えていました。
もはや“中毒”でした。
心も体も疲れ切っていたのに、
それを、やめようとは思えず。
むしろ株を売買している時だけが、
"生きているような感覚"でした。
笑うことはなくなり。
些細なことでイライラし、
辺りかまわず大きな声を張り上げたり、
妻の姿を見るたびに泣き喚いたり。
感情のコントロールは、
もう効かなくなっていました。
人に対しても常に疑心暗鬼になり、
周りの人すべてが、私たちを馬鹿にしているように見えていました。
何か言われるたびに、
「バカにしやがって、何様なんだ?」
気遣って優しく接した人にすら、
「偽善者して楽しいか?」と。
どうにかしたいという感覚より、
「もうどうなってもいい」
という投げやりな気持ちの方が強まっていました。
また、
「いざとなれば、全てを捨てて、
自分だけ逃げればいい」
とすら考え始めていたこと。
それは、もしかしたら──
妻が倒れた時から、そう考えていたのかも知れません。
ただ追い詰められて、本当の自分が出てきただけの話で。
そんな私が唯一、心が落ち着けたのは
──『株を買う瞬間』だけ。
もうその頃には、何のために頑張っているのか、何をどうしたいのかすらも、
分からなくなっていました。
目の前の現実から逃がれるためなら、
妻や家族も平気で売る。
そのときの私は、
まさに、クズでした。
次第に食事や風呂だけでなく、
トイレに行く時間すらもったいないと感じ始めた頃──
「様子がおかしい」
周囲からも私は、
そう言われるようになっていました。
お金に取り憑かれ、蝕まれて、
もはや──人としては生きていませんでした。
そして、その『限界』を迎えた時──
その日は、トレードをする気力すらなく、
私はリハビリに懸命に取り組む妻の姿だけを、ただ見ていました。
そんな風に──
妻を見るのは久しぶりな気がしました。
ふと。
我に返って、冷静になり、
心の奥から言葉が漏れました。
──何やってんだ俺?
それは、ICUでデイトレを始めてから、
数ヶ月が経過した頃でした。

『破壊される家計』
──金に取り憑かれたクズの詩【完】
▼次話
──静かに差す希望 へ続きます。
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