裁量労働制の拡充(拡大)と労働市場改革分科会メンバー意見
日本成長戦略会議(議長は高市総理)労働市場改革分科会(分科会長は上野厚生労働大臣)では裁量労働制の拡充(拡大)など労働法制についても議論されました。とくに「つながらない権利」立法化(法制化)も必要との意見もありました。
高市総理が検討加速を指示
2026年4月22日に開催された日本成長戦略会議で高市早苗総理は「上野(厚生労働)大臣は、『裁量労働制』や『変形労働時間制』など労働時間制度の見直しについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、検討を加速してください。裁量労働制につきましては、経済界として健康確保、長時間労働防止、処遇改善にしっかり取り組まれるとの御発言も踏まえまして、こうした濫用防止措置を前提に制度対象の在り方について、見直しの検討を進めてください。また、現行の労働時間規制の運用についても、労働時間や労働者の健康確保措置に関する労使の合意に則った指導を行うよう、見直してください」と発言しています。
この発言を受けて上野厚生労働大臣が分科会会長を務める日本成長戦略会議・労働市場改革分科会では裁量労働制の見直し(対象拡大)などの議論は加速され、5月には分科会メンバーの意見が取りまとめられる予定。
上野厚生労働大臣の記者会見が(2026年)5月19日に行われましたが、上野大臣は「裁量労働制については、適正な運用が行われれば、労使双方にとってメリットのある働き方が実現できる一方で、制度の趣旨に沿っていない運用がなされた場合には、労働者の健康確保や処遇確保などの観点から問題があるとも指摘されています。こうした点も含めて検討していく必要があると考えています。労働市場改革分科会においては、構成員の皆様から幅広くご意見を頂戴して議論を行っていますが、取りまとめに向けて何らかの方向性を決め打ちしているものではありません。ただ、裁量労働制を含む労働時間規制については、働き方の実態とニーズを踏まえて、運用・制度の両面から、議論を進めていくこととしているので、構成員の皆様の幅広いご意見を丁寧に取りまとめていきたいと考えています」と述べています。
労働市場改革分科会メンバー
日本成長戦略会議・労働市場改革分科会のメンバー(構成員)は次のとおりです。
労働市場改革分科会メンバー(構成員)
*議事録では「委員」と記載
上野賢一郎・厚生労働大臣(分科会会長)
*分科会会長代理は厚生労働副大臣、政務官
石崎由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授
伊藤 仁・日本商工会議所専務理事
片岡剛士・PwCコンサルティング上席執行役員・チーフエコノミスト(日本成長戦略会議構成員兼務)
近藤絢子・東京大学社会科学研究所教授
坂本貴志(株)インディードリクルートパートナーズ・リクルートワークス研究所研究員
神保政史・日本労働組合総連合会(連合)事務局長
中根弓佳・サイボウズ(株)執行役員・人事本部長
水島郁子・大阪大学大学院高等司法研究科教授
室賀貴穂・九州大学大学院経済学研究院准教授
藤原清明・日本経済団体連合会(経団連)専務理事
山田 久・法政大学教授
労働法学者2名・経済学者3名
労働法学者は次の2名のメンバー(構成員)の方になります。
石崎由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授は労働法学者、厚生労働省の有識者会議「労働基準関係労働法制研究会」(元)メンバー(構成員)。
水島郁子・大阪大学大学院高等司法研究科教授は労働法学者、労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)労働条件分科会委員(分科会会長代理)。(裁量労働制を議論した昨年12月24日の労働政策審議会 労働条件分科会は欠席)
経済学者は次の3名のメンバー(構成員)になりますが、労働市場改革分科会で裁量労働制の見直しについて議論するのであれば、黒田祥子・早稲田大学教育・総合科学学術院教授(労働経済学、労働政策審議会 労働条件分科会委員、厚生労働省「裁量労働制実態調査」データを分析した「裁量労働制」と労働環境に関する論文を執筆)も労働市場改革分科会委員に加えるべきだったと思います。
近藤絢子・東京大学社会科学研究所教授は経済学者(労働経済学、中公新書『就職氷河期世代』執筆)。
室賀貴穂・九州大学大学院経済学研究院准教授は経済学者(公共経済学、労働経済学、「女性労働:女性の社会進出を阻むものは何か?」浅古泰史・善教将大編『数理とデータで読み解く日本政治』執筆)。
山田久・法政大学教授は経済学者(注力テーマは新しい労働市場のグランドデザイン/北欧モデルの日本への適用)。
片岡剛士メンバー(構成員)
片岡剛士・PwCコンサルティング上席執行役員・チーフエコノミスト・パートナーは元日本銀行政策委員会審議委員(Xアカウントプロフィール)、また日本成長戦略会議の有識者メンバー(構成員)。

第1回 労働市場改革分科会
第1回 日本成長戦略会議・労働市場改革分科会は2026年3月11日に開催。議事録によると裁量労働制の拡充(拡大)などについてメンバーは(構成員、議事録では委員)は次のように発言。
・片岡委員(片岡剛士・PwCコンサルティング上席執行役員・チーフエコノミスト)は「円滑な労働移動に関しましては、最新のテクノロジーの活用を通じた労働市場の見える化や、副業・兼業の促進、裁量労働制の拡充といったところが基本的に必要になるのではないかと思います」と。
・藤原委員(藤原清明・日本経済団体連合会<経団連>専務理事)は「付加価値の最大化に当たりましては、より柔軟で自律的に働ける環境整備、とりわけ裁量労働制の拡充が最重要課題と考えております。加えまして、イノベーション創出の担い手であります多様な人材や働き手の能力開発、スキルアップを通じた労働力の質的向上を図るなど、その活躍を推進して労働生産性を改善・向上させることが欠かせないと思っております」と。
・伊藤委員(伊藤仁・日本商工会議所専務理事)は「変形労働時間制については、既に制度としてあるわけですけれども、外部の要因で生じる突発的な業務への対応の活用ニーズがあるものの、既に計画申請している場合は途中で変更が認められない、あるいは30日前に労使の合意を得ることが必要ということで、様々な変化に対して有効に活用できないという声が先ほどの建設や運輸の事業者から多く出てきております。計画申請後の変更を認める措置、労使の合意を得る期間の短縮など、より柔軟な活用できるような制度というもので要件を緩和すべきだと考えております」と。
・神保委員(日本労働組合総連合会<連合>事務局長)は「労働時間規制の緩和を望む声もありますが、現行制度を適切に活用すれば労使の工夫次第で柔軟な働き方の実現じゃ可能であると考えております。雇用する使用者と労働者の力の差は厳然たる差が存在しているため、労働者の同意などを理由に緩和を行うべきではないと考えております」と。
また神保委員は「裁量労働制については、連合の構成組織の中でも、労使で制度設計からきめ細かい運営まで運用を徹底し、趣旨どおり適切に運用をされているところもあります。一方で、真に裁量がない方への適用や、長時間労働になりやすい実態もあります。こうした点を踏まえれば、今行うべきは制度の拡充ではなく、2024年度改正を踏まえた定期的なモニタリングなどの適正運用の徹底であると考えております」と。
さらに神保委員は「労働時間制度でございますけれども、働く者の健康・安全の確保と、生活時間保障の観点を基本に据えるべきであって、上限規制の段階的な強化や、休息と生活時間の確保に向けた長期の連続勤務規制の導入等を進めることが必要であると考えます」と。
・藤原委員(藤原清明・日本経済団体連合会専務理事)は「裁量労働制の拡充というのは、労働生産性の改善・向上だけでなく、創造性を発揮する仕事の特性に適した柔軟な働き方の拡大に資するものであり、広い意味でいろいろな人が労働参加したくなるという観点からも必要な課題だと思っております。過半数労働組合との十分な協議と健康確保を前提にして、一定の範囲で対象業務を拡大する制度の見直しが不可欠だと思っております。(高市)総理が施政方針演説で裁量労働制の見直しの検討に言及されたことは歓迎したいと思っております。裁量労働制の導入企業からは、裁量労働制が働き手の能力を最大限発揮させて、成長意欲を一層喚起させるという声を聞いております。一方で、先ほど神保委員からも御指摘ありましたように、制度趣旨に沿わない運用がされているということ、健康面や処遇面での観点で問題が生じているといった指摘があることも承知しております。今後、適切な運用を行っている企業の取組を参考にして、長時間労働の抑制策や、裁量労働制にふさわしい処遇の確保の在り方など、制度の濫用防止策とセットで見直し議論に臨んでまいりたいと思います」と。
・坂本委員(坂本貴志・株式会社インディードリクルートパートナーズ・リクルートワークス)は「労働時間規制におきましては、労働市場の需給環境は大きく変わっていますから、見直しの検討は必要かと思いますけれども、ただ、中小企業等においては、話を聞いていますと、現実的に離職防止の観点などから労働時間の引上げは難しいと聞きます」と。
・片岡委員(片岡剛士・PwCコンサルティング上席執行役員・チーフエコノミスト)は「私自身は、柔軟で多様な働き方の実現に向けて裁量労働制の見直しは一定程度必要なのかなと思っています。ただ、裁量労働制がもちろん長時間労働促進につながらないようにするために工夫は必要ですので、そこら辺はバランスを考えながら、働きたい方が自由に働けるようなポジティブな意味での改革といったものが必要なのではないかと思っています」と。
・水島委員は「労働時間制度に関し、(資料)15ページの『労働者の健康確保も図りつつ』というところにアンダーラインがありませんが、この点が極めて重要であることを改めて確認しておきます。私見では、労働者の健康確保のために勤務間インターバルが実効的であると考えます」と。
・中根委員は「長時間労働が増長されない仕組みは先に述べた通り、多様な人を労働市場に呼び込む環境をつくり、あるいは学びの時間を確保するうえで必要思っております。そうしなければ結果的に長期的に総労働力を確保することができず、少子化もより進んでしまうという危機感を感じております」と。
・石﨑委員(石崎由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授)は「柔軟な働き方というときに、これも複数の委員から既に御意見が出ているように、裁量労働制の拡大というような提案もなされているところではありまして、裁量労働制が、ある種、労働者の裁量で働き方を決められる、そういうプラスの側面があることは確かではあるのですけれども、他方で、神保委員などから指摘があったように、裁量がない中でこの制度の適用を受けて長時間労働になってしまったりするという課題もありますので、本当の意味で労働者が仕事、特に業務量などに対しても裁量を持てているのか、その辺りがどう担保できるのかという点をやはり慎重に検討していく必要があるのではないかと考えております」と。
また石﨑委員は「労働者の選択の尊重と健康確保、この2つの視点はいずれも重要であるわけですが、先ほど近藤委員からも御指摘がありましたように、労働者の同意や選択が本当の意味で自由な意思に基づいているのか、そこは労使の交渉力の格差を考えたときには慎重に考える必要があり、また、それをもし担保していくということであるならば、集団的な労使の基盤をしっかりさせていくことが重要であろうかと思います。また、集団的労使関係の基盤をしっかりしていくというところは健康確保の実効性を高める点からも重要と思います。健康確保という観点からは、先ほど水島委員から御指摘があった勤務間インターバル規制の強化も一つ今後の課題になっていくかと思いますし、その辺り、具体的なスケジュールなども示していく必要があるのではないかと考えております。こうした点については、先般公表された労働基準関係法制研究会報告書の中でも一定の提案がされているところであり、既に労政審でも充実した議論がされていることは承知しておりますけれども、この点、引き続き、労政審で実態を踏まえて具体的な検討を進めていただくということが重要ではないかと考えている次第です」と。(第1回 労働市場改革分科会 議事録より抜粋)
第2回 労働市場改革分科会
第2回 日本成長戦略会議・労働市場改革分科会は2026年4月3日に開催。議事録によると裁量労働制の拡充(拡大)などについてメンバーは(構成員、議事録では委員)は次のように発言。
・近藤委員(近藤絢子・東京大学社会科学研究所教授)は「裁量労働制とフレックスタイム制がマスコミレベルの議論だと混同されている印象があって、裁量労働制は時間をちゃんと管理されない状態なので、働き放題みたいになってしまうリスクがあるのですけれども、フレックスタイムの場合はいつ働くかが労働者の裁量に任されているだけで、労働時間そのものは管理されているわけですよね。フレックスタイムでいいじゃないかというところに裁量労働と言ってしまうと、また働かせ放題だとがーっとなって議論がすれ違うみたいなことが起きてしまうかなと思いますので、その辺の区別みたいなところもうまく発信していくと、国民の議論のレベルで情報のそごから話がまとまらないみたいなことが減るのかなと少し思いました」と。(第2回 労働市場改革分科会 議事録より抜粋)
第3回 労働市場改革分科会
第3回 日本成長戦略会議・労働市場改革分科会は2026年4月22日に開催。議事録によると裁量労働制の拡充(拡大)などについてメンバーは(構成員、議事録では委員)は次のように発言。
・水島委員(水島郁子・大阪大学大学院高等司法研究科教授)は「勤務間インターバル制度は、平成31年に事業主の努力義務となりましたが、制度を知らない企業がいまだ少なくありません。勤務間インターバル制度は、労働者の健康確保の観点から効果的な施策と考えられ、導入が望まれますが、現行の努力義務、リーフレットの作成や周知による導入促進では限界があると言わざるを得ません。私見では、努力義務から義務化へ、労働時間等設定改善法による規制から労働基準法による規制へと展開することが望ましいと考えます」と。
また水島委員は「裁量労働制はうまく機能すれば労働者にとってもよい制度であると考えますが、しかし、裁量労働制と言いながら、早い時間帯に出社を求めるとか、求められる仕事や時間に対する裁量が十分でないとか、裁量労働制がうまく機能しない場面も容易に予想できます。裁量労働制が適正に運用されるために、何が必要でどうあるべきか、慎重な検討が必要であって、労働政策審議会労働条件分科会で議論を深めることが重要な事項であると考えます。拙速な拡大はすべきでないと考えますし、拡大するのであれば、しっかりとした議論と検証が必要と考えます」と。
・山田委員(山田久・法政大学教授)は「原理的にはフレキシキュリティーという概念が非常に重要だと思っておりまして、これは柔軟性ということと保障性、これをどう両立させていくかということで、具体的に言いますと、今回議論になっている裁量労働制の拡大に関しては、柔軟性を高めるという意味で、先ほど水島先生のお話にもありましたが、うまく使えば非常にいい制度ということで、極力前向きに検討することは私は基本的には大事だと思います」と。
また山田委員は「保障性という意味で様々に日本の場合は問題があるというのが実態であります。私は大きくは、先ほど水島先生もおっしゃっているような健康確保措置の問題と、もう一個はやはり賃金の問題もあると思います。この2つがどういうふうに整備されていくのかそこを、考えながら進めていく必要があると思います。健康管理上の措置に関しては、日本の問題というのは、労働時間、タイムマネジメントに対しての従業員の考え方がどうしても弱いという根本問題があるがゆえに、ちょっと慎重にならざるを得ないというのが今の実態なのだと思います」と。
そして山田委員は「具体的にどういうふうに進めていくかということで、既にこの会でも当局のほうから提言がありましたけれども、一つは、実は今のある様々な変形労働制にしろ、フレックスタイム制にしろ、結構うまく使えば実は使えるというところがあるのが実態かと思います。そういう意味では、特にフレックスタイム制なんかは本当に労働時間の設定が自由にできるということで、そういう意味では、そこは個別の支援センターなんかの相談を受けながら、フルに使っていくということはまずやっていくべきだろうなと。これはもう既に進められているところですから、改めてこれは支持をいたします。もう一方を言いますと、海外を見ていますと、特にヨーロッパというのは、労働時間に関してもちろん最低限の規制はあるのですけれども、結構デロゲーションと言いますけれども、労使自治がうまく機能するのであれば、そこの例外的なことを認めているということをやっているわけです。御案内のように、日本も一応そういう建前を取っているのですけれども、なかなか実際には過半数代表なんかがうまくいっていないケースがあるということかと思います。ただ、これだけ世の中が複雑になり、様々なケースが出てくる場合、全て制度でやるというのは限界が出てきているので、改めて労使自治がワークするような仕組みを考えていく必要があるのだと思います」と。
さらに山田委員は「具体的に言いますと、過半数労働組合のある場合というのは比較的労働組合がしっかりワークしているというケースですから、この場合は、いろいろな形でどこまで認めるかというのは最終的には労政審の中で議論していくという話だったと思いますし、既にそういう議論もあると思うのですけれども、そうだと思うのですが、一つ具体的に提案したいのは、これも非常に難しい議論だということも分かっているのですけれども、いわゆる従業員代表制みたいなところを、私は適格認定された例えば産別組織のようなところのバックアップがあれば、これによって労使対等が保証できる限りにおいて、組合のないところに対しても適用していくということを少し考えていってもいいのではないかということです。これによって、なかなか中小企業の中では労使関係というのは十分出来上がっていない日本において、一定程度これを形成していく。そうすると、いい労使関係ができれば、企業も長期的に見ると発展するというのはいろいろな研究の中で分かっておりますので、そういうところを少しトライしてもいいのではないかというのが一つ私の提案であります」と。
・室賀委員(室賀貴穂・九州大学大学院経済学研究院准教授)は「柔軟な働き方の拡大について申し上げましたが、柔軟化には課題もあります。家庭内負担との境界の曖昧化や、長時間労働につながる可能性があるため、勤務間インターバル制度や『つながらない権利』の導入についても併せて検討すべきです」と。・近藤委員(近藤絢子・東京大学社会科学研究所教授)は「裁量労働制の議論なんかでも、大企業の非常に高度な業務管理ツールみたいなものを導入できるところは、そのツールできちんと監視をした上で、裁量労働の適用拡大をするというようなことが可能なのではないかという議論が一方であるわけです。他方で、中小企業の場合は、そういった管理コスト自体が非常に重荷になっているという話があって、そこが同じまないたで論じられてしまうと非常に難しいところがあるのかなという印象がありました」と。
・片岡委員(片岡剛士・PwCコンサルティング上席執行役員・チーフエコノミスト)は「裁量労働制が必要以上に長時間労働促進につながらないようにするために、企業や政府、働き手、それぞれさらなる工夫といったようなものが必要かなと思います。特に勤務間インターバル制度の促進ですとか、36協定の締結促進遵守とか、そういったようなところというのは重要なポイントなのだと思います」と。
・神保委員(日本労働組合総連合会<連合>事務局長)は「働く者がしっかりと休息や生活時間を確保できるよう、休日労働を含めた長期の連続勤務を制限するルールの導入、勤務間インターバル制度の義務化、『つながらない権利』の立法化の検討を進めることが重要であると考えております」と。
また神保委員は「裁量労働制については、他の委員も指摘されているように、長時間労働になりやすく、裁量や適切な処遇が必ずしも確保されていない実態がございます。そうした事実を踏まえれば、いま行うべきは、制度の拡充や要件緩和ではなく、2024年改正を踏まえた適正運用の徹底を進めることであると考えております」「柔軟な働き方は現行制度でも十分可能であり、成果に応じた賃金の出来高払いもできることから、裁量労働制を拡大する理由にはならないと思います」と。
・藤原委員(藤原清明・日本経済団体連合会専務理事)は「裁量労働制は、適正に運用されれば労働者にとっても非常に満足度の高い働き方になります。ぜひとも健康確保を前提として、制度の乱用防止策とセットで今後、制度拡充の議論を進めていただきたいと思っております」と。
・石﨑委員(石崎由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授)は「労働時間制度につきましては、第1回にも申し上げましたけれども、健康確保の実効性という観点からも、あるいは個々の労働者の真意に基づく選択・同意の確保という観点からも、集団的労使関係の基盤がしっかりしているということが重要であると考えております。法規制をどこに置くかということは、労使関係の実態がどう機能しているかというところともリンクするところかと思いますので、今後、法規制の見直し等を検討するに当たっては、労使関係の実態を踏まえた上で、慎重な議論を労政審において進めていただきたいというのが、まず全体として考えているところであります」と。
また石崎委員は「上限規制については、私もこれは緩和すべきではないと考えております。本日のお話の中でも、業界によって上限規制の遵守に非常に苦労されているところがあるというお話がありましたけれども、伺っておりますと、発注先からの圧力等があるというようなところもあるように伺っておりまして、業界の慣行自体を見直していく必要があると考えます。既にその辺り、労働局などでも関係機関と連携して指導されているということですが、そうした取組については引き続き進めていただきたいと考えております」と。
そして石崎委員は「裁量労働制につきましては、今、藤原委員のほうからもお話がありましたように、適切に運用されている場合には非常にメリットのある面もあるということは間違いないと思います。そうした意味で、裁量労働制の適用対象業務の設定を労使に委ねる範囲を広くしていくということについては、それ自体がおよそ否定されるべきものではなく、将来的に取り得るべき法制度の一つであると考えております。ただ、これもこれまでに指摘がありましたように、また、過去の検討会の報告書などでも指摘されているように、長時間労働のリスクであったり、裁量がないところでのこの制度の適用といったようなところもあろうかと思いますし、そうした点を踏まえた上で、2024年の改正がなされたと理解しております。そうした意味では、まずこの改正後の状況がどうなっているのかというところの把握・確認が必要であり、そうした点に係る調査研究結果を踏まえた上での議論というのが必要かと思います」と。
さらに石崎委員は「(裁量労働制が)不適切に適用されている例といいますか、長時間労働が恒常化している者に対して適用している例などについて、今後適用し続けることを法制度として許していくのかどうかというようなところですとか、仮に(裁量労働制を)適用拡大した場合に、そうした副作用のリスクが大きくならないかといった点を慎重に御検討いただきたいと思っております。今出されている、経団連さんの御提案は、過半数組合がある場合に適用拡大という御提案かと思うのですが、過半数組合であれば本当に大丈夫なのかとか、そういったところも引き続き検討される必要があるかなと思っております」と。(第3回 労働市場改革分科会 議事録より抜粋)
追記:労働市場改革分科会とりまとめ案
裁量労働制の見直し(対象拡大)などを議論している日本成長戦略会議の労働市場改革分科会(第4回)が本日(2026年5月27日)午前8時から開催。
議題は「日本成長戦略会議 労働市場改革分科会 とりまとめ(取りまとめ)(案)」でしたが、とりまとめ(取りまとめ)案は概ね了承されました。
労働市場改革分科会とりまとめ案
日本成長戦略会議・労働市場改革分科会とりまとめ(取りまとめ)案には「以下の課題の解決に向けた取組を進めていくことが重要であるとの意見が示された」と書かれていますが、以下の課題の一つが「柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制等」になります。
そして「裁量労働制は、柔軟で自律的な働き方を可能にする、ワーク・ライフ・バランスに資する面もある等の観点から、適正に運用されれば労使双方にとってよい制度であるとして、制度の濫用防止策とセットで拡充の議論を進めるべき、実際の裁量の程度や業務量によって長時間労働となる確率等に影響があり、まずは2024年度改正後の状況把握が必要、適正に運用されるためにどうあるべきか労働政策審議会で慎重に議論を深めるべきとの意見があった」と記載されています。
また「他方で、長時間労働になりやすく、裁量や適切な処遇が必ずしも確保されていない実態がある中で、制度拡充を行うべきではなく、2024年度改正を踏まえた厳格な導入手続や定期的なモニタリングなどの適正運用を徹底すべき、柔軟で多様な働き方はフ レックスタイム制度など現行制度の活用によっても可能であるとの意見があった」とも記載されています。
さらに、とりまとめ案には「本分科会(労働市場改革分科会)の議論では、いずれも簡単に結論が得られるものではないが、日本成長戦略会議で取り上げた趣旨も踏まえ、労働参加率や労働生産性向上の必要性に鑑み、 労働者の健康維持やワーク・ライフ・バランスを前提とするとの認識を共有しつつ、 柔軟で多様な働き方を含む労働時間法制等に係る政策対応については、夏以降の労働政策審議会において、議論を行う必要がある」とあります。
なお、とりまとめ案には「連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置付け、『つながらない権利』の在り方、副業・兼業に当たっての健康確保、テレワークの活用促進などについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に 踏まえて、検討を進める必要がある」とあり、勤務間インターバル制度や「つながらない権利」についても「検討を進める必要がある」と記載しています。
日本成長戦略会議 労働市場改革分科会 とりまとめ(案)(PDF)
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