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AIに任せれば安くなる、とは限らない。1日あたりのコストで見た「向く仕事・向かない仕事」

AIを入れれば人件費が下がる。そう説明して、稟議を通した方もいると思います。

ただ、業務によっては、AIのほうがすでに高い。

Goldman Sachsが2026年6月に出したレポートに、AIエージェントと人間の1日あたりのコストを並べた図がありました。3つの業務が並んでいるだけの、地味な棒グラフです。それを見ていて、手が止まりました。

「AIに任せれば安くなる」は、業務によってまったく話が違う。しかも、その差を作っているのは業務の難しさではありませんでした。



1. AIのほうが高い仕事が、すでにある

数字から見ます。1日あたりのコストです。

コーディング AI 13.39ドル / 人 300.00ドル(AIは人の約4%)
コールセンター AI 92.90ドル / 人 90.00ドル(AIは人の約103%)
データ入力 AI 59.68ドル / 人 80.00ドル(AIは人の約75%)

出典は Goldman Sachs Research『An AI Job Apocalypse?』Top of Mind 第149号(2026年6月25日)18ページ。数値をもとに図を作り直しています。

まず目に入るのが、コールセンターです。AIのほうが高い。リアルタイムで音声をやりとりする業務は、いま時点では人に任せたほうが安く済む、という数字になっています。

次にデータ入力。AIのほうが安いのですが、人の75%です。25%しか減らない。人を1人分浮かせるつもりで入れると、残った75%を見て説明に困ることになります。

そしてコーディング。人の約4%です。同じ「AIのほうが安い」でも、桁が違います。


2. 数字を分けているのは、消費するトークンの量

なぜここまで差がつくのか。同じ図の右側に、1日に使うトークンの量が載っています。

データ入力は、1日およそ2,500万トークン。コーディングはおよそ700万トークン。いちばん単純に見える作業が、いちばんトークンを食っています。

考えてみれば、当たり前でした。データ入力は同じ処理を延々と繰り返します。1件あたりは軽くても、件数が積み上がる。一方コーディングは、量は多くないけれど1回の価値が高い。

そして、この差が効いてくる状況になってきました。AIの料金が「席数ぶん払う」から「使った分だけ払う」に移りつつあるからです。開発支援の代表的なサービスも、2026年6月からトークンの従量課金に切り替わりました。

席数で払っていた頃は、どれだけ使っても金額は同じでした。使った分を払う形になると、トークンを食う作業ほど、そのまま請求書に出てきます。 データ入力を毎日AIに通す、という設計が、いちばん効いてしまう形です。


3. 「業務で選ぶ」に、「コストで選ぶ」を重ねる

以前、自動化する業務の選び方を書きました。繰り返すか、手順が決まっているか、入力と出力が一定か。型にはまる仕事から手をつける、という話です。

あの5つの質問は、業務そのものを見る軸でした。今回の数字が足してくれるのは、もう一本の軸です。

型にはまるかどうかで選んだあと、もう一度こう聞く。「それは、AIに毎回やらせる価値があるか」

型にはまる仕事は、たしかに自動化に向いています。ただ「型にはまる」と「AIに向いている」は、同じではありませんでした。型にはまる仕事ほど繰り返しが多く、繰り返しが多いほどトークンを食う。データ入力がまさにそれです。


4. コーディングは、任せていい

数字がはっきりしているほうから片づけます。

コーディングは人の約4%です。ここは迷う必要がありません。プログラムを書く、直す、エラーの原因を探す。この種類の仕事は、AIに任せたほうが安く、そして速い。

ただし、丸投げとは違います。以前、手書きの請求書をAIに丸投げして、成果が出ないままトークンだけ溶かした話を書きました。

少量で試して、うまくいった指示を残して、それから量を増やす。この順番を飛ばすと、安いはずのコーディングでも高くつきます。何から始めるかは、こちらにまとめてあります。


5. データ入力は、AIに作らせて、AI以外で動かす

問題はデータ入力のほうです。25%しか減らないうえ、トークンをいちばん食う。

ここで、やり方が一つあります。AIには「作らせる」だけにして、動かすのはAI以外にする。

手順はこうです。

  1. その入力作業が、決まった手順で回っているかを確かめる。画面も、順番も、判断の分かれ目も決まっているか。決まっていなければ、まだ自動化の段階ではありません

  2. 決まっているなら、その作業を自動化する仕組みをAIに作ってもらう。Pythonのコードでも、RPAの手順でも構いません

  3. できあがったら、あとはそれを動かすだけ。ここにAIは要りません

こうすると、AIを使うのは最初の1回だけになります。毎日2,500万トークンを流し続ける形にはなりません。

道具は、費用の軽いほうから試すのがいいと思います。Pythonは無料です。Windows 11なら Power Automate Desktop が最初から入っていて、追加の費用なしでデスクトップの操作を自動化できます。私も使ったことがあります。それでも足りない規模になったら、UiPathのような有償のRPAを検討する。トークン代を減らすためにライセンス代がかさむのでは、順番が逆になります。

実際にAIと組んでRPAを作った記録と、手元で試せるデモ一式は、こちらに置いてあります。


6. うちの場合——月200ドルの中身

ここまで海外の数字の話をしてきたので、自分の数字も出しておきます。

私はいま、AIに実務をさせています。この記事の下書きも、記事の管理台帳も、公開後の分析も、AIが動かしています。払っているのは月200ドル。定額のプランです。

初めてnoteに投稿したのが2026年5月13日。今日までに公開した記事が35本です。約3ヶ月で払ったのがおよそ540ドル。単純に割ると、記事1本あたり15ドルほどになります。記事以外の作業も含めての金額なので、実際の1本あたりはもう少し低いはずです。

ここで正直に書いておきたいことがあります。定額のプランなので、私は使った分の請求書を見ていません。ただし定額でも、使いすぎれば上限に当たって止まります。お金で払っていないだけで、上限という形では払っている。

もしここで、データ入力のような大量にトークンを食う作業をAIに毎日やらせていたら、その上限を先に使い切っていたはずです。記事を書く余力は残らなかったと思います。

金額が見えない契約ほど、何にトークンを使っているかを知らないまま進みます。前回、3ヶ月ぶんの記事が検索に一本も出ていなかった話を書きました。あれと同じで、見ていない数字は、悪くなっても気づけません。


おわりに

「AIに任せれば安くなる」は、まだ全部の業務には当てはまっていませんでした。

コールセンターのように、いま時点では人のほうが安い仕事がある。データ入力のように、安くはなるけれど25%しか変わらず、そのわりにトークンをいちばん食う仕事がある。コーディングのように、桁で変わる仕事もある。

自動化する業務を選ぶとき、型にはまるかどうかを見たあとで、もう一つだけ聞いてみてください。

それは、AIに毎回やらせる価値がありますか。

やらせる価値がないなら、AIには作らせるだけにして、動かすのは別の道具に任せる。それだけで、請求書も、上限も、だいぶ変わってきます。

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