外国人技能実習制度改正に向けた最終報告書を読む【7】
外国人技能実習生・特定技能で働く人々を取り巻く環境が大きく変わろうとしている。かねてより違法性や人権侵害行為が話題に挙がっていた外国人技能実習制度・特定技能制度の抜本的な改正が進められているのだ。
本noteでは、外国人技能実習制度・特定技能制度の改正案として話題となっている「育成就労制度」が、どのような形になっていくかを考える上で重要となる最終報告書を読む連載を実施している。前回までで第3章の提言4まで読み進めた。今回は提言5について見ていこうと考えている。
提言「5 監理・支援・保護の在り方」
新たな制度及び特定技能制度が円滑かつ適切に運用され、また、外国人に 対する支援や保護が適切に行われるよう、以下のとおり、両制度に関わる各 21 機関等による監理・支援・保護体制を強化する。
提言5は、監理・支援・保護についてどう在るべきか、どう正していくべきかが書かれている。とりわけ従前の外国人技能実習制度は、監理団体の機能不全が囁かれ、違法な労働や人権侵害と見られる行為が散見されるに至っている。まさに一丁一番地と言っても過言ではない提言である。
提言①・提言②(外国人技能実習機構)
(外国人技能実習機構)
① 外国人技能実習機構を改組の上、受入れ機関に対する監督指導機能や外国人に対する支援・保護機能(転籍支援や相談援助業務を含む。)を強化するとともに、特定技能外国人への相談援助業務(母国語相談等)を行わせることとし、このような機能を適切に果たすため、必要な体制等を整備する。
② 労働基準監督署等との間での相互通報の取組を強化し、重大な労働法令違反事案に対して厳格に対応する。また、新たな制度で受け入れる外国人のみならず、特定技能外国人の保護の観点からも、地方出入国在留管理局との連携を強化し、不適正な受入れ機関等に対して厳格に対応する。
提言①・提言②は、外国人技能実習機構に関する内容である。従前の外国人技能実習機構の担ってきた役割・業務を一定評価しつつも改組の必要性を提言されている点に、現行の外国人技能実習機構を見直さなければならないとの考えが窺える。
外国人技能実習機構には、新たな役割として監理団体等に対する監督指導権限の機能拡大が提言されている他、職責を果たすための人員拡充・予算拡大の上で、転籍やハラスメントに関する相談機能の追加、外国人材の受入れ環境の調整の役割を追加するよう提言されている。
また、労働基準監督署との連携も提言されており、従前の違法な労働を強いる事業所が多々見られた実態を重く見ている様子が垣間見える。といっても労働基準監督署の人員自体が大きく不足しており、一般的な雇用監督に機能不全が見られている現状、どれだけの効果が出るかは定かでない。
新たな外国人技能実習機構には、特定技能制度に関する役割も担わせるべきとの議論があったとされており、最終的に地方出入国在留管理局との連携によって一定の機能を有する形で運営される方向で話がまとまっているようである。狙い通りの機能を果たせるかは、どれだけ予算を拡充できるかにかかっているようにも思われる。
提言③・提言④(監理団体)
(監理団体)
③ 新たな制度においても、就労を通じた人材育成の適正な実施の監理等を行う監理団体を設ける。新たな制度の下での監理団体については、国際的なマッチング機能や受入れ機関及び外国人に対する支援等の機能を適切に果たすことができるよう、受入れ機関と密接な関係を有する監理団体の役職員の監理への関与の制限、外部者による監視の強化等により独立性・中立性を担保するとともに、受入れ機関数等に応じた職員の配置、 財政基盤や外国語による相談対応体制の確保に係る許可要件を設け、送出機関からのキックバック、供応を禁止することとし、制度施行に伴い、 新たに許可を受けるべきものとする。その際、監理団体に対しては、新たな許可要件にのっとり厳格に審査を行い、機能が十分に果たせない監理団体は許可しないものとする。
④ 新たな制度の下での監理団体にとってより良い監理支援のインセンティブとなるよう、優良事例等の公表、優良な監理団体に対する各種申請書類の簡素化や届出の頻度軽減などといった優遇措置を講じる。
提言③・提言④は、監理団体に関する提言である。外国人技能実習生にまつわる多くの問題は、監理団体及び受入れ機関に端を発して発生している現状が見られている。本提言は、そうした状況を背景として、監理団体の独立性確保、監理団体の監督に主眼が置かれている。
最終報告書の中で、他の提言に比して多くの言葉が掲載されている提言となっているが、独立性確保に関して様々な議論が起こったものによると思われる。議論の中で、多少なりとも既得権益に基づく政治的な言及や保身を前提とした意見も見られたのでないかと推察する。無難な落とし所に収めた形になっているのは、そのためだろう。
監理団体については、制度変更後に自動移行せず、一度審査を受ける形となる。審査に割かれるリソースがどれほどのものか不透明だが、この機会に疑わしき監理団体は全て登録を見送られる形になるのを願ってやまない。
提言⑤・⑥(受入れ機関)
⑤ 新たな制度の下での受入れ機関については、人材育成の観点から、現行 の技能実習制度における受入れ機関ごとの受入れ人数枠を含む育成・支援体制等の要件を適正化して設定するとともに、人材確保の観点から、現行の特定技能制度における分野別協議会への加入等の要件を設けた上で、その他より適切性を確保するために必要な要件を新たに設けることを検討する。また、外国人の前職要件等、現行の技能実習制度の国際貢献目的に由来する要件については撤廃する。
⑥ 新たな制度の下での受入れ機関にとってより良い受入れのインセンテ ィブとなるよう、優良事例等の公表、優良な受入れ機関に対する各種申請書類の簡素化や届出の頻度軽減などといった優遇措置を講じる。
受入れ体制にかかる要件についての提言である。人材育成観点に適する受入れが行われるよう、受入れ枠等を適正化すべきとの結論を以て、適正化の方向で進められるとされている。つまり、闇雲な受入れが行われないような形になるのだと見られる。
人権侵害行為や労働問題を防ぐべく、労働者保護を要件の一つとして設定するといった話がなされており、現行制度における問題点を汲み取っている印象を受ける。また、前職要件や国際貢献目的の撤廃は、ブローカー対策を念頭に置いており、この点も好ましい方向に思える。
⑥は④同様に、より良い運営をするインセンティブを設けるものであり、ただ処分するだけの制度よりも健全な運営に向かう意欲喚起として必要性が高い。もっとも厳格な処分とセットでこそ価値を持つと見られ、新制度が骨抜きになるような処分がなされる未来が来ないのを願うよりない。
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