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「Solaria 第五話|ひとつのステップ」

朝の光が、鏡に反射していた。

ダンス練習室。

いつもの場所。

5人が並ぶ。

でも ——

昨日までとは、少しだけ違う。

「……いくよ」

あかりの声。

変わらず、まっすぐ。

「5、6、7、8 ——」

タッ ——

足音が重なる。

まだ、揃わない。

少しズレる。

でも ——

止まらない。

昨日までのように、すぐには止まらない。

(……あれ?)

ひなたが、ふと感じる。

(なんか……)

ほんの一瞬。

“重なった”。

——すぐに崩れる。

「……今の」

思わず声が出る。

全員が、少しだけ顔を上げる。

「今のとこ、もう一回やってみよ!」

ひなたの声。

でも、それは昨日までの“勢い”とは違っていた。

ちゃんと、見ている。

ちゃんと、感じている。

もう一度。

「5、6、7、8 ——」

タッ ——

さっきより、少しだけ揃う。

まだ不完全。

でも ——

確かに、“何か”があった。

(……今の)

あかりが、ほんのわずかに目を細める。

(悪くない)

でも、何も言わない。

「一回分けようか」

あかりが言う。

「細かくやる」

ペアに分かれる。

ひなたと、あかり。

しおりと、ゆい。

そして —— さくら。

少し遅れて、輪に入る。

「ひなた」

あかりが近づく。

「ここ、早い」

「……やっぱり?」

「うん。気持ちが前に出すぎ」

少しだけ、間。

「……でも」

ひなたが顔を上げる。

あかりが、続ける。

「そこ、いいよ」

一瞬、時間が止まる。

「……え?」

思わず、聞き返す。

あかりは視線を逸らす。

「勢いは武器だから」

ぶっきらぼうに。

でも ——

初めての“肯定”。

ひなたの胸が、少し熱くなる。

「……ありがと」

小さく笑う。

一方。

しおりと、ゆい。

「今のターン、ちょっと重いかも」

ゆいが、やわらかく言う。

「……そうね」

しおりは、すぐに修正する。

「もう少し抜く」

無駄がない。

でも ——

視線が、時々そちらへ向く。

ひなたとあかり。

(……ちゃんと、変わってきてる)

心の中で、静かに思う。

(無駄じゃなかった、ってことか)

ほんの少しだけ。

評価が変わる。

「……あの」

小さな声。

さくら。

「もう一回……やってもいい?」

少し震えている。

でも ——

自分から、言った。

ひなたがすぐに振り向く。

「いいじゃん」

笑う。

「やろ!」

音もなく、空気が整う。

さくらが、息を吸う。

そして ——

「……あ……」

小さな声。

まだ弱い。

でも。

前より、少しだけ届く。

ひなたが、すぐに言う。

「いいじゃん」

まっすぐに。

迷いなく。

さくらの目が、少し見開かれる。

(……いい?)

自分の声が。

ゆいが、そっと微笑む。

しおりは何も言わない。

でも、目を逸らさない。

「通すよ」

あかりの声。

再び、5人が並ぶ。

「5、6、7、8 ——」

タッ ——

今度は。

少し長く。

揃う。

完全じゃない。

ズレるところもある。

声もまだ小さい。

でも ——

“気持ち”が、揃っている。

終わる。

沈黙。

誰も、すぐに話さない。

ただ ——

息が、少しだけ合っている。

「……今の、良かったよね」

ゆいが、静かに言う。

その声は、確信に近い。

少し間。

全員が、あかりを見る。

あかりは、腕を組んだまま。

そして ——

「……まあ」

いつも通りのトーン。

でも。

「やっと、スタートラインかな」

その言葉。

厳しい。

でも ——

確かに、前に進んでいる。

ひなたが、笑う。

「よっしゃ」

小さく、拳を握る。


夕方。

学園のカフェテリア。

少し遅い時間。

人もまばら。

5人が、同じテーブルに座っている。

ぎこちない空気は、もうない。

「なんかさ」

ひなたが言う。

「ちょっとだけ、いける気がしてきた」

「“ちょっとだけ”ね」

しおりが返す。

でも、その声はどこか柔らかい。

「それで十分だよ」

ゆいが微笑む。

さくらは、何も言わない。

でも。

ほんの少しだけ、前を向いている。

あかりは、外を見ている。

夕焼け。

そして、ぽつりと。

「……もっといけるよ」

小さく。

誰にでもなく。

ひなたが、それを聞いて笑う。

「でしょ?」

 

外に出る。

坂道。

夕焼けが、5人を照らす。

影が、伸びる。

少しだけ。

重なっている。

「もっといけるよ、私たち」

ひなたの声。

その言葉は、まっすぐ空に伸びていく。

まだ、完璧じゃない。

でも ——

確かに、前に進んでいる。

第五話 ひとつのステップ (終)

▶ Solaria 第六話|
― スプリングフェスティバル ― へ続く

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