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ヘッジファンドSeawolf Capitalが読む、Fed・原油・金・AI雇用の交差点

米国のマクロ経済環境が複雑さを増す中、投資家は、FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策、地政学リスクによるエネルギー市場の変動、そして、AI導入が引き起こす雇用構造の変化という、複数の要因を同時に読み解く必要に迫られている。ポッドキャスト「On the Tape」に出演したSeawolf CapitalのPorter Collins氏とVincent Daniel氏(いずれも共同創業者)は、こうした複雑な市場環境について率直な意見を交わした。両氏は、2011年にSeawolf Capitalを設立し、2017年に外部資金を返還してファミリーオフィスとして運用を続けている投資家だ。本稿では、その対談内容を、金融政策・エネルギー・金・AIと雇用という4つの軸から整理する。なお、本稿で紹介する内容は特定銘柄や取引の推奨を目的としたものではなく、両氏の見解を紹介するものである点にご留意いただきたい。


1. FRBの「身動きの取れない」状況


対談は、新FRB議長Kevin Warsh氏の議会証言と、この日発表された6月のCPI(消費者物価指数)から始まった。

1-1. インフレと利払い負担の板挟み

Collins氏は、FRBが置かれた状況について「インフレは明らかに高止まりしているが、冷え込みつつある。同時に、税収全体に占める利払い費の割合はどんどん大きくなっている」と指摘し、「FRBと政府は、ある種の袋小路に自ら入り込んでしまった」との見方を示した。同氏によれば、FRBは、実質的に利上げでインフレと戦う余地を失いつつあるという。

1-2. 住宅とエネルギーという「二つのインフレ」

Collins氏は、さらに、CPIの構成要素のうち約45%を占めるとされる「シェルター(住居費)」項目が現在非常に低い水準、地域によってはマイナスにあると指摘する一方、戦争や原油に連動する項目は高止まりしているという二極化した状況を説明した。

1-3. 予測市場での見立て

両氏は、予測市場プラットフォームKalshiの契約(イベントコントラクト)を用いて自らの見立てを共有する場面も見られた。「2027年以前にFRBが再び利上げする可能性」について、Daniel氏、Collins氏、司会のDanny Moses氏の3者とも「ない」との見立てで一致している。

2. エネルギー市場:精製マージン拡大とロシア製油所への攻撃


原油市場については、地政学リスクによる供給制約が話題の中心となった。

2-1. クラックスプレッド拡大の背景

Collins氏は、原油価格とガソリン価格の差であるクラックスプレッド(精製マージン)が拡大している背景として、過去4〜8年にわたるESG投資の影響で米国内に新規精製設備の供給がほとんどなかったこと、そして中国が精製分野に参入してきたことを挙げた。

2-2. ロシア製油所への攻撃という供給ショック

Daniel氏は、AIツールに「規制や軍事衝突によって停止・損傷したロシアの製油所は何カ所か」と問い合わせた結果について言及し、「ロシアの主要製油所38施設のうち21施設超が攻撃を受けている」という調査結果を紹介した。同氏はこれについて「これは問題だ。単純に供給を減らしている」と述べている。

2-3. Exxon Mobilへの投資判断

両氏は、エネルギー関連銘柄として、Petrobras、Transocean、Tidewaterなどを長期保有してきたと明かした上で、直近では、Exxon Mobilに新規投資したことを紹介している。Daniel氏は、「Exxonは、世界最大級の精製能力を持つ企業の一つであり、今回の状況から今後の決算が大きく恩恵を受けるはずだ」と説明した。Collins氏も同社について、2030年のEBITDAガイダンスが原油65ドルを前提に設定されている点を挙げ、精製マージンの改善分はこの前提にまだ織り込まれていない可能性を指摘した。

3. 金相場:4,000ドル割れからの反発と中国の存在感


金価格については、直近の下落局面とその背景が議論された。

3-1. 5つの「ハードル」

Collins氏は、金価格について、CPI発表、翌日のPPI発表、Warsh氏の議会証言、そして、終わりの見えない中東情勢という一連の「ハードル」を挙げ、金が5,500ドル近辺から4,000ドルまで調整した背景には、中央銀行による一部売却やインド政府による金購入規制、インフレ指標の上振れによる債券利回り上昇などが重なったと説明した。

3-2. 中国による継続的な購入

Collins氏は、中国が毎月継続的に金を購入し続けていると述べ、その狙いについて「世界の通貨秩序を再編し、人民元をより準備通貨に近い存在にしようとしている」との見方を示した。

3-3. モメンタムが支配する市場構造

Daniel氏は、市場構造の変化について興味深い指摘をしている。「金が4,700ドルから5,000〜5,200ドルに向かっていた時は誰もが欲しがったが、4,000ドルになると誰も触れたがらない」とし、これは銘柄の種類を問わず市場を支配する「モメンタム」という要因によるものだと説明した。同氏は、多くの投資家が価格の底打ちが確認されるまで様子見をするとした上で、4,000ドルが「防衛ライン」として機能するかどうかを注視していると述べている。

4. AIと雇用:「痛みは後からやってくる」


対談後半では、AI投資と株式市場、そして雇用への影響という、より構造的なテーマに話題が移った。

4-1. Zatrini氏のメモを巡る議論

両氏は、AI投資に関する著名な分析として知られる「Zatriniメモ」に言及し、その核心的な論点が「AIによってどれだけの雇用が失われるか」にあるとの理解を示した。Collins氏は、同メモについて、「マージンへの恩恵が先に来て、経済への痛みは後から来るというのが趣旨だった」と要約し、「10月まではこれらの銘柄を空売りしようとするな、とまで書かれていたが、これまでのところそれはおおむね正しかったようだ」と評価している。

4-2. 「AIの成功には失業増加が避けられない」という率直な発言

Daniel氏はより踏み込んだ見解を示した。同氏は、「エンタープライズレベルでAIが本当に機能するためには、失業の増加は避けられない」と述べ、これは実質的に大幅な利益率拡大を意味すると説明する。同氏は、さらに、「どのCEOと話しても、計画には従業員の一定割合を削減することが含まれている。ただ、それをオープンな場で語ることは許されていないだけだ」と述べ、AI導入によるコスト構造の変化が、多くの企業で既に織り込まれつつあるとの見方を示した。

4-3. 設備投資拡大への市場の見方の変化

Daniel氏は、AI関連の設備投資(capex)拡大に対する株式市場の反応が変化しつつある点にも言及した。同氏は、「半年前や9カ月前であれば、GoogleやAmazonが設備投資を30〜40%増やすと発表すれば株価は上がった。しかし今はもうそうではないと思う」と述べ、「2027年に設備投資の成長率をさらに引き上げると発表すれば、むしろ株価は5〜15%下落するだろう」との見通しを示した。これを受け、企業側はAI戦略とインフラ投資を継続しながらもコストを抑制する方法を模索しているはずだとの分析も加えている。

5. 米国財政赤字への警鐘


対談の終盤では、米国の財政赤字と国債発行についても意見が交わされた。Daniel氏は、SNS上で見かけた「過去50年の財政赤字の推移を示し、コロナ後の悪化ペースは改善傾向にある」とするグラフについて、「経済規模自体が拡大している中での名目ドルベースの債務の大きさを見落としている」と批判的な見解を示した。同氏は「赤字は問題ではないと言う人に、あなたは米国債を無レバレッジで買っているのかと聞くと、決まって『いいえ』という答えが返ってくる」と述べ、財政赤字への懸念を率直に語っている。

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