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米・イラン合意とホルムズ海峡再開 ― ゴールドマン・サックスが読む原油市場の行方

米国とイランが衝突終結とホルムズ海峡再開に向けた合意に至ったことを受け、原油市場が大きく動いている。ゴールドマン・サックスのポッドキャスト「Exchanges」では、グローバル・コモディティ・リサーチ共同責任者のドン・ストロイヴェン氏が、エネルギー市場への影響について解説した(2026年6月16日収録)。


1. 史上最大級の供給ショックと、120ドルから80ドル台への急落


今回の衝突では、中東地域から世界の原油生産量の約14%が失われたとされる。ストロイヴェン氏は、これを「史上最大の供給ショック」と位置づけた上で、原油価格(ブレント)はピーク時の120ドル超から、現在は80ドル台前半まで下落していると説明した。

1-1. 価格が下がった2つの理由

価格急落の背景について、ストロイヴェン氏は次のように述べている。

「市場は、ゴールドマンのベースケースに沿った、中東供給の比較的楽観的な回復シナリオを織り込んでいる」

具体的には、ホルムズ海峡への流入が回復し、7月末までに同地域からの輸出が正常水準に戻るという想定だ。加えて、中東以外の地域での需要が約5%減少する一方、供給面でも底堅さが見られたことが、価格下落を後押ししたとしている。

2. ホルムズ海峡再開の道筋と、残る不確実性


ストロイヴェン氏によれば、輸出が完全に正常化するには、海峡を通過する流量がこれまでパイプライン経由に振り替えられていた分を含め、通常水準の約70%まで回復する必要があるという。鍵となるのは、「イラン側に流量を増やす意思があるかどうか」であり、まず数隻のタンカーが攻撃を受けずに無事通過できるかが当面の注目点になるとしている。

2-1. スイスでのMOU署名と「タンカーの数」を数える局面

今週金曜以降、スイスで覚書(MOU)の署名が予定されており、ゴールドマンは、この時点からタンカーの通過状況を注視する方針だという。ストロイヴェン氏は、過去に「再開の空振り」があった経緯にも触れ、市場の楽観にもかかわらず不確実性は依然大きいと強調した。

3. ゴールドマンの価格予想 ― 「フェアバリュー」としての75ドル


ゴールドマンは、ブレント原油の来年(2027年)平均価格を75ドル、WTIを70ドルと予想している。現在の80ドル前後という水準について、ストロイヴェン氏はこう位置づける。

「2027年予想の75ドルは、長期的なフェアバリューに一致する水準だ。短期的には、在庫水準が低いため、通常より幾分高い価格になっている」

供給途絶リスクへの懸念から、原油価格には、一定の「セキュリティ・プレミアム」が乗っており、戦争前と比較すると最終的に1バレルあたり約20ドル高い水準で価格が落ち着くとの見立てだ。

3-1. 上振れ130ドル超、下振れ60ドル ― 二つのシナリオ

リスクシナリオとしては、ホルムズ海峡が完全には再開せず、中東からの輸出が今後1年半で1日あたり1000万バレルの規模で緩やかにしか回復しないケースでは、年末までにブレントが130ドルを超える可能性があるという。一方、海峡再開がより早く進み、需要減少がより持続的かつ中東以外の供給対応がさらに強まるケースでは、2027年のブレントが60ドルまで下がる可能性も示されている。ストロイヴェン氏は、上振れと下振れの確率はおおむね同程度としつつ、上振れ時の価格変動幅(プラス50ドル)の方が下振れ時(マイナス20ドル)より大きいという非対称性を指摘した。

4. 需要側の変化 ― 中国のEVシフトと原油輸入減少


需要面では、世界の原油需要は、一時的に約500万バレル/日(全体の約5%)落ち込んだとされる。このうち約90%は、2027年までに回復すると見込まれているが、中国におけるEV販売の急増などを背景に、戦争が起きなかった場合と比較して、2027年時点でも約50万バレル/日分の需要は戻らない可能性があるという。

5. 地政学リスクが浮き彫りにした構造変化


最後に、ストロイヴェン氏は今回の局面から得られる教訓を二つ挙げた。一つは、地政学的に分断が進む世界では、コモディティ供給が途絶するリスクが一段と高まっているという点。もう一つは、中国がこの衝撃に対して石炭やEVへの切り替えを通じて高い適応力を見せたという点だ。

「中国の原油輸入量が前年比で400万〜500万バレル/日減少していることが、原油価格が3桁ドルに達していない最大の理由だ」

米中が地政学的影響力やAI、コモディティの優位性を競う中、今後も大規模な供給途絶がより頻繁に発生する可能性がある一方、それに対応する世界の適応力にも注目すべきだとストロイヴェン氏は締めくくった。

なお、本記事で紹介した内容はゴールドマン・サックスの公表情報に基づく市場分析であり、特定の投資行動を推奨するものではない。原油市場への投資判断にあたっては、最新の情勢を踏まえた上で個別に検討することが望ましい。

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