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中学でも分かる⑪「偏微分方程式」

 前回は微分方程式を勉強しました。ここでは、偏微分方程式を勉強します。偏微分方程式とは、文字通り偏微分の入った方程式です。
 まずは、中学でも分かる①「微分法」でやった偏微分を加筆修正して再掲し、復習します。その後、あらたに偏微分方程式を勉強します。難しい内容は避けて、偏微分方程式とは何かについて、その基本のみを紹介します。
 最後に、物理で現れる微分方程式
・ニュートンの運動方程式
・シュレーディンガー方程式
を簡単に紹介します。


偏微分(基本)

 $${f(x)=x^2}$$
という関数は、変数が $${x}$$ だけの1変数関数です。これを $${x}$$ で微分すると

$$
\begin{align*}
f'(x)=2x
\end{align*}
$$

 または

$$
\begin{align*}
(x^2)'&=2x\\
\dfrac{df(x)}{dx}&=2x\\
\dfrac{d}{dx}f(x)&=2x
\end{align*}
$$

と表せることを、中学でも分かる①「微分法」で解説しました。

2変数関数

 関数には、次のように変数が $${2}$$ つの関数もあります。これを2変数関数といいます。

$$
\begin{align*}
f(x,  y)=3x^2y^5
\end{align*}
$$

 これは、$${x,  y}$$ の2つの変数をもつ関数です。$${x,  y}$$ の値が決まると、$${z=f(x,  y)}$$ という関数によって $${z}$$ の値がただ1つに決まります。

$$
\begin{align*}
x,  y  が決まる \xrightarrow[]{  z=f(x,  y)  }  z  の値がただ1つに決まる
\end{align*}
$$

(例)$${f(x,  y)=3x^2y^5}$$ について、$${z=f(x,  y)}$$ とおくと
 $${x=2,  y=1}$$ のとき
 $${z=f(2,  1)=3\cdot2^2\cdot1^5=3\cdot4\cdot1=12}$$

2変数関数の微分

 ここで、$${f(x,  y)=3x^2y^5}$$ の微分を考えます。この場合、$${x}$$ で微分するか、$${y}$$ で微分するかで2つの微分があります。

➀ $${y}$$ を定数とみなして $${x}$$ で微分する。
 これは、$${\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial x}}$$ という記号を用いて

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial x}&=\dfrac{\partial}{\partial x}3x^2y^5\\
&=3y^5\dfrac{d}{dx}x^2\\
&=3y^5\cdot2x\\
&=6xy^5
\end{align*}
$$

 $${y}$$ を定数とみなし、$${x}$$ の関数部分を $${x}$$ で微分します。

 $${y}$$ は定数扱いなので、$${3y^5}$$ をまとめて係数(定数)として扱い、偏微分の外に出します。
 このように、2変数関数に関して、1つの変数を定数とみなし、もう1つの変数で微分したものを偏微分といいます。

偏微分の記号

 偏微分で使う「$${\partial}$$」という記号は、筆記体の「$${d}$$」("ディー")が元になっており、”ラウンドディー” や ”デル” と読みます。
 偏微分を表すにあたって
 $${\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial x}}$$ や $${\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)}$$
のように、分母の $${x}$$ によって、$${x}$$ で偏微分することがはっきりと明示されます。これを、分母を $${y}$$ にして
 $${\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial y}}$$ や $${\dfrac{\partial}{\partial y}f(x,  y)}$$
と書けば、次の➁で述べる「$${y}$$ で偏微分する」という意味になります。

 なお
 $${\dfrac{df(x)}{dx}}$$ や $${\dfrac{d}{dx}f(x)}$$
は高校で習う微分で、この微分を常微分といいます(中学でも分かる①「微分法」)。

 先ほどの①の計算をもう一度みてみましょう。
 $${x}$$ での偏微分の場合、$${x}$$ 以外の部分を偏微分の外に出すことによって、最後は $${x}$$ での常微分 $${\dfrac{d}{dx}f(x)}$$ になります。

(再掲)

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial x}&=\dfrac{\partial}{\partial x}3x^2y^5 \leftarrow {\footnotesize x  での偏微分}\\
&=3y^5\dfrac{d}{dx}x^2 \,\leftarrow {\footnotesize x  での常微分}\\
&=3y^5\cdot2x\\
&=6xy^5
\end{align*}
$$

 では次に、$${y}$$ での偏微分をみていきます。
 $${f(x,  y)=3x^2y^5}$$ について

➁ $${x}$$ を定数とみなして $${y}$$ で微分(偏微分)する。

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial y}&=\dfrac{\partial}{\partial y}3x^2y^5 \leftarrow {\footnotesize y  での偏微分}\\
&=3x^2\dfrac{d}{dy}y^5 \,\leftarrow {\footnotesize y  での常微分}\\
&=3x^2\cdot5y^4\\
&=15x^2y^4
\end{align*}
$$

 $${x}$$ を定数とみなし、$${y}$$ の関数部分を $${y}$$ で微分(常微分)します。

 $${x}$$ は定数扱いなので、$${3x^2}$$ をまとめて係数(定数)として扱い、偏微分の外に出します。最後に $${y}$$ での常微分が残ります。

 まとめると、$${f(x,  y)=3x^2y^5}$$ について
(1) $${x}$$ で偏微分すると

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial x}=3y^5\dfrac{d}{dx}x^2=3y^5\cdot2x=6xy^5
\end{align*}
$$

(2) $${y}$$ で偏微分すると

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial y}=3x^2\dfrac{d}{dy}y^5=3x^2\cdot5y^4=15x^2y^4
\end{align*}
$$

と、結果が異なることに注意しましょう。

多変数関数の偏微分

 3変数以上の関数についても偏微分を考えることができます。
 変数が2つ以上の関数を多変数関数といいます。多変数関数の偏微分は、ある1つの変数のみに着目し、それ以外の変数は定数とみなして微分します。

(例1)$${f(x,  y,  z)=5x^2y^3+z^4}$$ について $${x}$$ で偏微分すると

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y,  z)&=\dfrac{\partial}{\partial x}(5x^2y^3+z^4)\\
&=\dfrac{\partial}{\partial x}5x^2y^3+\dfrac{\partial}{\partial x}z^4\\
&=5y^3\dfrac{d}{dx}x^2+0\\
&=5y^3\cdot2x\\
&=10xy^3
\end{align*}
$$

 $${z}$$ は定数とみなしているので

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}z^4=0
\end{align*}
$$

となります。

(例2)$${f(x,  y,  z)=5x^2y^3+z^4}$$ について $${y}$$ で偏微分すると

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial y}f(x,  y,  z)&=\dfrac{\partial}{\partial y}(5x^2y^3+z^4)\\
&=\dfrac{\partial}{\partial y}5x^2y^3+\dfrac{\partial}{\partial y}z^4\\
&=5x^2\dfrac{d}{dy}y^3+0\\
&=5x^2\cdot3y^2\\
&=15x^2y^2
\end{align*}
$$

 $${z}$$ は定数とみなしているので

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial y}z^4=0
\end{align*}
$$

となります。

(例3)$${f(x,  y,  z)=5x^2y^3+z^4}$$ について $${z}$$ で偏微分すると

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y,  z)&=\dfrac{\partial}{\partial x}(5x^2y^3+z^4)\\
&=\dfrac{\partial}{\partial x}5x^2y^3+\dfrac{d}{dz}z^4\\
&=0+4z^3\\
&=4z^3
\end{align*}
$$

 $${x,  y}$$ は定数とみなしているので

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}5x^2y^3=0
\end{align*}
$$

となります。

偏微分の意味(引用)

 偏微分について、書籍「ブラックホールと時空の方程式(小林晋平著)」(P82~P83)に非常にわかりやすい優れた解説があるので、(本記事に合うように多少文章を変えて)引用します。

(引用始め)

 微分とは、何らかの量の微小変化を表すものです。 たとえば、
時刻 $${t}$$ での物体の位置(座標) $${x(t)}$$ の時間変化は $${\dfrac{dx(t)}{dt}}$$であり、これは速度 $${v(t)}$$ を表します。

$$
\begin{align*}
\dfrac{dx(t)}{dt}=v(t)
\end{align*}
$$

 位置は $${x(t)}$$ という書き方からもわかるように時刻のみの関数です。 つまり、時刻 $${t}$$ が変化すると、それに応じて位置が変化することを表しています。 時刻 $${t}$$ を動かすとそれにつられて $${x(t)}$$ も動くという関係があるので、$${t}$$ を独立変数、$${x}$$ を従属変数といいます。
 位置 $${x}$$ がそうであるように、1つの独立変数によって決まる 従属変数のことを1変数関数と言いますが、私たちが日常で見かけるいろいろな物理量にはそれほど単純ではないものもたくさんあります。
 たとえば世界の気温を考えてみましょう。気温は場所や時間に応じてどんどん変化します。今あなたが赤道直下のどこか暑い国にいるとして、赤道に沿って進めば相変わらず気温は高いままでしょうし、北に向かって進んでいけば少しずつ気温は低くなっていくはずです。 途中に山があり、それを登って高いところに行ってもやはり気温は低くなるでしょう。
 赤道方向に沿って $${x(t)}$$ 軸,、北に向かって $${y}$$ 軸、空に向かって $${z}$$ 軸をとれば、気温 $${T}$$ は $${x,  y,  z}$$ のそれぞれによって異なる値をとるので

$$
\begin{align*}
T=T(t,  x,  y,  z)
\end{align*}
$$

と書けます。このように、少なくとも気温は時刻 $${t}$$ および位置 $${x,  y,  z}$$ に依存する 4 変数関数のはずです。このように2つ以上の独立変数に依存して決まる関数を多変数関数と言いますが、 多変数関数の変化は、微分でどのように表されるのでしょうか。
 1変数関数 $${f(x)}$$ の微分の場合、1つの変数 $${x}$$ に依存しているので、変化と言えば
 $${x}$$ を変化させたときに関数 $${f(x)}$$ がどう変化するか
を指します。これに対し、気温 $${T(t,  x,  y,  z)}$$ の場合は、$${t, x, y, z}$$ という要素のどれを変化させるかによって変化の様子は違ってくるはずです。
 たとえば赤道方向($${x}$$ 軸方向)に沿って動いても相変わらず気温は高いままでしょうから、$${x}$$ 軸方向への 変化はあまりなさそうです。一方、 北上したり($${y}$$ 軸の正方向への移動)、山に登っ たり($${z}$$ 軸の正方向への移動)すると気温は下がるでしょうから、そちら方向への変化は負の値になりそうです。こうした 「変数ごとの変化」を表すのに役立つのが偏微分です。具体的には、$${x}$$ 方向に移動したとき気温 $${T}$$ がどう変化するかを

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}\,T(t,  x,  y,  z)
\end{align*}
$$

のように書き表して、 通常の微分 (常微分と言います)と区別します。
 偏微分は「特定の量の変化分だけに注目し、それ以外の量の変化は一切無視する」という計算なので、$${x}$$ 方向への偏微分であれば $${x}$$ 以外の変数 $${t, y, z}$$ は定数だと思って計算します。
 たとえば $${f(x,  y)=3x+2y+4xy}$$ という2変数関数があれば、$${f(x,  y)=3x+2y+4xy^2}$$ を $${x}$$ で偏微分したものは

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)=3+0+4y^2\cdot1=3+4y^2
\end{align*}
$$

 $${f(x,  y)=3x+2y+4xy^2}$$ を $${y}$$ で偏微分したものは

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)=0+2+4x\cdot2y=2+8xy
\end{align*}
$$

となります。

(引用終わり) 

偏微分方程式

 偏微分を含んでいる方程式を偏微分方程式といいます。また、常微分を含んでいる方程式を常微分方程式といいます。
 2つの変数をもつ関数として $${f(x, y)}$$ を考えると、例えば

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)=\dfrac{\partial}{\partial y}f(x,  y)
\end{align*}
$$

のような式が偏微分方程式です。この式の左辺は $${f(x,  y)}$$ の $${x}$$ での偏微分、右辺は $${f(x,  y)}$$ の $${y}$$ での偏微分です。
 すると、この式の意味は、
 「$${f(x,  y)}$$ を $${x}$$ で偏微分したものと、$${f(x,  y)}$$ を $${y}$$ で偏微分したものは等しい」
という意味の偏微分方程式です。これは、次のように表記される場合もあります。

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial x}=\dfrac{\partial f(x,  y)}{\partial y}
\end{align*}
$$

 では、この偏微分方程式を解いて一般解 $${f(x,  y)}$$ を求めてみましょう。

問題 次の偏微分方程式

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)=\dfrac{\partial}{\partial y}f(x,  y)
\end{align*}
$$

について

(1) $${f(x,  y)=g(x)h(y)}$$ として一般解を求めなさい。
(2) $${f(0,  0)=1,  f(1,  0)=e}$$ を満たすときの特殊解を求めなさい。

指針
 $${f(x,  y)=g(x)h(y)}$$ して一般解を求める方法を変数分離法といいます。一般解を

$$
\begin{align*}
f(x,  y)=\underset{g(x)}{(x  の関数)} \times \underset{h(y)}{(y  の関数)}
\end{align*}
$$

と仮定して求める方法です。このように変数分離された解があるかないかを探ることによって、一般解が容易に求まる場合があります。
 なお、変数分離法では解が求まらない場合もありますが、その場合は他の方法を探ることになります。本問題は変数分離法で解ける問題です。

解答

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)=\dfrac{\partial}{\partial y}f(x,  y)
\end{align*}
$$

に、$${f(x,  y)=g(x)h(y)}$$ を代入して

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}g(x)h(y)=\dfrac{\partial}{\partial y}g(x)h(y)
\end{align*}
$$

 左辺と右辺に分けて計算します。

(左辺)について

$$
\begin{alignat*}{2}
(左辺)&=\dfrac{\partial}{\partial x} g(x)h(y)& &\leftarrow {\footnotesize x  での偏微分}\\
&=h(y)\dfrac{d}{d x}g(x)& &\leftarrow {\footnotesize x  での常微分}
\end{alignat*}
$$

 これは $${x}$$ についての偏微分なので、$${y}$$ の関数 $${h(y)}$$ は偏微分の外に出せます。$${y}$$ は定数扱いです。すると、$${g(x)}$$ の $${x}$$ での常微分 $${\dfrac{d}{dx}g(x)}$$ が最後に残ります。さらに、簡単のため $${\dfrac{d}{dx}g(x)=g'(x)}$$ とおくことで

$$
\begin{align*}
(左辺)=h(y)g'(x) \cdots(*1)
\end{align*}
$$

となります。

(右辺)について
 同様に $${\dfrac{dh(y)}{dy}=h'(y)}$$ とおくと、右辺について

$$
\begin{align*}
(左辺)&=\dfrac{\partial}{\partial y}g(x)h(y) \leftarrow {\footnotesize y  での偏微分}\\
&=g(x)\dfrac{d}{dy}h(y) \,\leftarrow {\footnotesize y  での常微分}\\
&=g(x)h'(y) \cdots(*2)
\end{align*}
$$

 $${(*1)=(*2)}$$ より

$$
\begin{align*}
h(y)g'(x)=g(x)h'(y)
\end{align*}
$$

 ここで
(case1) $${g(x)h(y)\ne0}$$ のとき
(case2) $${g(x)h(y)=0}$$ のとき
で場合分けをします。

(case1) $${g(x)h(y)\ne0}$$ のとき
 両辺を $${g(x)h(y)(\ne0)}$$ で割って

$$
\begin{align*}
\dfrac{\cancel{h(y)}g'(x)}{g(x)\cancel{h(y)}}&=\dfrac{\cancel{g(x)}h'(y)}{\cancel{g(x)}h(y)}\\
\dfrac{g'(x)}{g(x)}&=\dfrac{h'(y)}{h(y)}
\end{align*}
$$

 すると、左辺は変数 $${x}$$ だけの関数、右辺は変数 $${y}$$ だけの関数になります。$${x}$$ と $${y}$$ は互いに独立(お互いに関係なく、$${x}$$ と $${y}$$ は自由に値をとれる)なのに、左辺と右辺がつねに等しいので、この式を満たすためには、左辺と右辺は

$$
\begin{align*}
\dfrac{g'(x)}{g(x)}&=K\\
\dfrac{h'(y)}{h(y)}&=K\\
\end{align*}
$$

と、同じ定数値 $${K}$$ をならなければなりません。
 左辺は $${x}$$ のみの関数であり、右辺は $${y}$$ のみの関数です。$${x}$$ と $${y}$$ は互いに独立に動かせるので、この等式がすべての $${x,  y}$$ で成り立つためには、左辺も右辺もともに一定の値でなければなりません。よって、その共通の定数を $${K}$$ と置きます。
 抽象的なので、具体例をあげて解説します。

(追記)直感的には理解できるのですが、下記の解説は、例の取り方も含めてなにか腑に落ちない感じがあるので、もっとうまく言語化できないか調整中です。余計なら外します。 

(詳説)
 仮に、最も簡単な例として

$$
\begin{align*}
\dfrac{g'(x)}{g(x)}&=x\\
\dfrac{h'(y)}{h(y)}&=y\\
\end{align*}
$$

だとします。左辺は $${x}$$ だけの関数なので、もっとも簡単に $${x}$$ と置きました。右辺は $${y}$$ だけの関数なので、もっとも簡単に $${y}$$ と置きました。つまり、それぞれは一定の値(定数 $${K}$$)ではありません。
 すると

$$
\begin{align*}
\dfrac{g'(x)}{g(x)}=\dfrac{h'(y)}{h(y)}
\end{align*}
$$

のとき

$$
\begin{align*}
x=y
\end{align*}
$$

となりますが、これだと $${x}$$ と $${y}$$ は互いに自由な値をとれません。例えば、
 $${x=1}$$ なら $${y=1}$$
 $${y=-3}$$ なら $${x=-3}$$
と $${x}$$ と $${y}$$ は同じ値にならざるを得ず 、互いに無関係に、自由な値をとれないということです。
 一方、$${K}$$ を定数として

$$
\begin{align*}
\dfrac{g'(x)}{g(x)}&=K\\
\dfrac{h'(y)}{h(y)}&=K\\
\end{align*}
$$

だと、任意の $${x,  y}$$ に対して

$$
\begin{align*}
K=K
\end{align*}
$$

と、恒等式(つねに成り立つ式)になります。例えば、
 $${x=1,  y=3}$$ のとき $${K=K}$$
 $${x=5,  y=-2}$$ のとき $${K=K}$$
と、$${x}$$ と $${y}$$ が互いに自由に値をとっても、つねに $${K=K}$$ が成り立ちます。
 よって

$$
\begin{align*}
\dfrac{g'(x)}{g(x)}=\dfrac{h'(y)}{h(y)}
\end{align*}
$$

より、$${K}$$ を定数として

$$
\begin{align*}
\dfrac{g'(x)}{g(x)}&=K\\
\dfrac{h'(y)}{h(y)}&=K\\
\end{align*}
$$

が得られます。
 後は、前者から $${g(x)}$$ を求め、 後者から $${h(y)}$$ を求めれば、求める一般解 $${f(x,  y)=g(x)h(y)}$$ が求まります。

 まずは、前者の微分方程式を解いて $${g(x)}$$ を求めましょう。

(前者について)

$$
\begin{align*}
\dfrac{g'(x)}{g(x)}=K
\end{align*}
$$

について、両辺を $${x}$$ 軸方向に積分して

$$
\begin{align*}
\int\dfrac{g'(x)}{g(x)}\,dx=\int K\,dx
\end{align*}
$$

 $${C_1}$$ を積分定数(任意の定数)として

$$
\begin{align*}
\log |g(x)|=Kx+C_1
\end{align*}
$$

 左辺は積分公式

$$
\begin{align*}
\int \dfrac{g'(x)}{g(x)}  dy=\log |g(x)|+C
\end{align*}
$$

を用いています(中学でも分かる➅「ネイピア数 e」)。右辺は定数 $${K}$$ を $${x}$$ 軸方向に積分し、積分定数は $${C_1}$$ と1つにして右辺にまとめます。
 ここで、対数と指数の関係(中学でも分かる➄「対数関数」)

$$
\begin{align*}
\log_a R=r  \Longleftrightarrow R=a^r
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
\log |g(x)|=Kx+C_1  \Longleftrightarrow |g(x)|=e^{Kx+C_1}
\end{align*}
$$

と、$${|g(x)|}$$ について求めることができ

$$
\begin{align*}
|g(x)|=e^{Kx+C_1}=e^{Kx}e^{C_1}=e^{C_1}e^{Kx}
\end{align*}
$$

 絶対値をはずして

$$
\begin{align*}
g(x)=\pm e^{C_1}e^{Kx}
\end{align*}
$$

 定数部分 $${\pm e^{C_1}}$$ を $${C_2}$$ とおいて

$$
\begin{align*}
g(x)=C_2e^{Kx}
\end{align*}
$$

 定数部分 $${\pm e^{C_1}}$$ は、1つの文字 $${C_2}$$ でまとめて置き換えます。
 なお、絶対値をはずすと「$${\pm}$$」(プラスマイナス)がつくことにも注意。例えば、$${|x|=2}$$ の絶対値をはずすと
 $${x=\pm2}$$
となります。

 これで、前者から $${g(x)}$$ が求まりました。同様にして、後者から $${h(y)}$$ が求まります。

(後者について)

$$
\begin{align*}
\dfrac{h'(y)}{h(y)}=K
\end{align*}
$$

について、両辺を $${y}$$ 軸方向に積分すると

$$
\begin{align*}
\int\dfrac{h'(y)}{h(y)}\,dy=\int K\,dy
\end{align*}
$$

 $${C_3}$$ を積分定数(任意の定数)として

$$
\begin{align*}
\log |h(y)|=Ky+C_3
\end{align*}
$$

 対数と指数の関係より

$$
\begin{align*}
|h(y)|=e^{Ky+C_3}=e^{Ky}e^{C_3}=e^{C_3}e^{Ky}
\end{align*}
$$

 絶対値をはずして

$$
\begin{align*}
h(y)=\pm e^{C_3}e^{Ky}
\end{align*}
$$

 定数部分 $${\pm e^{C_3}}$$ を $${C_4}$$ とおいて

$$
\begin{align*}
h(y)=C_4e^{Ky}
\end{align*}
$$

 以上により

$$
\begin{align*}
g(x)&=C_2e^{Kx}\\
h(y)&=C_4e^{Ky}
\end{align*}
$$

 すると、偏微分方程式

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)=\dfrac{\partial}{\partial y}f(x,  y)
\end{align*}
$$

の解を $${f(x,  y)=g(x)h(y)}$$ と置いたので

$$
\begin{align*}
f(x,  y)&=g(x)h(y)\\
&=C_2e^{Kx}\cdot C_4e^{Ky}\\
&=C_2C_4e^{Kx}e^{Ky}
\end{align*}
$$

 $${C_2C_4=C}$$ とおいて

$$
\begin{align*}
f(x,  y)=Ce^{Kx}e^{Ky}
\end{align*}
$$

(case2) $${g(x)h(y)=0}$$ のとき

$$
\begin{align*}
g(x)h(y)=0 \leftrightarrow g(x)=0  または  h(y)=0
\end{align*}
$$

となるが、$${f(x,  y)=g(x)h(y)}$$ とおいたので
 $${g(x)=0}$$ のとき $${f(x,  y)=g(x)h(y)=0\times h(y)=0}$$
 $${h(y)=0}$$ のとき $${f(x,  y)=g(x)h(y)=g(x)\times 0=0}$$
より

$$
\begin{align*}
f(x,  y)=0
\end{align*}
$$

 これは、 (case1) で求めた
 $${f(x,  y)=Ce^{Kx}e^{Ky}}$$
について、$${C=0}$$ とすれば
 $${f(x,  y)=0\cdot e^{Kx}e^{Ky}=0}$$
より得ることができます。つまり $${f(x,  y)=0}$$ の場合は、$${f(x,  y)=Ce^{Kx}e^{Ky}}$$ に含まれています。
 よって一般解は、(case1)(case2) より、$${C}$$ を任意の定数として

$$
\begin{align*}
f(x,  y)=Ce^{Kx}e^{Ky} \small{(答)}
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

 では、検算してみましょう。合成関数の微分法の復習になります。
 「外の微分」$${\times}$$「中の微分」
で微分します(中学でも分かる➈「合成関数」)。

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)=\dfrac{\partial}{\partial y}f(x,  y)
\end{align*}
$$

の左辺を計算すると

$$
\begin{align*}
(左辺)&=\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)\\
&=\dfrac{\partial}{\partial x}Ce^{Kx}e^{Ky}\\
&=Ce^{Ky}\dfrac{d}{dx}e^{Kx}\\
&=Ce^{Ky}\cdot\underset{\tiny 外の微分}{e^{Kx}}\cdot\underset{\tiny 中の微分}{(Kx)'}\\
&=Ce^{Ky}e^{Kx}\cdot K\\
&=CKe^{Kx}e^{Ky}\\
\end{align*}
$$

 右辺も同様に計算して

$$
\begin{align*}
(左辺)&=\dfrac{\partial}{\partial y}f(x,  y)\\
&=\dfrac{\partial}{\partial y}Ce^{Kx}e^{Ky}\\
&=Ce^{Kx}\dfrac{d}{dy}e^{Ky}\\
&=Ce^{Kx}\cdot\underset{\tiny 外の微分}{e^{Ky}}\cdot\underset{\tiny 中の微分}{(Ky)'}\\
&=Ce^{Kx}e^{Ky}\cdot K\\
&=CKe^{Kx}e^{Ky}\\
\end{align*}
$$

より、等しくなります。

(2) $${f(0,  0)=1}$$ のとき
 一般解 $${f(x,  y)=Ce^{Kx}e^{Ky}}$$ に $${x=0,  y=0}$$ を代入すると、
$${e^0=1}$$ より

$$
\begin{align*}
f(0,  0)=Ce^{0}e^{0}=C\cdot1\cdot1=C=1
\end{align*}
$$

 $${f(1,  0)=e}$$ のとき
 一般解 $${f(x,  y)=Ce^{Kx}e^{Ky}}$$ に $${x=1,  y=0}$$ を代入すると

$$
\begin{align*}
f(1,  0)=Ce^{K}e^{0}=Ce^{K}\cdot1=Ce^{K}=e
\end{align*}
$$

 これに、$${C=1}$$ を代入すると

$$
\begin{align*}
e^{K}=e
\end{align*}
$$

より $${k=1}$$。よって、$${C=1,  k=1}$$ を一般解

$$
\begin{align*}
f(x,  y)=Ce^{Kx}e^{Ky}
\end{align*}
$$

に代入して

$$
\begin{align*}
f(x,  y)=1\cdot e^{1\cdot x}e^{1\cdot y}
\end{align*}
$$

より

$$
\begin{align*}
f(x,  y)=e^{x}e^{y} \small{(答)}
\end{align*}
$$

$${\blacksquare}$$

 $${e^x,  e^y}$$ はそれぞれの変数で微分しても変わらないので、この解 $${f(x,  y)=e^{x}e^{y}}$$ は

$$
\begin{align*}
\dfrac{\partial}{\partial x}f(x,  y)=\dfrac{\partial}{\partial y}f(x,  y)
\end{align*}
$$

の解(の1つ)として予測がつくところです。

 物理の偏微分方程式

 物理の法則を表す方程式には、微分方程式で書かれる場合が多いです。その中で次の2つ
・ニュートンの運動方程式
・シュレーディンガー方程式
を紹介します。高校物理の知識を多少使います。

ニュートンの運動方程式

$$
\begin{align*}
F=m\,\dfrac{d^2}{dt^2}x(t)
\end{align*}
$$

 $${F  [\text{N}]}$$:物体に働く力
 $${m  [\text{kg}]}$$:物体の質量
 $${x(t)  [\text{m}]}$$:物体の位置(座標)
 $${t  [\text{s}]}$$:時刻

 イングランドの数学者・物理学者、アイザック・ニュートンの発見した、物体の運動を記述する常微分方程式です。

Isaac Newton(1642年-1727年)

 微分とは、何らかの量の微小変化を表します。
 たとえば、時刻 $${t}$$ での物体の位置 $${x(t)}$$ の時間変化は速度です。
 つまり、$${x(t)}$$ を $${t}$$ で微分したものは速度 $${v(t)}$$ になります。

$$
\begin{align*}
\dfrac{d}{dt}x(t)=v(t)
\end{align*}
$$

 また、時刻 $${t}$$ での物体の速度 $${v(t)}$$ の時間変化は加速度です。
 つまり、$${v(t)}$$ を $${t}$$ で微分したものは加速度 $${a(t)}$$ になります。これは、$${x(t)}$$ を時刻 $${t}$$ で2回微分したもの(時刻 $${t}$$ での2階微分)と考えることができます。

$$
\begin{align*}
\dfrac{d}{dt}v=\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{d}{dt}x(t)\right)=\underset{2
階微分}{\dfrac{d^2}{dt^2}x(t)}=a(t)
\end{align*}
$$

$$
\begin{align*}
\\[-13pt]
&x(t) \xrightarrow[]{微分} v(t) \xrightarrow[]{微分} a(t)\\[-3pt]
&\hspace{8pt}|\hspace{78pt}\uparrow\\[-14pt]
&\hspace{9pt}\underline{\hspace{85.5pt}}\\[-4pt]
&\hspace{35pt}{\footnotesize 2階微分}
\end{align*}
$$

 ニュートンの運動方程式は常微分方程式となります。
 高校では微分積分を使わないで物理を勉強するので、運動方程式は、加速度 $${\dfrac{d^2}{dt^2}x(t)}$$ の部分を $${a}$$ として

$$
\begin{align*}
F=ma
\end{align*}
$$

という形で習います。

シュレーディンガー方程式

$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi(x,  t)=\left(-\dfrac{{\hbar}^2}{2m}\frac{{\partial}^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\psi(x, t)
\end{align*}
$$

 オーストリアの物理学者、エルヴィン・シュレーディンガーが提案した、量子の状態を記述する偏微分方程式です。

Erwin Schrödinger(1887年-1961年)

 $${\psi(x,  t)}$$ は状態関数とよばれ、電子や陽子のような小さな粒子の状態を表します。位置 $${x}$$ と時間 $${t}$$ の2変数関数です。分かりやすさのため、右辺を展開しましょう。

$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi(x,  t)=-\dfrac{{\hbar}^2}{2m}\frac{{\partial}^2}{\partial x^2}\psi(x, t)+V(x)\psi(x, t)
\end{align*}
$$

 この方程式は2階偏微分方程式で、$${\dfrac{\partial}{\partial t}\psi(x,  t)}$$ は $${\psi(x,  t)}$$ の $${t}$$ での偏微分を表し、$${\dfrac{{\partial}^2}{\partial x^2}\psi(x, t)}$$ は $${\psi(x,  t)}$$ の $${x}$$ での2階偏微分を表します。

$$
\begin{align*}
i\hbar\underset{t  で偏微分}{\underline{\frac{\partial}{\partial t}\psi(x,  t)}}=-\dfrac{{\hbar}^2}{2m}\underset{x  で2階偏微分}{\underline{\frac{{\partial}^2}{\partial x^2}\psi(x, t)}}+V(x)\psi(x, t)
\end{align*}
$$

 他の部分については、$${i}$$ は虚数単位といい、2乗すると $${-1}$$ になる数です。

$$
\begin{align*}
i^2=-1
\end{align*}
$$

 $${\hbar}$$ はディラック定数とよばれる定数で、”エイチバー” と読みます。プランク定数 $${h}$$ を $${2\pi}$$ で割った定数として定義されます。

$$
\begin{align*}
\hbar=\dfrac{h}{2\pi}
\end{align*}
$$

 $${m}$$ は粒子の質量を表します。電子なら電子の質量、陽子なら陽子の質量です。
 $${V(x)}$$ は粒子のもつポテンシャルエネルギーを表します。高校物理でいうところの位置エネルギーです。高い位置にある物体は重力による位置エネルギーをもち、ばねにつながれた物体は伸びたり縮んだりするばねの力、つまり弾性力による位置エネルギーをもちます。
 ポテンシャルエネルギー $${V(x)}$$ は、状況に応じたものを自由に与えることができます。その $${V(x)}$$ に対応する解 $${\psi(x,  t)}$$ を求めることによって、原子内の電子状態など、数多くの実験結果を説明することができます。

 偏微分が何なのかが分かると、この難しい数式も、何となくイメージすることができます。と同時に、この偏微分方程式は非常に難しい式であることがわかります。

(再掲)シュレーディンガー方程式

$$
\begin{align*}
i\hbar\underset{t  で偏微分}{\underline{\frac{\partial}{\partial t}\psi(x,  t)}}=-\dfrac{{\hbar}^2}{2m}\underset{x  で2階偏微分}{\underline{\frac{{\partial}^2}{\partial x^2}\psi(x, t)}}+V(x)\psi(x, t)
\end{align*}
$$

 まず、1階の偏微分と2階の偏微分が1つの式に含まれ、一方は $${t}$$ での1階偏微分、他方は $${x}$$ での2階偏微分と異なるものになります。しかも、この式には虚数 $${i}$$ が含まれます。2乗してマイナスになる虚数は、小さな粒子の世界を説明する上で必要不可欠な数になります。
 そして、右辺を $${\psi(x,  t)}$$ でくくったのが、教科書などでよく見られる次の形です。

$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi(x,  t)=\left(-\dfrac{{\hbar}^2}{2m}\frac{{\partial}^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\psi(x, t)
\end{align*}
$$

 右辺はカッコでくくられていますが、このように書くことによって、$${x}$$ での2階偏微分、およびポテンシャルエネルギー $${V(x)}$$ との和を、 $${\psi(x,  t)}$$ に作用させるとみることができます。

 なぜこの式が生まれたのか、なぜ虚数が含まれているのか非常に興味深いですが、それを解説するのは本記事のレベルを超えるので、専門書の方をご覧ください。シュレーディンガー方程式の導出自体はそれほど難しいものではなく、高校数学(+α)の知識で理解できると思います。

微分方程式の簡単な歴史

 微分積分学・力学の創始者として有名なアイザック・ニュートンは、力学の問題を解くために多くの常微分方程式を解いています。常微分方程式は17世紀から研究が始まり、多くの数学者、物理学者によって現在の形に整備されていきました
 その後18世紀には、スイスの数学者・天体物理学者、レオンハルト・オイラーが偏微分方程式の研究を行います。偏微分方程式を最初に研究したのはオイラーとされています。

Leonhard Euler(1707年-1783年)

 この10年ほど後に、フランスの数学者・物理学者、ジャン・ル・ロン・ダランベールは、弦振動の運動方程式を偏微分方程式(ダランベールの式)として定式化をし、微分方程式は数学や物理学に限らず、工学、経済学、気象学、生物学など、多くの分野で利用されるようになりました。

Jean Le Rond d'Alembert(1717年-1783年)

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