日報がうまくいかなくなった理由―マネージャーの正論が招いた失敗談
マネージャーとして部下に日報を書いてもらう中で、今でも強く残っている後悔があります。
それは、「正しいこと」を言ったはずなのに、その瞬間から、部下の日報から文字が少しずつ消えていった経験です。同じような経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか?
今日は、部下の成長を願った「日報」が、部下の成長を止めてしまった、そんなお話をさせていただきます。
日報がうまく回り始めた頃の話
日報を部下に書いてもらい始めたころ、最初はうまくいっていました。
一人、また一人と、日報を通じて自分の仕事を振り返り、「自分、こんなことができていたんだ」と気づき、少しずつ成果を出していく。その姿を見て、私は強く思うようになっていました。
「やっぱり、日報って効果がある」
「ちゃんとやれば、ちゃんと成果が出る」
今振り返ると、この時点で、私はすでに日報を書くことが“正解”だと信じ切っていたんだと思います。
ただ、全員が同じように変わるわけではありません。日報を書いても、なかなか成果につながらない人がいました。それが、井上さんでした。
ある日、私は井上さんに、こう言ってしまいました。
「ちゃんと書けば、成果出るから」
「もっと具体的に書いてみよう」
でも今思えば、この言葉が失敗のすべての原因で、のちに私が部下との日報との関りを、考え直すきっかけになる一言でした。
なぜ、そんな言葉を言ってしまったのか。理由は単純です。他のメンバーが、日報を通じて変わっていく姿を見ていたから。
「日報をきちんとやれば、成果は出る」
「出ていないのは、やり方の問題だ」
私はそう信じ切っていたのです。
私は素直に、成果が出ているスタッフと同じように、井上さんにも、仕事の楽しさを知ってほしかったし、仕事を通じて日々の成長を感じてほしかっただけでした。
でもそれは、今考えると、井上さんの気持ちを無視した、私の正論だったのです。
正論が部下の日報を止めた瞬間
その後、井上さんの日報は、明らかに変わりました。
文字数は減り、当たり障りのない言葉だけが並ぶようになっていったのです。文字は、その人の気持ちを表します。井上さんが日報を書いている文字からは、明らかに投げやりな雰囲気が感じられました。
その日報を見たとき、私は「あ、やってしまった」と気づきました。
他の人と比べて、さらには、他人の成功体験を押し付けてしまったわけです。もし、自分がこんなことを上司に言われたら、とても嫌な気持ちになると思います。それを私は、井上さんにやってしまったのです。
だから、井上さんは、「言われたから、仕方なくやる」だけで、率先して日報を書こうという気持ちにはならなかったんだと思います。
そこから、私はやり方を変えました。
毎日、全員の日報には、私が1人1人に、日報を読んで良かったことをコメントしています。ただ、井上さんに対しては、あえて「良いところを見つけよう」とはしないようにしました。
無理に褒めないし、無理に引き上げないようにしたのです。
ただ、書いてくれたことに対して、
「それをやってくれたんだね」
「ありがとう」
それだけを、淡々と、素直にコメントしていきました。
こちらが熱量高くやりすぎると、それ自体がプレッシャーになるのではと、感じたからです。井上さんの熱量に、私が合わせてコメントをしたいったのです。
そうすることで、井上さんの日報を書く空気が、少しずつ落ち着いていくのを感じました。
そして、この出来事がきっかけで、これは、井上さんだけの話じゃないということに気づいたのです。私はこれまで、部下のためを思って、テンション高くコメントを書くのが正解だと思っていました。
でも、それが嬉しい人もいれば、正直、うざったい人もいる。人によって、感じ方は様々なんだなという、当たり前のことに気が付いたのでした。
日報は「人を動かす道具」じゃない
今回の失敗で、私ははっきりと思い知らされました。
日報は、人をコントロールするための道具ではないし、成長させるために、
上から使うものでもありません。日報とは、人と人が、少しずつ信頼を積み上げるための場所なのです。
正論を言えば、人は黙ります。正しいことを押し付ければ、相手は「考える」ことをやめてしまうでしょう。
あのとき井上さんの日報が静かになったのは、能力が足りなかったからじゃありません。やる気がなかったからでもありません。安心して書ける場所ではなくなった、それだけだったんだと思います。
だから私は、日報に「正しさ」を持ち込むのをやめました。代わりに持ち込むことにしたのは、評価でも、指導でもなく、「あなたがここに書いていい」という安心感です。
日報は、ちゃんと書かせるものじゃない。ちゃんと「向き合う」ものなのです。
もし今、部下の日報が薄くなっていると感じているなら、それは相手の問題ではなく、こちらの関わり方の問題かもしれません。「ちゃんと書け」と言う前に、「ちゃんと見ているよ」と、伝えられているか。
日報は、その問いを、毎日こちらに突きつけてきているのです。
また、次のお話でお会いしましょう。
📘 この連載について
このnoteは、
「日報」を通じて、部下との関係が変わっていった
実体験をもとにした連載です。
これまでのお話はこちらから読めます。
第1話|たった5分の日報が、部下を自走させた。指示しないマネジメントで起きた2週間の変化
👉こちらからどうぞ第2話|~日報は「薬」と同じ?~2週間で部下が変わる「プラシーボ効果」の魔法
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