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「windowおじさん」と呼ばれた先輩の愛すべき“ズレ”

「windowサイズって、奥が深いんだよ…」

先輩がそうつぶやいた瞬間、
今日もまた始まったと思った。

TCPの話でホワイトボードを埋め尽くすのは、これで5回目だ。

職場に「windowおじさん」と呼ばれる先輩がいる。
50代、理系っぽさと職人気質が漂う人で、ふだんはおだやか。

でも、“TCPのwindowサイズ”の話になると、突然熱がこもる。

「理論的にこれは大きすぎてさ…」
「帯域と遅延のバランスを考えると最適なのは…」

同じホワイトボードに、同じ図を何度も描く。
まるで“伝説のライブを毎回再現してくれるアーティスト”。

……なのに、こちらはチケットを買った覚えはない。
どうやら年間パスをいつの間にか渡されていたらしい。

でも、本当にこの話が好きなんだなと思う。
語りの熱量がまったく落ちない。

ある日、会議室のイスで気持ちよさそうに眠っていたwindowおじさん。
「お疲れなんだな」と思っていたら、
目覚めるやいなや隣の若手にTCPの話を始めた。

目覚めて一発目がTCPって、どれだけ好きなんだ……。

若手は苦笑いしていた。
ふと、よぎる。

──もしかして「windowおじさん」って、“窓際族”の意味も含まれてるのでは?

そう思った瞬間、なんだか少し切なくなった。

でも同時に、こんなふうに好きなことを語り続けられる人って、
やっぱり最強だよなと思った。

切なさと、独自のあたたかさが同居しているような、不思議な存在感。

この人が全員いると組織は崩壊するけど、
この人がいないと組織はどこか物足りない。

だからこそ、欠かせない人なのだ。


ネジがない!?

そしてwindowおじさんの“絶妙にアウト”な一手

そんなwindowおじさんと、
理系女子の若手部下(通称:リケジョ部下)の一幕も見事だった。

ネットワーク機材を収容していたラックの返却準備中、
一部のネジが見つからず、ちょっとした騒動に。

焦るリケジョ部下。
いつになく真剣な顔で、担当者たちに聞きまわっていた。

「最悪は……モノタロウでネジを買わなきゃいけないかもしれません」

そのつぶやきには、妙な切実さがにじんでいた。

そんなとき、彼女が声をかけたのが──
そう、あの windowおじさん。

リケジョ部下:「借用していたネジが見つからないんです。ご存知ありませんか?」
windowおじさん:「うーん、ちょっとわからない。でも……それに似たネジならあるよ
リケジョ部下:「えっ…いや…似たようなネジは、ちょっと…大丈夫です…」

……それに似たネジ。
私は、心の中で思わずつっこんだ。
「なんという発言だ……! 絶対ダメでしょ。ちょろまかすって…」

しかもその発言を、悪気なく、
さりげなく後輩に**“教え込もうとする”**windowおじさん。

この“ズレ”と人情の絶妙なバランス。
なぜか憎めない。

もしかしたら軽い“脱力ユーモア”だったのかもしれない。
気づけば私も、ふっと笑っていた。

結局、ネジは無事に見つかり、リケジョ部下も一安心。

でもあの、
「似たようなネジはあるよ」という謎の名言と、
それをさらっと放つwindowおじさんの空気感は、

いまでも私の中でリプレイされていて、
思い出すたびにじわじわ笑えてくる。


windowおじさんとリケジョ部下の無言バトル

 

そしてwindowおじさんはチャットでも独自の存在感を発揮する。

職場のやりとりは基本Teamsチャットだ。
その日も、何気ないスレッドの中に、windowおじさんの投稿が舞い込んだ。

「jpeg(非可逆圧縮)より、png(可逆圧縮)のほうが文字がつぶれないんだよな」

私は心の中でつっこむ。
「ここはX(旧Twitter)か」

……たしかに、そうだけど。
でも、ここは業務チャット。

誰もその話題を拾わない。
瞬時にそのチャットは流れていく。。

翌日、windowおじさんの投稿を見ていたのかいなかったのか、
リケジョ部下が共有した画面キャプチャは、思いっきりjpeg

文字、ちょっと潰れてる。。

静かなノイズと共に、その画像はチームチャットに貼られた。

私は一瞬、windowおじさんの反応を待った。
……けれど、彼は何も言わない。

昨日の発言がウソのように、チャットは通常運転で進む。

「今日も絶妙だな……」と思いながら
私はそっと画面を閉じた。

windowおじさんの“ズレ”、
リケジョ部下の“動じなさ”、
それを遠くから見守る私。

この、どこか奇妙で、愛すべきトライアングルが──
私たちの、何気ない日常なのだ。


ゆるっと診断士視点

 

windowおじさんのような「ズレたけど憎めない人」がいる職場は、
実は心理的安全性が高い職場だったりします。

完璧な効率や正解ばかりを追い求めるのではなく、
“ズレ”を許容し、あたたかく見守る空気がある組織。

それは、長い目で見てチームの健全性を支える土台になります。

マニュアル通りに動かない“現場”だからこそ、
こうした人間味ある関係性が、じつは組織を支える。

たぶん、あの人は、これからもずっと、
“ズレてて、でも憎めない”唯一無二の存在でいてくれるのだと思う。


(あとがき)

windowおじさんの続報はこちら


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