見出し画像

来てくれたから、伝えたくなった 【島総②#12】/vol3 アワビいっぱい編/離島の総合的な学習② 

前回、島にやってきたのはアワビの稚貝でした。
そして今回、今度は交流してきた子どもたちが島を訪れます。

前回の話 離島の総合的学習の時間②#11👇

本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)

これまでの実践してきた総合的な学習の時間の記録です。
今回は、県内で唯一の離島にある小学校に赴任して2年目、2003年度(平成15年度)に行った総合的な学習の時間の実践記録です。
交通も通信も限られた島で、子どもたちにどんな力を身に付けさせたいのかを考えながら、地域と関わる学びやICTを活用した取組を進めてきました。

1年目には、島の海の魚介類を調べてまとめた「おさかな天国 海辺のデジタル図鑑」に取り組み、マイタウンマップ・コンクールで農林水産大臣賞をいただきました。
▶ おさかな天国(離島の総合的な学習の時間①)** **

この「アワビいっぱい編」では、年度後半のアワビの中間育成・放流の実践を軸にしながら、そこへ至るまでの前半の学びとして、他地域との交流、ICTスキルの定着、発信に向けた準備段階も含めて、2年目の1年間を通した取組を記録しています。
単元そのものではなく、「学びが絡み合う時間」を描いています。
※本文中の地名・学校名・人名等は仮名を使用しています。



1 専門家とつながる準備

アワビの育成が始まり、教室の中だけでは判断できないことも少しずつ見えてきました。
そんな中で、県立水産研究所の方にゲストティーチャーとして来ていただけないかと打診していました。

その返事がメールで届き、日程調整の結果、金曜日に来ていただけることになりました。
細かい内容についてもやり取りを重ね、当日の進め方についての見通しも立ってきました。

専門的な知識を持つ方から直接話を聞ける機会は、子どもたちにとっても大きな意味を持ちます。
これまでの活動をより確かなものにするための、次の一手が見えてきたように感じていました。


2 思わぬ事実と、育てる責任

ちょうどその頃、学校の水槽に伊勢エビをいただく機会がありました。
ところが、その伊勢エビが雑食性であり、アワビの稚貝を食べてしまう可能性があることを知ります。

アワビの稚貝の多くは漁協の水槽で管理していますが、教室で観察や計測に使っているものについては、そのままにしておくわけにはいきません。
このままでは、育てているはずの命が失われてしまう可能性があります。

そこで、計測用のアワビを別の専用水槽に移すことを考え始めました。
ちょうど水産研究所の方が来られる予定もあったため、詳しい話を聞いた上で、必要な環境を整えていこうと考えました。

育てるということは、ただ世話をするだけではありません。
環境を整え、守る責任が伴うのだということを、改めて感じる出来事でした。


3 島にやってきた交流校

冬型の気圧配置で、島には強い風が吹き荒れていました。
そんな中、テレビ会議で交流してきた学校の先生と子どもたちが、島を訪れてくれることになっていました。

相手校は県の最西端にあり、こちらは最東端です。陸路で3時間かけての移動です。
無事に来られるのか、朝から船の運航が気がかりでした。

前日の夜、せっかく来てくれる相手に何かできないかと考え、4人の教師でアジ釣りに出かけました。
「ちょっとだけでも持って帰ってもらえたら」と話していたのですが、始まってみると手が止まらず、2時間で130匹あまりになっていました。


10匹ずつ袋に分けて発泡スチロールに詰め、漁協の冷蔵庫へ。
結果的に、かなりしっかりした“おみやげ”になりました。
島からのささやかなおみやげです。
これだけあれば、向こうでの食卓にも少しは役に立つはずです。

当日は風の音が強く響いていましたが、島の周辺以外の海はそれほど荒れていないとのことで、無事に船が到着しました。
子どもたちと一緒に港まで迎えに行き、そのまま学校まで歩いて戻りました。


4 学びを伝えるということ

学校では、校内の案内をしたり、体育館で一緒に遊んだりと、子ども同士の時間を過ごしました。
その後、島の南側の斜面へ向かい、太平洋を一望できる場所まで歩きました。

波が岩に打ち寄せ、洞穴から噴き上がる様子は、まるでクジラの潮吹きのようでした。
自然そのものが、この島の魅力を語っているようでした。

最後に漁協へ向かい、子どもたちが取り組んでいるアワビの育成について紹介しました。
自分たちが作ったいけすの仕組みや、どのように世話をしているのかを、相手校の子どもたちに向けて説明していきます。

はじめは少し言葉を探す様子もありましたが、自分たちが実際に関わってきたことだからでしょうか、話し始めると次第に言葉がつながっていきました。
「こうやって作ったんだよ」「ここにアワビがつくんだよ」と、手ぶりを交えながら伝える姿が見られました。

聞いている側も、ただ見ているだけではなく、「どうやって育てるの?」「どれくらい大きくなるの?」と質問が返ってきます。
それに応えようとする中で、自分たちの取り組みをもう一度整理しながら話している様子もありました。

こうして人に伝える場面は、島の子どもたちにとって大切な力につながっていきます。
自分たちがやってきたことを、自分の言葉で外に向けて伝えることは、この島で暮らす中でも必要とされる力の一つです。

ただ体験するだけで終わるのではなく、それを言葉にして誰かに届けていく。
その積み重ねが、これからの学びを支えていくように思えました。

さらに、ちょうど伊勢エビの計量作業も行われており、その様子も見せていただきました。
本物の現場に触れながら、自分たちの学びを重ねていく時間になりました。

初めて触れる伊勢エビ

やがて、14時30分発の最終便で相手校は帰っていきました。
短い時間ではありましたが、子どもたち同士が自然に関わり合い、互いの学びを感じ合うことができた1日だったように思います。


次回に続く・・・👇

総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇

総合実践のvol2、おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇👇

いいなと思ったら応援しよう!

熱中探究教室 応援いただいたお気持ちは、子どもたちの学びを物語として発信し続ける力となり、教育の現場で役立つヒントへとつなげていきます。