英語を実践して身につけるとは何か
つい先日、Lion君とやっている共同ポッドキャスト番組、円卓上のイエティの最新エピソード(EP7)を公開したのですが、その際、「定番の学習法を追いかけまわってもあんま意味ない」という、僕がnoteやYouTubeでよく言っていることについて触れました:
またそのときに、語学学習では自分をAIモデルに見立て、初期モデルの用意>サンドボックス内でのパフォーマンスの実行>フィードバックの確認>学習、という流れを組むといいよ、というアナロジーを出したのですが、今回はこの、フィードバックを得て直していく、という話の詳細に触れてみたいと思います。
一対一対応ではない
まず確認したいことに、学習とは、今目の前にある情報や結果だけを解釈して理解することだけではない、ということがあります。
たとえば、料理中に包丁で指をけがしたという経験を持つ人はたくさんいるはずですが、その際当然、「ああ、包丁って危ないんだな」と学習しますよね。包丁を次回以降につかうとき、またケガしないように慎重に扱うようになるはずです。
さて、この学習についてなのでが、「包丁以外の話」にも学習の結果が波及しそうな気がしませんか。端が鋭利だったり尖端がとがっていたりするモノはこの世にたくさんありますし、また、尾の先端に毒針を持つサソリやハチのような危険な動植物もいます。そして、包丁でじっさいにけがをしたという経験を持つ人は、それら全般にたいしてもさらに注意がはたらくようになるはずです。
サソリやハチに刺された経験がない人のほうが多数派なはずですが、そのような、じっさいに危険な虫に刺された経験がない人でも、包丁の経験などから、「サソリやハチが危ない」ということを察知することはできるはずです。これは、過去の学習が好ましい方向にはたらいている、といえませんか。
例はいくらでも出すことが可能で、他にもたとえば、「廊下を走らない」のようなよくあるルールからも多くの学びを得られます。学校では廊下を走ってはいけませんと言われますが、そこから得られる情報には、意図せず加害者になってしまう行動については気をつけたほうがいい、のような、普遍性が高く時代を問わずに通用しそうな原則を認めることもできます。
ようするに、「○○をしたらダメだった、だから、○○をしないようにする」とか、「○○をしたらうまくいった、だから、○○をする」のようなロジックだけではないということです。学習というのは、まだその人がまったく経験していない未知の状況との遭遇にたいしても、効果的に働きます。
なぜ表現を覚えるのがイマイチなのか
ここで語学学習の話に戻ってくるのですが、語学学習の過程における、「フィードバックから得る学習プロセス」もまったく同じことです。英語を実践で身に着けるとは、英語の現場でみんなが使っている英語を見聞きして情報を得ることだけではない、ということです。
たとえば以前、「フレーズや表現を頭に詰め込みまくることはどこかでパンクする運命にあるし、あまりおすすめできない」という話をする記事を出したのですが、なぜスジが悪いのかというと、この記事の前半で説明した、個別の事例から普遍性の高い教訓を得る、ということが「フレーズ丸暗記」ではほとんどできないからです。
表現をたくさん覚えるやり方の場合にやることは、よく使うフレーズの暗記と、ダサい(とされている)フレーズの排除です。学習とは、今目の前にある情報や結果だけを解釈して理解することだけではない、とはすでに言いましたが、便利なフレーズの暗記とダサいフレーズの排除には、それ以外の部分に発展させられそうな応用がありません。自分らが経験したことがない未知との遭遇に対応できるようになる、と言う話を「ハチ」の例で出しましたが、それがないということです。
仮説の形成
学習の経験は、今後このようにしたほうがいい、しないほうがいい、という仮説形成にもプラスに効いてきます。仮説形成というのはそれをじっさいに実行するまえにやることであり、この記事でいうところの、「その人がまったく経験していない未知の状況との遭遇」に対する対応策のひとつになるのですが、仮説形成のスジのよしあしというのは、過去の学習の蓄積で決まってきます。
「まだ習っていないからできない」のような言い訳でチャレンジすることをあきらめる人もいますが、それはここまで話からわかるように的外れになります。むしろ、目の前に自分がよくわかってないことが広がっているのであれば、まだよくわかっていないからこそ得られる学習が大きそうだ、というプラスのインディケーションになるはずです。
さいごに
世の中、あれしろ、これするなという親切な指図ばかりの景色になっていますし、それに疲れ切っている人も少なくないはずです。そして、なぜ疲れ切ってしまうのかというと、そこに、普遍的な教訓を抽出するという景色がないからです。
語学を実践で身に着けるというのは、現場で得られた種種雑多な情報から普遍を編み、それを自分というAIモデルに組み込んでいくことです。くどいようですが、欲しいのは対処療法的な断片的ノウハウではなく、まだ一度も遭遇したことがない状況にも応用できる、抽象的で普遍的な本質です。フィードバックを回収しながらやっていくという話は、以下の記事でもしています:
英語・外国語の学習ネタは「英語・外国語の学習法」のマガジンにまとめています。肩の力を抜いて気楽に楽しめる内容であるはずです:
▼この記事を書いた人▼
そっちゃそ
フリーランス英日翻訳者。本業で培った知識や経験をもとに、発音指導をはじめとした語学指導もやっています。noteは、僕の思想や考えをひろく公開するために使用しています。僕の思想や考え方については、考察と思想哲学のマガジンにまとめているのでこちらをぜひご覧ください。詳しいプロフィールはこちらから。


主な著作:「自分の意見を言うことは『役に立つ』」、「外国語を学習すると決めたときに読む本」、「英語発音学習の第一歩」。既刊一覧はこちらから。
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さいごに
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