「Act・2 (アクト・ツー)!!」 【第5話】 (創作大賞2025 エンタメ原作部門)
第4話↓の続きです。
※Mはモノローグ
倫生館大学・1001教室
梶「…….なんで、演劇をやる?」
冴島「え?」
梶「まずは、あんたの話を聞くところからだ」
冴島M「コイツ……突然どうしちゃったんだよ…」
冴島「俺の話?」
梶「江波さんは、あんたの方が僕よりも演劇を100倍愛してるって言っていた」
冴島「え?あー…..聞いてたのかよ」
梶「演劇なんかど素人の、あんたが、だ」
冴島「まぁ……」
梶「ずっと役者をやっている僕よりも、だ」
冴島「わかったよ」
梶「なぜだ」
冴島「いや….実は俺も江波さんの言ってた意味、正直分からないんだよ」
梶「もちろん、演技をしたこともないんだよな?」
冴島「ないよ?」
梶が先程の台本のページをパラパラとめくる。
梶「さっきのところ、一人でやってみろ」
冴島「みろ、って…….」
台本を確認する冴島。
冴島「(台本を見ながら)….えーっと…?」
梶M「ごく、まれに。完全な才能とセンスで全てを覆す "怪物" がいるというーー」
立ち上がり、準備をする冴島を真剣に見つめる梶。
少しの沈黙ーー
冴島(マシュー)「シ、士長ソレハオカシイト思イマスガ」
冴島(士長)「私ガココニイルノガカ〜〜?」
冴島(マシュー)「ダダダッテ昨日ハイラッシャラナイ、ト」
梶「ちょっと待て」
硬直する梶。
梶M「下手すぎる…………」
一方、自身ありげな冴島。
冴島「どうだった!?!」
梶「信じられない…………」
動揺を隠しきれない梶。
冴島M「やはり江波さんは俺の才能をーー」
梶「まず、やってる途中チラチラこっちを見んな!んでその棒読みはふざけてるのか!?ああ!?せめて人間らしく喋ってくれよ!普段通り喋ればできるだろ!!どうすればそんなに下手になるんだよ!!!!」
冴島「…..辛辣だなぁ」
梶「そりゃ辛辣にもなるだろ!これをあと10日でどうすりゃいいんだよ!!」
冴島M「梶もデッカい声出すんだな……」
冴島「でもさ、梶」
梶「あぁん!?」
満面の笑みの冴島。目がキラキラ輝いている。
冴島「楽しいな!これ!」
ハッとする梶。
梶M「あぁ、ーーそういうことか」
フラッシュバックーー12年前・都内撮影スタジオ
母の朝子と出番を待つスタジオの楽屋で、黙々と何かノートに書いている梶(当時8才)。高級ブランドのポロシャツを着ている。
朝子「洸?……あーきーらー」
書くことに夢中で全く聴こえていない様子の梶。
朝子が無理やり梶のノートを奪う。
朝子「そんなことしている暇があったら脚本読み込みなさい」
梶「…..はぁい」
ーースタジオ。
本番いきます!とスタッフの元気な声。ドラマの撮影のようで、孤児の衣装を着てスタンバイしている梶。
監督「よーい、スタート!」
一瞬でボロボロ泣き出す梶。
梶「…..お母さん…お父さーん!!なんでだよ!!うわーっ!」
監督「はいカット!オッケー!」
朝子「すいませんけど、もう一度やらせてもいいかしら」
スタジオの袖で見ていた朝子が監督に話しかける。
監督「……まぁ、国民的女優の朝子さんに言われちゃあねぇ〜!よし、洸くん、もう一回やってみようか」
朝子「洸、大切なものを失ったとき、そんな風に泣く訳ないわよね?ちゃんと考えてからやりなさい」
梶「…..はぁい」
監督「はい、じゃあもう一回、よーい、スタート!」
12年前・テレビの芸能ニュース
『国民的俳優夫婦・梶圭一郎&永井朝子の息子、梶洸くんインタビュー!』と右上にテロップ。圭一郎と朝子に挟まれて座り、マイクを向けられる洸。
インタビュアー「洸くんは、好きなこととかあるのかな?」
圭一郎「やっぱり演じることが大好きだよなぁ?」
洸「え、あ」
朝子「そうなんですよ、この子、家に帰ってもずっと稽古しているんです」
インタビュアー「さすが、サラブレッドですね〜!」
12年前・梶宅 リビング 夕方
広々とし、しっかり整頓されている。海外製の高そうでシックな家電が並ぶ。先程のインタビューの続きがテレビから流れており、それを見ながら洗濯物を畳んでいる朝子。
それをじーっと廊下のドアから見ている梶。
梶「…….ノート、知らない?」
朝子「(振り向き)あらびっくりした…….いたのね」
視線をテレビに戻し、何事もなかったかのように洗濯物畳みを続ける朝子。
梶「…….知らない?」
朝子「片付けといたわよ」
梶「どこに」
朝子「朝、出しちゃったわよ」
静かに涙がこぼれてくる梶。
梶「グスッ…..」
朝子「あら….(振り向き)泣いてるの?」
梶「……なんでだよ」
朝子が目を見開く。
朝子「そう、それ!その泣き方よ…!!」
やっと出来たのね!と嬉しそうな朝子。
全てを悟った表情の梶。
梶(現在)M「ーー別に、演技が嫌だというわけではなかった」
フラッシュバックーー7年前・梶宅
廊下で圭一郎が中学生になった梶を叱っている。
圭一郎「(台本を叩いて)なんでこんな小さい役しか取ってこれないんだ」
黙り込む梶。
フラッシュバックーー3年前・撮影スタジオ
隅っこに立ち、通り過ぎる共演者一人一人に「お疲れ様です!」と挨拶をしている高校生の梶。通りすがりのスタッフの会話が聞こえる。
スタッフA「あー、梶圭一郎と永井朝子の息子でしょ」
スタッフB「大したことないじゃん」
黙り込む梶。
フラッシュバックーー3年前・バス停
バスを待ちながら、スマホのメモに物語のプロットを打ち込む梶。あーでもないこーでもないと書いては消しを繰り返すものの、ずっと目がキラキラ輝いている。
梶(現在)M「僕はただ、大好きなことがしたかっただけだ」
ーー現代に戻る。
突然オーディションの課題が書かれた紙をかばんから取り出し、アイデアをフローチャートのようにササッと書き連ねていく梶。
冴島「今度はなんだよ」
梶「(書きながら)あんたの話、聞くまでもなかった」
冴島「はぁ!?お前が言い出して…..」
梶「僕は、僕が楽しいことをする」
【第6話に続く】
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