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「Act・2 (アクト・ツー)!!」 【第6話】 (創作大賞2025 エンタメ原作部門)

第5話↓の続きです。

※Mはモノローグ

倫生館大学演劇研究部・稽古場外

春公演に向けた稽古の休憩中。冴島と汗だくの江波が、稽古場を出たすぐ外の廊下で喋っている。

江波「へぇー、そうだったんだ。ごめんね行けなくて……(ボソボソ)いや自分の胃すら守れないゴミカスから教えられることは何もないか………」

冴島「あの、次はいつ時間もらえますか?….実はもう台本完成してて」

手書きの台本を江波に見せる梶。江波がそれをパラパラと読みながら、

江波「……これは?」
冴島「梶が」
江波「……彼、脚本書いたりするんだ」
冴島「いや、むしろそっちがメインです」
江波「どういうこと?」
冴島「あれ、聞いてないですか?あいつ、俳優部から演出部志望に変えたんです」
江波「へ?!だって彼、ずっとうちの稽古参加してたよね…?」
冴島「(上から目線)まぁいろいろあるんすよ、あいつにも」
江波「じゃあ……2人1組の課題は?」
冴島「特例で、僕の俳優部オーディションと梶の演出部オーディションとを兼ねてやるってことになりました。人数が合わなくて」
江波「なるほど…。2人1組はそのままに、梶くんは脚本・演出力を、冴島くんは演技力を見られるってことか……」
冴島「ということなんで、(顔をずずずっと江波に近づけて)稽古、お願いします!!!」

【〜翌日〜】

倫生館大学演劇研究部・稽古場 夜

自身の稽古終わりに、演出卓のパイプ椅子の上で三角座りをして小さく座っている江波。汗だくの冴島がその前の広々とした空間にぽつんと立っている。演技をし終えてやりきった様子の冴島。

江波「………なーるーほーどぉー」
冴島「どうっすか!?!!?」
江波「あー……っとお、」

天井をじーーーっとみつめ、考え込みむ江波。沈黙の後、
ちょうど目に入ったらしく稽古場の端に落ちていたタオルを指差す。

江波「…..あのタオル、僕に持ってきてくれない?」
冴島「え、あ、江波さんのですか?」

少し駆け足でタオルを拾い、少し駆け足で戻ってきて

冴島「どうぞ」

と両手で江波に渡す冴島。

江波「……今、なんでちょっと小走りで取りに行ったの?」
冴島「え?いや、江波さんが待ってるんで….」
江波「両手で僕に渡してくれたのは?」
冴島「(少し考えて)…….目上の人に渡す…から…?」

タオルを冴島に戻す江波。

江波「じゃあ、僕が冴島くんのお母さんだとして、もう一回同じ場所からそのタオルくれる?」
冴島「え….あ、はい」

同じ場所にタオルを戻し、もう一回拾う冴島。遠くから母に呼びかける。

冴島「母ちゃーん」

手のひらでタオルを軽くポンポン投げながら、だらしなく歩いて江波のところまで持っていく冴島。

冴島「これ」

片手でポイっと江波にタオルを渡す。

江波「おー、お母さんに渡すときは片手なんだね」
冴島「……(思い返して)あー、そうでしたね」
江波「できてんじゃん、演技」
冴島「これがですか?」
江波「難しく考えすぎ」
冴島M「難しく…?」
江波「…….誰かを演じる限り、そいつは『芝居しよう』って思って生きてないだろ。ただ飯食ったり、タオルを拾うこともあるかもしれない。そいつなりの日常を生きてるんだ」
冴島「確かに…..」
江波「『この世は舞台、人はみな役者』みたいな」
冴島「なんか聞いたことある!」
江波「(ボソボソ)シェイクスピアの台詞を借りるなんて、ゴミクズ、ちょっとカッコつけすぎたか………」
冴島M「そういう事か!あのオッサン!(世界史教科書のシェイクスピアの肖像画が脳裏でグッジョブ!ポーズしている)」
江波「だからーー "もしも" 冴島くんが、この台本に書かれてる人物だったらこういう行動をする、って考えればいいだけ」
冴島「なるほど….」
江波「うまくやろうとしない。最初からうまくやろうとしてもすぐバレる」
冴島「はい」
江波「(小声)まぁ、君はまだその心配はないと思うけど……」
冴島「?、はい」
江波「結局は、才能じゃなくて努力の積み重ねだと思ってるから、僕は……」
冴島「….(少し嬉しそう)はい!!」
江波「じゃ、台本もう一回やってみようか」

オーディション課題の台本に再び目をやる冴島。

冴島M「もし、俺がBで、いきなり見知らぬAに声をかけられたら、Bはどんな行動を取るんだろう….。ーーいや、待てよ、そもそもここはどこだ?Aに話しかけられたとき、Bはスマホを持って何をしていたんだ?この会話がなかったら、Bはどこに行こうとしていた?ってか、なんでBはここにいるんだ?」

演出卓から台本を読む江波。

江波(A)「あ、そのスマホ、私のです」
冴島(B)「….そうですか?」

江波の顔と拾ったスマホを交互に見て、少し怪しそうな表情をする冴島。以前よりも劇的に力が抜け、演技がナチュラルになっている。
スマホをAに渡しかけようとして、やはり手を引っ込める冴島。

冴島(B)「いやー、違うと思うなぁ」
江波(A)「だってほら、この写真!」
冴島(B)「…..えぇ?」

ーー
江波M「…….まぁ、正直まだまだ課題は山積みだけどーーこの短時間でこんなにも適応できるのか」

江波「(小さく手を叩き)……..はい」
冴島「どうっすか!?!!?」

少し笑顔になる江波。

江波「もっとできるんじゃない……..?」
冴島「はい!!!」

【〜オーディション前日〜】

倫生館大学演劇研究部・稽古場 夜

夜10時近くを指す稽古場のボロい時計。2人の稽古がちょうど終わり、最後に江波からフィードバックをもらう冴島。

江波「…..まぁ、大まかなところは教えられたかな」
冴島「はい」
江波「とはいえまだまだ、発声とか滑舌とか課題は山積みなんだけど」
冴島「…..はぁい」
江波「まぁ、それは俳優部入ってからだね。頑張って」

ぞくっとする冴島。

冴島「はいっ!!!ありがとうございました!」
冴島M「やるしかねぇ…!入るしかねぇ….!俳優部!!!」

夜がふける。

【〜オーディション当日〜】

倫生館大学演劇研究部・稽古場

大勢の部員でざわざわしている稽古場。長い演出卓が2列並べられており、前列には幹事長である飛鳥を中心に4年生の演出部・俳優部12名全員が、後列には3年生の演出部・俳優部11名全員が座る。一番端に猫背な江波の姿もある。それぞれパソコンを出したりノートを開いたりしている。
稽古場の両脇をぐるっと囲むように並べられたパイプ椅子には、他部署(照明・舞台美術・音響など)に所属する4年生部員が座っている。その数おおよそ40名以上。いつもは広い稽古場が、今日ばかりは狭く見える。

オーディションを受験する俳優部志望の1年生約50名が演出卓の前に座っている。冴島と梶も床に座って黙っている。

冴島M「やべ〜〜〜〜、全員めちゃめちゃ演技うまそうに見える…….」

飛鳥「(ポツリと)さー、今年は何人残るかなー?」

ニヤニヤしつつ、なんだか楽しみな表情の飛鳥。
飛鳥がマイクを持った瞬間、シーンとなる稽古場。

飛鳥「えー、今日はよろしくお願いします。幹事長の遠峯です」
1年生「よろしくお願いします!!!!」

凄まじい声量の挨拶に圧倒される冴島。
梶は顔色一つ変えないが、どこか気合に満ちた雰囲気。

飛鳥「じゃあ、今から順番を言うのでーー」

えーっと、と飛鳥がパソコンを確認し出した瞬間、突然稽古場が大きくざわつく。

「え、あの人….」「嘘だぁ」「マジ!?本物!?」「やば!!」

そこには、梶の父親・圭一郎の姿が。


【第7話へ続く】

今までの話↓

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