「Act・2 (アクト・ツー)!!」 【第7話】 (創作大賞2025 エンタメ原作部門)
第6話↓の続きです。
※Mはモノローグ
倫生館大学演劇研究部・稽古場
国民的俳優である圭一郎の登場に、ざわつく稽古場。
「え、あの人….」「嘘だぁ」「マジ!?本物!?」「やば!!」
冴島「え……!?」
梶を気にする冴島。
驚きのあまり立ち上がり、信じられないという表情で硬直する梶。
稽古場の隅の壁に寄りかかり、穏やかな表情の圭一郎。
圭一郎「あ、ごめんね邪魔しちゃって。気にせず進めてください」
飛鳥「….は、はい!…えーと、では、順番を言っていくのでその通りに並んでーーー」
稽古場にピリッとした空気が流れる。冷や汗をかき、呼吸が早くなる様子の梶。
冴島M「おい……大丈夫かコイツ……しかし父ちゃんもプレッシャーかけるようなことするなぁ…」
飛鳥「冴島!梶!!」
冴島「は、はい!!」
飛鳥「はい一番後ろ並んで、トリだから」
冴島「え!?最後ですか!?」
飛鳥「早く」
冴島「…はい!」
周りが見えておらず、その場に立ち尽くす様子の梶。
冴島「おい、行くぞ!」
梶「…..」
梶をズズズと引っ張る冴島。
冴島M「おいおい本当に大丈夫かよ……」
ーー1時間後。
冴島M「その嫌な予感は的中した」
稽古場の真ん中で椅子に座って滝汗をかきながらシーンと固まる梶。
周りからは凄まじい視線の圧。圭一郎が今日一番の不機嫌顔。
冴島M「やばい。コイツ冷静さを完全に失ってる」
一瞬の間に思考を巡らせる冴島。
冴島M「最初は順調だった。ーーそもそも梶が書いた脚本は、こうだ」
♢ 洋食店(冴島の脳内イメージ)
冴島M「舞台は老舗洋食店のカウンター席。BはAがトイレに行っている間にAのスマホをそっと自分の方に寄せる。席に帰ってきたAは、Bに」
梶(A)「あ、そのスマホ、私のです」
冴島(B)「….そうですか?いやー、違うと思うなぁ」
梶(A)「だってほら、この写真!」
冴島(B)「…..えぇ?」
梶(A)「これ、私の妻の写真なので」
冴島(B)「それがどうしたっていうんです」
梶(A)「….はい?いや、だから、これは私のスマホだって」
冴島(B)「(ロック画面を見た後、笑う)いやいや、この女性が本当に君の奥様であるという証拠は?」
梶(A)「あなたね、失礼じゃありませんか?」
冴島M「そこで、Bが動く」
冴島(B)「(胸ポケットから警察手帳を見せる)」
梶(A)「…..は?」
冴島M「そして、Bはさらに一枚の写真を取り出してカウンターに置く。なんとそれは、Aのロック画面に写っている女性だった」
冴島(B)「この女性、結婚詐欺で指名手配中なんですが。ご存知ないですか?」
梶(A)「…..結婚詐欺?」
冴島(B)「この喫茶店で何人騙してきたんでしょうね」
梶(A)「いやいやそんなはずは…」
冴島(B)「あはは。騙された方、みんなそれを言うんですよ」
冴島M「ーー本来であれば、この後の梶の台詞は、」
梶(A)「だって、もう死んでますよ。彼女」
冴島M「だ。そこから物語は急展開し、Bが彼女の死の真相を追い詰める。彼女を殺した犯人はAで、彼女との思い出の洋食店でAが最後にオムライスを一口食べる、という終わり方だ。あの時、梶はよくあんなワクワクした顔でこんなドス黒い話書くなぁと思ったけど、これが思いつくのは、さすがだと….思う。いやいや違くて、今問題なのは、あいつ….」
梶(A)「……………」
冴島M「完全に頭真っ白になってやがる………。だ、だって…..お前が『彼女が死んでる』って言わないと、まじで何も進まねえぞ…. ?!どうする、どうしよう…..!?!」
【第8話へ続く】
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