「Act・2 (アクト・ツー)!!」 【第8話】 (創作大賞2025 エンタメ原作部門)
第7話↓の続きです。
※Mはモノローグ
倫生館大学演劇研究部・稽古場
梶「………」
ピタリと静止し、冷や汗をかきまくっている梶。
冴島M「おい…まじでお前の台詞がないと進まねぇぞこのままじゃ……」
ちらりと演出卓を気にする冴島。圭一郎をはじめ、全員からの暴力ともいえる鋭い視線を感じる。
飛鳥M「さて、どうする…?」
江波M「……まずいな…」
冴島M「と、とりあえずこの沈黙だけはやばすぎるだろ……なんか言った方がいいのか…?」
飛鳥と江波の姿が目に入る冴島。
冴島M「俺は…俺は、何を教わってきた?」
ーーフラッシュバック
飛鳥「まずは、相手の話を聞く!それが出来ないとね」
ーー
冴島M「よし、相手の話を……って、コイツ黙り込んでっから聞くに聞けないんですけど!?」
俯いて震えながら黙り込んでいる梶の姿。
冴島M「いや待てよ。コイツが話していない、ってことも……コイツの『話』だったりしないか?」
梶をよーく観察し、少しの沈黙の後、役にスッと戻る冴島。
冴島(B)「ハァ…」
ため息のあと、席を立ち、腕を後ろに組みなからゆっくりと梶の逆サイドに回り込む。
冴島(B)「……どうしたんだ、そんなに黙りこんで」
え?と冴島に目を向ける梶。
冴島(B)「君、何かーー秘密があるだろ?」
演出卓からニヤリとする飛鳥。
梶(A)「な…、いや…、は?」
冴島(B)「だから」
梶の胸ぐらを掴む冴島。つられて立ち上がる梶。その衝撃でパイプ椅子が倒れる。
冴島(B)「何か隠してるだろって聞いてるんだ!!」
江波「(小声で)最高」
それまでどこか他に気を取られていた様子の梶だったが、冴島の圧に圧倒され、他のことを忘れてただ冴島一点に集中する。
梶(A)「……フハハ…アッハハ!!!」
冴島の迫力からくる怖さに大笑いを始める梶(A)。
梶(A)「ダメか?!秘密があったら!?」
冴島(B)「なに?」
梶(A)「俺はただ、自分の自由に生きたかっただけなんだよ…」
冴島(B)「どういうことだ?」
梶(A)「俺はただーー」
今まで書いてきたノートと、それを書くときのワクワクした小さい頃の梶の表情と、洗濯物をたたんでいた朝子と、今、自分の演技を見ている圭一郎の厳しい目がフラッシュバックする梶。
梶(A)「自分で自分の心を殺した」
冴島(B)「……」
女性が写ったスマホを片手でスッと持ち、冴島に見せるようにする梶。
梶(A)「愛していた…この女のことも…」
スマホを床に捨てるように落とす梶。ボトッという鈍い音。
梶(A)「だから…殺した……」
冴島(B)「……ふざけるな」
梶(A)「は?」
梶の顔に寄り、凄まじい迫力の冴島。
冴島(B)「ふざけるなって言ってるんだよ」
梶(A)「……….お前に分かってたまるかよ」
凄まじい集中で2人を見つめるオーディエンス。
冴島と梶にはお互いしか見えていない。
冴島(B)「分からねえよ、そんなこと!!」
梶(A)「あ?だったらーー」
冴島(B)「でも、お前も俺のことなんて分からない」
梶(A)「……..」
冴島(B)「……同じだ。誰も、彼女の心は分からないんだ」
冴島M「ーーもし演じることを始めていなければ、こんな感情知らなかったと思う」
梶M「ーーただ演じることを続けていたら、こんな感情知らなかったと思う」
向かい合う2人。少しの沈黙。
冴島(B)「……もうすぐしたら迎えが来る」
梶(A)「……」
少し緩んだ表情で椅子に座る冴島。メニューを取り出し、パラパラとめくる(マイム)。
冴島(B)「なんか食べるか?」
梶(A)「…は?」
冴島(B)「これなんかどうだ」
梶(A)「……それ…あの女と一緒に食べたんだ、ここで」
冴島(B)「美味いのか?」
梶(A)「……ああ」
冴島(B)「じゃ、俺もいただこうかな」
梶(A)「…はは、これが最後か」
カウンターから料理が出てきて、受け取る2人(マイム)。
一口食べて、どこか寂しく美味しさを噛み締める梶(A)。
梶(A)「やっぱり…オムライスが一番だなぁ」
冴島(B)「君は……本当におもしろいなぁ」
【第9話に続く】
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