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「Act・2 (アクト・ツー)!!」 【第1話】 (創作大賞2025 エンタメ原作部門)

【あらすじ】

“劇的“ 青春グラフィティー第二幕(アクト・ツー)、ここに開演!

「『青春』の有効期限は高校までならーー俺は、何をしてたんだ?」
サッカーの推薦で高校に入学するも、1年の秋に怪我で競技生活を諦め、目標を失ったまま卒業を迎えた冴島光(さえじま・ひかる)。たまたま人数合わせのために観た『演劇』が、そんな彼の心を吸い取った。 ”そっち側=ステージ” に立つこと、それは彼の目標となる。
浪人生活の後、冴島は数多くの俳優・舞台人を輩出してきた名門・倫生館大学演劇研究会に入部。止まっていた冴島の青春が今再び始まるーー。

※Mはモノローグ

サッカーグラウンド 試合中

相手チームの控え選手が冴島を見ながら喋っている。

相手の控え選手A「あいつか、うちが取れなかった1年って」
相手の控え選手B「らしいよ。ドリブル速すぎんだろ」

ドリブルでサイドから駆け上がる冴島の背中。

相手の控え選手A「1年で即レギュラーだろ?」
相手の控え選手B「うちに来てたらなぁ」

得点板のスコアは4-0。

相手の控え選手B「はぁ、帰ったらまた説教だ」
相手の控え選手A「まじ最悪….」

冴島のチームメイトA「おい!!」

地面にうずくまっている冴島。どうやら相手チームのDFと衝突したらしい。

冴島のチームメイトB「救急車!」
冴島のチームメイトC「おい、冴島!!」
冴島のチームメイトD「冴島!!!」

冴島の苦しそうな背中。救急車が近づいてくるサイレンの音。

2年後・秋 新潟県長岡市

放課後の教室で勉強する冴島(高3)とクラスメイトの村尾。

村尾「だからぁ〜〜〜」
冴島「あ?(菓子パンを食べている)」
村尾「これはペリーじゃなくてザビエルだっつーーの!!」

ペリーとザビエルの比較写真(スマホ)。

冴島「しらね〜〜よ、別にもう大学決まってんだからいいだろ」
村尾「そうだけど….ちなみにこれはザビエルじゃなくてシェイクスピアな」
冴島「この時期のクラス雰囲気悪すぎ」
村尾「みんなは受験控えてるからな」
冴島「推薦組は邪魔すんなオーラすごすぎ」
村尾「しょーがねーだろ、でも俺らも一応考査はあるんだから」

廊下からクラスメイトの日置あかり(ひおき・あかり)がやってくる。

あかり「冴島!」
冴島「(あわあわする)なななに!?」
あかり「今度の日曜暇?」
冴島「なななんで!?」
あかり「だって冴島いつも暇じゃん」
冴島「いや….まぁ…….」
あかり「ちょっと付き合って!12時に駅前ね!よろしく!」
冴島「え!?あ、ああ…..」

あかりが去る。

村尾「やはりか」
冴島「……..……..いや??」
村尾「日置から誘ってきてたし、俺の知らないところで進展しすぎでは?」
冴島「違ぇよ」
村尾「勉強はできないくせにそういうスキルは上手なんだ」
冴島「いやいや行かねえから、日曜日」
村尾「無理しなくていいって(笑)」
冴島「ほら、俺もそんなに??あのー、暇じゃないし?」
村尾「お前いつも暇だろ、部活やってなかったし塾も行ってないし」
冴島「まぁ…..」

夕方の帰り道。冴島が一人で歩いている。

冴島M「部活はやってたよ、やってたはずなんだよ」

コンビニの前で元サッカー部員とすれ違い、偶然目があう。

冴島「よ」
元サッカー部員A「おお」

気まず〜という顔をする元サッカー部員A。
少しの沈黙。

冴島「じゃ」
元サッカー部員A「おお」

歩き始める冴島。寂しそうな背中。夕日。

冴島M「 "青春" の有効期限は高校までならーー俺は、何をしてたんだ?」

日曜日 市民会館の前

冴島「え?」

あかりの横に、2人の女子高生。

あかり「あれ?言ってなかったっけ?」
冴島「……. えっと…」
女子高生A「高木です」
女子高生B「金本です。あかりとは中学の同級生」
あかり「ごめん、1人来れなくなっちゃってさ、チケットもったいないから」

冴島にチケットを手渡すあかり。

あかり「じゃ、先会場入ってるね!」
冴島「いや、え、ちょっと」

足早に会場に入る冴島以外のメンバー。

冴島M「….………デートは????」
冴島「昔っから想像力だけは良いって言われんだよなー」

光のガッカリした背中をよそに、市民会館の前にそれなりに集まってくる人。
手渡されたチケットを見てみると、そこには ”倫生館大学演劇研究会 地方公演” の文字。

冴島「大学…..?えん…..げき…..?」

どうしよう…と周りを見渡す光。時計を見ると開演まであと10分。

冴島M「これ見んのかよ…..」
冴島「まぁ….….帰りにファミレスとか一緒に行くかもだし?」

会場内 座席

冴島「なぁ、これって手拍子とかするやつ?」
あかり「コンサートじゃないんだから」
冴島「てかなんでこれ観たいの…..?」
あかり「まぁ…..」
冴島「もしかして第一志望倫生館?!めちゃめちゃ頭いいな!」
高木「ちょっと!!静かにしてよねッ!」
金本「マナーがなってないッ!」
冴島「すんません…..」

暗くなる会場。

冴島M「(ウン!って顔で)よし、寝るか☆」

腕を組んで目を閉じる冴島。
幕が閉じたまま、明転。くせっ毛の役者が歩きながら登場。

役者A「俺は、サッカーを辞めた」

目を開ける冴島。

役者A「あれは事故だった」

舞台を見つめる冴島。

冴島M「ーーは?」

役者A「あの日の試合、あの日のミーティング、あの日の帰り道、俺は確かに必要とされていた」

言葉が出ない冴島。

フラッシュバックーー2年前・秋

サッカー部 部室

ざわざわしている中に冴島が松葉杖をついて入ってくる。

部員たち「おい!!」「冴島」「大丈夫か!?」
冴島「うん、大丈夫」

病室にて母親と診察結果を受けている冴島。

母親「前十字靭帯、ですか」
医者「ええ、今後のためにもしばらくは….」
冴島「しばらくってどのくらいですか!?」
医者「…..しばらくは、です」

グラウンド。見学している冴島。冬。

サッカー部の先輩A「冴島ぁ〜このままだとレギュラー奪われちゃうぞ〜」
冴島「すんません先輩、なる早で戻りますから(笑)」

教室。春。

サッカー部員A「今週の練習試合、俺スタメン入った!」
クラスメイトA「すご!頑張れよ!」
冴島の悔しそうな顔。

下校中。夏。

サッカー部の後輩A「その先輩1年でスタメンだったんだろ」
サッカー部の後輩B「でも怪我で退部したらしいじゃん」
すれ違いざまに聞こえ、驚き振り返る冴島。

職員室。サッカー部顧問と話す冴島。

顧問「だから、一応退部【扱い】な?部費とか色々な事情でだよ」
冴島「戻りますからね」

サッカー部部室。秋。
一人ポツンと立つ冴島。ホワイトボードに「新チーム 背番号」と書かれ、順番に割り振られている。

冴島「コイツが10番かよ…..」

自宅。冴島の部屋。冬。
サッカーの動画を見て研究する冴島。母親が入ってくる。

母親「あんた….」
冴島「うるせえな」

学校。三者面談。春。

先生「う〜〜〜ん」
冴島の成績を見て悩む先生。
先生「まぁ、いろいろと出願すればどこかしら推薦が決まるんじゃないですか」
母親「そうですかね….」
グラウンドを見ている冴島。

コンビニの前。夕方。
元サッカー部員とすれ違い、偶然目があう。

冴島「よ」
元サッカー部員A「おお」

気まず〜という顔をする元サッカー部員A。
少しの沈黙。

冴島「じゃ」
元サッカー部員A「おお」

歩き始める冴島。寂しそうな背中。

再び舞台。

役者Aが冴島の方にゆっくりと動き、しゃがむ。
冴島を見つめる。目があう。

役者A「俺はなにをしてたんだろうといつも思う」

息が止まったように見入る冴島。

役者A「ふざけんな!!!ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな!!!!」

冴島の目に涙が一筋流れる。
叫びが響いた後、沈黙に包まれる会場。
舞台のセンターにゆっくりと戻っていく役者A。

役者A「でもさ」

後ろを向く役者A

役者A「まだ、幕も上がってないよ」

ゾクっとする冴島。
舞台が暗転し、爆音の音楽が流れる。

幕にタイトルが映し出されるーー
『ACT 2!!』

1年半後・春 倫生館大学演劇研究会 部室前

”倫生館大学演劇研究会”。年季の入った看板の前で深呼吸をする冴島。入部届を握りしめている。

冴島「(ブツブツ)1年冴島光です倫生館の地方公演を観て絶対に役者がやりたくて来ました頑張ります1年冴島光です倫生館の地方公演を観て感動して…」

あかり「え??」

冴島「え??」

あかり「冴島!?!?!」
【日置あかり / 倫生館大学演劇研究会2年 / 演出部】

冴島「え?あ?なななななんで」
あかり「こっちのセリフだから」
冴島M「どういうことだ?もしかしてーー」
あかり「もしかして、劇研入部希望??」
冴島「あ、いや、えーと」
あかり「見せて!」

冴島の手から入部届をひょいと奪うあかり。

あかり「『1年』?」
冴島「……浪人….して….」
あかり「『入部理由:倫生館の地方公演を観て感動して』
    …..へぇ〜〜〜〜〜〜????」

ニヤニヤして冴島を覗くあかり。

あかり「『役者希望です。絶対役者がやりたいです』、ほぉ〜〜〜〜〜ん??、へぇ〜〜〜〜〜〜??」

冴島「やっぱやめる!!!」

入部届を奪い返して帰ろうとする冴島。

あかり「ふぅ〜〜〜〜〜ん????」

ニヤニヤするあかり。
ドスドスと戻ってくる冴島。顔真っ赤。

冴島「あ〜〜〜もういいよ!!!
   入ってやるよ入ってやるよ!!!」

勢いよく部室のドアを開ける冴島。
冴島「(大声で)失礼しまーーー」

ガコン!!

冴島「…….え?」

ドアの向こうの人に思いっきりぶつかった。
恐る恐る部室に入る冴島。
すると、先輩らしき人が白目で泡を吹いてぶっ倒れている。

冴島「すみません!!!大丈夫ですか!?」

慌てて先輩らしき人を揺さぶり、意識を戻そうとする冴島。

あかり「もう江波さんまた……」

白目のまま気絶している江波遊(えなみ・あそぶ)。
【江波遊 / 倫生館大学演劇研究会3年 / 俳優部】

あかり「いいよ、そこの布団にテキトーに寝かしとけば目覚ますでしょ」
冴島「いいのかよそんな雑で」

部室は布団がひいてあったり物が散乱していたり、いかにも大学のサークルの部室、といった雑多な雰囲気。
とりあえず江波を抱え、布団に運ぶ冴島。

江波「う…….」
あかり「お!今回回復早い!」
冴島「そんな気絶するのこの人….?」
江波「ヴェ……吐きそう…..」
あかり「吐かない吐かない!大丈夫!」
江波「なんで僕はこんなゴミクズなんだ….死ぬ….齡20にして死にたくない….」
あかり「はい死なない死なない!」
冴島M「なんだこの人…」
あかり「覚えてる?江波さんのこと」
冴島「いやいや、今日初対面…….」

江波の顔を凝視する冴島。めちゃめちゃ驚いて固まる。
1年半前のあの舞台がフラッシュバックする。

あかり「見過ぎ」
冴島「…………そういうこと?」

あの時のくせっ毛の役者A、それは彼・江波だったのであるーーー

冴島「にしても同一人物じゃないって」
あかり「江波さんは倫大劇研の看板役者だからねー」
冴島「…….このゲロ吐いてる人が?」
江波「(キラキラしている)」
あかり「あーーー!!ちょっと!!本当に吐くって聞いてない!!」

〜少々お待ちください〜 ※お花畑背景

回復した江波。

江波「(入部届を見て)へ〜、きみは役者希望なんだ….(小声)まぁ、ぼくができるんだったらだれでもできるから……」
冴島M「ネガティブだなぁ」
あかり「じゃあオーディションだね」
冴島「オーディション?!」
あかり「うちは部員だけで200人超えてるからねー、役者やりたいって人みんなにやらせるわけにはいかないのよ」
冴島「どういうこと?」
あかり「人が多いからそれぞれ部署が分かれてるの」
冴島「部署?会社みたいだな」
あかり「たとえば舞台セットを作りたいなら『舞台美術部』、脚本を書いたり演出をしたいなら『演出部』、私はここね。んで、演技がしたいなら『俳優部』、江波さんはここ」
冴島「じゃあ俳優部に入ればいいってこと?」
あかり「そう」
冴島「じゃあ入る、入りまーす(手をあげる)」
あかり「だから話聞いてた?!オーディションがあるの!それに合格して俳優部に所属できないと、そもそも演技すらやらせてもらえないの」
冴島M「そのオーディションってそんなに厳しいの?」
あかり「(江波に)今年は倍率どのくらいだと思います?」
江波「え?…..さぁ….?」
あかり「去年は10倍いったって聞きましたよ」
冴島「10倍!?」
あかり「倫大劇研の俳優部に入れたら将来安泰、って言われるくらいだから」
江波「(小声)そんなこともねえよ…..僕みたいなゴミだって…..」
冴島「で、オーディションっていつあるの?」
あかり「2週間後」
冴島「は!?2週間後!?だって俺演技もなにも….」
あかり「今年はどんな子が来るかなー」
冴島「一応聞くけど……もし、落ちたら?」
江波「残念だけど、4年間舞台には立てないよ」
冴島「えええええ?!?!」

倫大劇研・俳優部オーディションまで、あと14日。


【第2話に続く】

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