『生殖の海』第七章 「いのちひとつぶん」
『生殖の海』第七章 「いのちひとつぶん」
葛の葉のうらみにかへる夢の世を忘れがたみの野べの秋風
すゞしやと窓の夜風をながむれば虫の音すだく秋は来にけり
寝入りかねてやをら押しあくる松の戸にこの比ひとの知らぬ月影
子のなくはと言ひしひとの妻の腹又まろくなるおもしろさ哉
若草の妻子もとよりありあけの野も狭に吹きも止まぬ荻風
草原にふりさけ見れば経血をぶちまけわたる夕暮れの空
なべて皆現しごゝろは失せよかし見ず知らざりし昔とをなれ
ひとの子を宿しほゝゑむさいはひはあらし吹き荒ぶかよひ路を断て
腰にかひな絡めもろともさはれいざこの胎にひとの子は生けりてふ
この胎に我れよりいのちひとつぶんおもき重みを育める者
孕ませし者を裏見の葛の葉を月は西にぞかたぶきにける
葛の葉もをぎの末葉もひるがへす嵐はやがて秋風となる
その胎にたまゆらありしひとの子と語らふ野べの露のあけぼの

『生殖の海』目次
序章 にほふマルボロ
第一章 のぼる煙
第二章 母として行く道
第三章 しづかなる海
第四章 明けぬ夜の闇
第五章 目を開けて
第六章 及ばぬ高きすがた
第七章 いのちひとつぶん
第八章 水底の死
第九章 母となること
第十章 我が暴れ川
終章 ひかりを添へて
PS.
横書きは読みにくい?
ですよね。noteですから。
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