『生殖の海』第三章 「しづかなる海」
『生殖の海』第三章 「しづかなる海」
どんなに望もうと、その写真のお姉さんのような姿にはなれないのよ。
夜は明けぬ覚めぬ夢なりうつせみは昔もけふも生きて見る夢
子を殺めひとを去りつるもろ足に踏み締むるつちの香と草いきれ
俺の子を殺してつぎは誰れのをとライヲングラスを匂ふ風おと
反対の頬を差し出でざる者を去ればかたちを風は残さず
君が頬より我が手よりいさやさやをとこの持たぬ海に立つ波
永劫といふ観念のうへに立つ我が卵管の癒着せしより
卵管をつぶして得たるうつせみも昔もなべてまぼろしのうち
をんなすべからく母たるべしと子殺しを詰るをとこを見き過ぎにけり
孕まれぬ性にまかするいきものゝ恨みとほすに能ひやはする
芦の根の世に取りこぼすいろいろの色を思へば海しづかなり
子や要らぬなどゝ尋ぬる友のまへに冷えゆく二杯のカモミールティー
母となること疑はぬさいはひにを笹が原を吹きすさべ風
サヴァンナの草原に立ち海を抱く我が行くすゑを吹き払へ風
なべて皆見ず知らざりし来し方を時どき思ふときどきは、思ふ
目を開けて尽きせぬ夢を見る夢にあはれといまは思ふうつせみ

『生殖の海』目次
序章 にほふマルボロ
第一章 のぼる煙
第二章 母として行く道
第三章 しづかなる海
第四章 明けぬ夜の闇
第五章 目を開けて
第六章 及ばぬ高きすがた
第七章 いのちひとつぶん
第八章 水底の死
第九章 母となること
第十章 我が暴れ川
終章 ひかりを添へて
PS.
横書きは読みにくい?
ですよね。noteですから。
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