「がん治療と仕事の両立、そして“笑顔”が教えてくれたこと」棚瀬連載 第11回
藤沢薬品¹が開発した免疫抑制剤
|FK506(タクロリムス)²《連載第2回(note記事)》から
誕生したアトピー性皮膚炎薬、|プロトピック軟膏³《連載第3回》。
日本での開発に携わった棚瀬は、
グローバルプロジェクトマネジャーとして、
FK506外用剤(後のプロトピック軟膏)の
|米国・欧州での展開に従事しました《連載第5~8回(note記事)》。
その後会社を離れ、
バイオベンチャーの社長として仕事に邁進していたまさにその時、
|私はステージ4のがんと診断を受けます《連載第10回(note記事)》。
副作用やコロナ禍による苦しみの中で出会ったのは、
医療を支える「人」と
人生の「目標」でした。
《前回までの連載はこちらから》
二か月に及ぶ入院生活を終え、私は退院しました。
正直、体はもうボロボロでした。
抗がん剤の影響で弱り切った体力では、少し歩いただけで息が切れます。
あんなに大好きだったゴルフでは、
ハーフを回り切れないまま断念するときもありました。
それでも人間とは強いもので、
筋力トレーニングを再開し、リハビリを続ける中で、
少しずつ、少しずつ、体は回復していきます。
徐々にできることが増えていく日々に、
「また前に進める」と希望が沸き上がってきました。
退院後も、心に深く刻まれていることがあります。
入院中、
医療従事者の方々が感情を荒らげたり、
投げやりな態度を見せたりする姿を、
私はただの一度も目にしませんでした。
医師、看護師、薬剤師、
栄養士、リハビリ担当の方々。
ただでさえ慌ただしい病棟に、コロナ禍という二重苦
どれだけ忙しくても、
どれだけ疲れていても、
患者である私たち一人ひとりにいつも寄り添ってくださいました。
退院が決まった日、
お世話になった方々にご挨拶をさせていただきました。

看護師の皆さんと集合写真を撮るその時、
ほんの一瞬だけマスクを外し、
笑顔を見せてくれたのです。
寄せ書きには手書きでこう添えられていました。
「治療と仕事の両立、すごいの一言です」
長年製薬会社で医療に関わってきた私は、
「医療を支えているのは、人だ」
という当たり前の事実を、改めて痛感しました。
そして病の中で、
現場の皆さんから確かな安心と笑顔を授けていただきました。
PET-CT検査の結果、
治療前に全身に広がっていた病巣は画像からすべて消えていました。

完全寛解。
その言葉を聞いて、
喜びと同時に、言葉にできない感謝の気持ちが
胸いっぱいに広がりました。
医療従事者の皆さん、家族や友人。
あの頃支えてくれたすべての人のおかげで今の私がいます。
退院後の私は以前にも増して、
「なぜ自分はこの仕事をしてきたのか」
と考えるようになりました。
新薬を世に出すこと。
企業を成長させること。
どちらも、十分大切な理由です。
しかし、その先には何があるのか。
答えはとてもシンプルでした。
患者さんと、そのご家族に笑顔をもたらすこと__

私は今、
セミナーやYouTubeを通して、
語り部としてお話しする機会をいただいています。
自分が見てきたことや、
経験してきたことを、
医療にかかわる次の世代に手渡すためです。
次回予告
次回の投稿では少し時間を戻して、
私が株式会社レナサイエンスの社長を
務めることになったきっかけについてお話します。

藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬)にてセファロスポリン、タクロリムスの臨床開発、タクロリムス外用剤の グローバルプロジェクトリーダー、アストラゼネカ株式会社ではプロダクト開発リーダー部の部長として、オラパリブ、 エソメプラゾールなど様々な治療薬の開発リーダー兼務しながらすべての国内開発品目の責任を負う。欧米赴任歴6年間。その後大手CROsのVP/執行役員、 マルホ株式会社の執行役員兼欧米子会社取締役を歴任。2018年から3年間、株式会社レナ サイエンス代表取締役社長を務め、ATインターナショナルを設立(xCAREに吸収合併)。現在は弊社取締役COOの他、複数のバイオベンチャー企業顧問、監査役、アカデミアアドバイザー等を併任。
【連載第1回~第10回投稿はこちらから】
【xCAREとは】
xCAREは医薬品・医療機器業界に特化した専門家プラットフォームです
私たちは、医療業界に必要なプロダクトを1日も早く人々へ届けるため、医薬品・医療器業界で働く方々を中心とした、人財プラットフォームを構築しています。
国内外1700名以上の医療業界の専門家(エキスパート)が登録されていて、エキスパートの方々と共に、既に100社を超える企業を支援させていただいております。
私の役目は、社員やエキスパートが、毎日楽しく、高いモチベーションで社会に貢献していただける世界を作ることだと思っています。
これからもどんどんエキスパート数を増やしていき、お客様がより使いやすいプラットフォームを目指していきます。
