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旅の色と風景の形の中を行く

 心臓のアーカイブを後にして


もと来た道を引き返す。この道を15年前に、小さな
子供と手をつなぎ歩いたことを思い返す。思えば、
月日が流れるのは早く、 人生の季節は移ろいゆく。
九州の地で綴り始めた旅の文章も、4年の月日が
経つまでとなった。言葉とともにめぐり始めた島
の風景を関西に移し、この旅で豊島へやってきた。



繰り返す波の音に耳をすませ



波打ち際に沿って砂の感触を確かめる



水平線に浮かぶ雲と島々



あの日の風景を思い、また来た道を引き返す



緑は風景を鮮やかにし、建物の時間を浮かび上がらせる


視点を動かし、定め、また転じれば



風景の中の色や形が目に留まる



広がる光は、建物に表情と影を刻む


道沿いの建物の入り口に重なる建具は



かつて豊島に存在した連なる建具の記憶につながる 


風景の中の形をたどっては、記憶の中に立ち上げて



色褪せたトタンの風合いに 


時の長短を感じ、その横に設置された作品を



見上げる。バスケットボールは放物線を描き



数あるリングのどれにも入らなくても



ボールの動きは楽しげに。それはバスケットボールの



リングが並ぶ勝者はいないという作品



訪れたのはお盆の頃で、街角に立つやぐらは


赤と白の祝祭の気配をまとう



その先に、空にも海にも溶け込むような水色の壁



街の色や形、空気の中を抜け、また港へ出る



風景の中にある色や形を


旅の記憶に重ねていく



時が積もるような港の風景に



ひかれていて、連なる青と白の色の対比と連続は


海につながる旅の記憶を思い起こさせる



その先に広がる海



空と海を区切る長く伸びる防波堤。自然と人工物が



織りなす風景を、今度は一気下った坂を上る



豊島美術館へと向かう人々とすれ違い



その空からふわりと降りたかのようなシルエットは



2010年の旅では、まだ出来上がる前で



同じく遠くに眺めたことを思い出す



池に浮かぶような白い羽根の作品は



風に揺られ、水に移ろい


豊島の気配を浮かび上がらせていた



島に広がる水と緑と空の風景を進み



白と青のやわらかな風合いののれんの前へ


港の集落から、丘の上の集落へ。緑の小道を抜け、
きらめく海の風景を過ぎて、下った坂をまた上り、
賑わう豊島美術館を後にして。かつてたどった島
の風景をなぞる。写真は言葉を呼び、言葉は風景に
つながる。旅をするほどに景色は移ろい流れゆく。


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