見出し画像

船と空間は引き寄せられるようにして

豊島の風景も、あと少し

海へ続く道は、船が持つ記憶の風景へとつながる。
島をめぐり、始めに訪れた場所へと戻ってきた。
そこは島にあったかつての風景に、動くことのない
船が重ねられた、巨大なコラージュ作品でもある。



連続する赤ちゃけた鉄の壁



かつてここはメリヤス針の工場だった場所で


掲げられた針の文字に、つながる銭の文字 



コラージュされる鉄の形


重ね合わされたモノに積層される記憶



どこかで使われていた鉄や木やゴムのかけらが


重なり合うほどに、意味は生まれては失うように



大竹伸朗氏が作り出す世界。そこでは、それぞれが持つ



時間が層をなし、作家の象徴でもあるヤシへとつながる



ここはかつて工場であった場所



残された空間は、がらんどうでも



かつて外壁をまとっていた、むきだしの鉄骨が描く影



空間の中央に据えられるのは
 

逆さを向いて、時を閉じるような木造の船


そこには海と島の記憶をつなぐ船の物語がある



床に伸びる影は



建物の気配を立ち上がらせる



もう動くことのない船と



錆びゆく建屋に、蘇轍の緑が鮮やかで


時を閉じるものとつなぐもの



側に建つ建物の、時計の盤面のようなドアの引き手



海の色をした柱とさざなみ打つような風合いの白い壁



吊り下げられた時計の針のようなオブジェ



併設された建物はこの場所を伝える場所で



宇和島からここまで運ばれた船の記録が流れる



大竹伸朗氏のまなざしにひかれ



島から島へ旅をして



そして島をぐるりとめぐり


もう一度、針工場へとたどりついた



朝に立ち寄った時は、柱の影はリズミカルに



光は風景をやわらかく包み込む



閉じられていた重厚なる木の扉



素材や形で風景はコラージュされるように



芝生と空を分つ建物



大きなヤシに、作家の気配を感じては



朝の光に輝くような針工場で



大竹伸朗氏のフォントが踊る


歴史を閉じた工場と、30年もの間


役割を失い、打ち捨てられる寸前だった


船の記憶が重なる場所


多くの人にひかれ、宇和島からやってきた船は


ここに終の住処を求めるように


連なる素材、重なる記憶。ありとあらゆるものが
組み合わされ、意味が生成されていく。動くこと
のない船。包み込む朽ちゆく空間。かつてそこに
あった本来の姿。その時間と場所を超えた関係性が
人の心に語りかける。時を帯びるものが重なり合う
ほどに、関係は複雑に、場所の記憶は層をなす。
一つ一つ組み立てては、綴る日々の中で、寄せて
はひく視点とともに、島と海の旅を重ねていく。


いいなと思ったら応援しよう!