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海に紡がれた時をつたって

塩の記憶を帯びる宇多津の街

街に佇む建物の間をゆく。築地塀の内側が帯びる色
の重なりに目を留めて、見上げるように街を歩く。
昭和初期に建てられた三角邸と名付けられた建物
では、かつて瀬戸内の海に流れた時が紡がれる。



時が過ぎゆく宇多津の古街で



建物が重ねる時間は



速度を変えるように散りばめられる


ゆったりとした宇多津の古街に沿うように



リズムよく並ぶ開口部をたどり



築地塀をぐるりと伝う。瓦や板に見る



雲の形。内部空間に展開されるのは



海の記憶。青地に描かれる



波間のような、網目のような白の模様



100年もの時間が経過する建物には



各所に網代板、装飾された格子や窓が



時をつなぐように配置される


形を拾い集めては、重ね合わせる



時の密度を上げる空間で



泡立つような白い粒子が



潮の流れを表現する



塩の粒子は密度を変え、表情を変えて



宇多津に流れた時を表す



一つ一つの小さな粒が寄り集まり、形をなし



瀬戸内海の大きな広がりが表現される



静かな時を刻む空間に出現する鮮やかな海



建物を構成する細部には、手が掛けられ、100年の時を経て



まだ新しさすら感じる。鳥の透かし彫りは



かつて出会った風景を接続するもの

時間をかけて作られたものは、時を超える



立体にも落とし込まれた潮の流れは



部屋の中央で、渦巻いては回転するように


旅での風景に、思考に力を与える



青地に浮かぶ白の粒子が


寄せては返す波に重なる



作品が放つ時の流れは、かつての暮らしを取り込むように



ふわりと宙に浮かぶように



ぐるぐるとめぐる時間の渦を作り出す


時を紡ぐという作品は、過去をつなぎ、今を動かす



作品が生み出す時間にふれ



建物が刻む時間や、形をたどるほどに


過去の形は像を結び



新たな風景が立ち上がる。半円を描く窓の向こうに



繊細な透かし彫りの先に



屋根の上の飾り瓦の波の合間に


時を重ねる日本家屋。散りばめられた意匠が、建築
への熱が宙を漂い、空間の密度を高める。閉じ込め
られた時間の中で、海の記憶が紡がれる。青に散り
ばめられた塩の粒子は、波のように、泡のように、
かつて宇多津の海に流れた時を浮かび上がらせる。


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