建物がつなぐ時の流れの中へ
色の記憶が時と場所を超えるように
建物がつなぐ時の流れもまた、いつかの旅の風景へと
重なっていく。街道の先の和と洋が入り混じる建物を
後にして、昨日の休館日であった施設をたどるように
次の森の芸術祭の会場の、城東むかし町家へと進む。

昨日には休館日であった森の芸術祭の会場の
城東むかし町家。正式名称は旧梶村家住宅といい江戸
時代に、苗字帯刀を許された津山藩の「札元」両替商
であった梶村家の町家が整備されたもの。主屋や土蔵
など多くの建物群から構成され、古くは幕末に建てら
れて主屋から、新しいものは昭和初期の土蔵からなる。

江戸時代に建てられた主屋を抜けると

大正時代に建てられた洋館が姿を現す

ざっくりとした質感のドイツ壁というモルタルの壁

宝石のようなドアノブが、当時の記憶を輝かせて

見上げる洋館のざらりとした質感の外壁に

壁の質感が旅の風景をつなぐことも
壁は、過去から現代へと移り変わり、時を紡ぐ

土蔵は、東は大正時代、西は昭和時代に建てられたもので

漆喰の質感、なまこ壁の連なりにも時の移り変わりを感じつつ

なまこ壁のデザインは、形を変えて今も生きている

壁は光を吸い込んだり、まとったりもしながら
日本建築のモチーフは時を超えていく

土蔵の扉を閉じる金物も、ところ変われば

異なるデザインに。奈良で出会った土蔵を持つ建物にも
異なる時を紡ぐ空間が広がっていた

土蔵の奥の茶室の庇は苔に包まれて

漆喰の壁や木の質感は、時の流れを感じさせる

茶室はデザインの宝庫で、生け取ったり、散りばめたり

素材と素材は重なり合いながら時を刻み

茶室というゆったりとした時の流れを形作る

大正時代に建てられた座敷と呼ばれる二階建ての建物の

縁側にめぐるガラスは周囲の風景を映し、建物を風景と一体に

ガラスという無機質な素材は、有機的に風景をつなぐ

建物の欄間には、花の模様が彫り込まれ

板に透かされるように続く松の並木の

向こうに広がる光の溜まりに

いつか見た三日月の彫り込みに浮かぶ風景を思いだす
それは島原武家屋敷の風景の懐かしい思い出

複雑になる建物の連なりに、障子の奏でるリズムは

空間と時間をつなぐ装置となる
いつかの日本建築のモチーフは、どこかとつながって

互い違いに、ずれあい重なり合う和の建築のモチーフは

空間をゆらがせ、微細な表情をまとう

明治時代に建てられた主屋の一部には、遊び心があふれていて

内部空間には、直線や斜線が配置され

内と外ゆるやかにつながるガラスが

その空間を拡張させ、内部と外部か

渾然一体となる意匠に包まれる

建物に、庭園に、ちりばめられた和のモチーフを

たどりながら、その変化に目を留め、時を感じる

昭和初期に作られた庭園は、それらをつなぐ干渉帯となり

城東むかし町家には様々な時のかけらが混ざり合う
その時代との形や素材をたどりながら
建物がつなぐ時の流れの中へ旅をした
城東むかし町家は、時の流れをつなぐ場所。出雲街道
に面して建つ幕末に建てられた主屋を抜けると、明治、
大正、昭和と時代とともに増改築された建物群が並ぶ。
建物内部から外部へ、また内部へ。茶室から望む建物、
ゆらめくガラスに映る庭園、壁の質感はめまぐるしく
変化し、歩くほどに建物と自身の関係も流れるように。
大正時代の洗練された和風建築から、荒々しい表情を
持つ洋館や、時が染み入るような茶室に、空間をつなぐ
日本庭園。それらの質は違うようで、どこか同じ空気を
まとい、江戸時代から続く時の流れをつなぐように、
今も存在し続けている。その時の流れを感じつつ、この
旅が、また一つの風景として旅の記憶をつないでいく。
