リカバリーの社会実装戦略【パパゲーノが何を考え、創業から4期経営してきたか?】
こんにちは。パパゲーノ代表の田中康雅(やすまさ)です。2025年11月末をもって、株式会社パパゲーノの4期目が終了しました。
僕たちは「生きててよかった」と誰もが実感できる社会の実現を目指し、就労継続支援B型「パパゲーノ Work & Recovery」の運営と、支援現場向けDXアプリ「AI支援さん」の開発を行っています。
僕たちがどのような課題意識を持ち、どんな戦略で「リカバリーの社会実装」を進めているのかを共有します。
障害福祉の現場が抱える構造的課題
障害福祉の支援現場には、2つの深刻な課題があります。

課題1:非効率なオペレーション
勤怠管理の40%は依然として手書き。利用者への工賃支払いの46.5%が現金手渡し。全国1.8万事業所がこの現状です。支援の質を向上させるべき時間が、アナログな事務作業に奪われています。
課題2:支援者の燃え尽き
「タイピングが苦手」「複雑なシステムは定着しない」
支援者は利用者と向き合う時間よりも、自治体ごとに異なる複雑な書類作成に疲弊しています。この構造的な課題が、本来最も重要である「リカバリー」の機会を阻害しています。
僕たちの旅の始まり
2022年3月、僕たちの旅は一人の精神障害当事者の声と、一冊の絵本から始まりました。

統合失調症当事者のかけるんさんの体験を基にした絵本『飛べない鳥のかけるん』を創作。そして「パソコン仕事に挑戦したい。でも、近くに挑戦できる機会がなかった」という声に応え、2023年9月に就労継続支援B型事業所「パパゲーノ Work & Recovery」を八幡山に開所しました。

パパゲーノの「ぐるぐるモデル」
私たちは2つのエンジンで福祉の未来を再定義します。

エンジン1:思想と文化(Work & Recovery)
Work:「他者貢献」による生きがいと存在価値の実感
Recovery:「自分らしい生き方の回復」を最優先する支援
根幹をなす「支援員7原則」
これが私たちの価値の源泉です。
エンジン2:インパクトを広げる(AI支援さん)
現場の知見から生まれた、現場のためのDXツール「AI支援さん」の開発に障害当事者と共に挑戦しています。音声の文字起こし、要約、画像読み取り、書類自動生成で事務作業を劇的に効率化します。
これが思想をスケールさせるための「仕組み」です。
僕たちは「AIは『脳のメガネ』である」と考えています。視力が悪い人がメガネを使うように、脳の機能障害をAIで補うことが当たり前になる社会を創ります。
戦略的投資フェーズから黒字化へ
2024年2月期は、売上高3,918万円、営業損失423万円の戦略的投資フェーズでした。4,000万円ほど投資して八幡山の拠点設立、AI支援さんのプロトタイプ開発、ITと福祉の専門性を持つチームづくりに注力しました。

2024年12月、転機が訪れます。AHCグループ株式会社(東証グロース:7083)が当社の全株式を取得し、完全子会社化。全国130拠点以上の運営ノウハウとネットワークを持つAHCグループと、僕たちのIT/AI技術とリカバリー思想が融合しました。
上場企業の力を借りて「フルスイングできる盤石な体制」を整える決断でした。

2024年11月期(9ヶ月決算)では、売上高4,517万円、経常利益844万円、当期純利益747万円を達成。投資フェーズから収益化フェーズへの移行に成功し、事業モデルの有効性を財務数値で証明しました。

社会から求められていることの証明
1. パパゲーノ Work & Recoveryの拠点拡大
2023年の1拠点から、2025年には3拠点(八幡山・下高井戸・用賀)へ。約120名の障害のある方が活躍する場を提供しています。2026年には4拠点目の開所も予定しています。今でも毎月20〜30名の新規利用希望のお問い合わせをいただいております。
2. AI支援さんの導入拡大
2024年11月の1事業所から、2025年7月には24事業所へ。毎月多くの問い合わせをいただいており、導入が進んでいます。
3. 国や自治体からの評価
内閣官房「新しい資本主義実現会議」の「省力化投資促進プラン」において、障害福祉分野のDX優良事例として掲載されました。厚生労働省や法務省からの取材も何度かいただいてます。
最近では、杉並区議会議員、世田谷区議会議員の方も多くいらっしゃっています。

価値創造の永久機関
私たちのビジネスモデルは、4つの要素が相互に強化し合うサイクルが回る構造になっています。

現場での実践:就労継続支援B型で質の高い支援とDXを実践し、現場の深い課題とニーズを把握
プロダクト開発:現場の知見を基に「AI支援さん」を開発・改善
業界への貢献:「AI支援さん」や「福祉経営」の知見を外部に提供し、業界全体のDXを推進
社会的インパクト:蓄積されたデータと実績を基に政策提言や新たな事例創出
この循環によって「リカバリーの社会実装」に挑戦し続けます。

直近も、パパゲーノAI福祉研究所でソーシャルワーカーの生成AIに対する認識の実態調査を実施しました。分析結果は後日公開予定です。
未来へのロードマップ:3つの柱
リカバリーの社会実装戦略を形にするための3つの柱は以下の通りです。

戦略①【深化】:最高の支援モデルを標準化
「支援員7原則」に基づき、アセスメントから個別支援計画、日々のコミュニケーションまで、全てのプロセスをマニュアル化。理念とスキルを両立した支援員を育成する独自の研修プログラムを開発し、NPSや利用者データを活用したフィードバックループを確立します。
これにより、拠点拡大時の品質維持と、立ち上がり期間の短縮(通常1.5〜2年→1年以内)を実現します。

また、形式知化の目的は「自社の標準化」だけでなく、「業界の発展」のためでもあります。パパゲーノの実践知を全て公開し、他の事業所も真似できるようにしていきます。
2025年3月には書籍「生成AIで変わる障害者支援の新しい形 ソーシャルワーク4.0」を出版しました。直近も、支援員入社時の「パーパス研修」「情報セキュリティ研修」「生成AI活用研修」を公開しています。
2026年6月頃にも、支援現場のDXに関する新しい書籍の出版を予定してます。
戦略②【拡大】:AHCグループ132拠点を足がかりに
フェーズ1として、AHCグループ内の福祉事業所93拠点、介護事業所33拠点への「AI支援さん」全面展開。フェーズ2では、AHCグループでの成功事例を実績に、外部市場へ本格展開します。就労継続支援B型だけでも全国に1.5〜1.8万事業所ほどあります。福祉・介護の支援現場でAIを手軽に使いDXを進めることを目指します。

戦略③【影響】:日本の福祉政策を動かす
全国規模で収集したデータを分析し、「DXが支援の質をどう向上させるか」をエビデンスベースで実証。厚生労働省や地方自治体との連携を深め、現場の実践に基づいた制度設計を提言します。
「パパゲーノ・モデル」が、新しい時代の福祉の基準や参考事例となることを目指します。ファーストペンギンとして僕たちは先端事例の創出と形式知化に挑み続けます。

「リカバリーの社会実装」というソーシャルワークそのものが経営哲学
僕たちの事業は、単なるビジネスの拡大を目指すものではありません。「リカバリーの社会実装」というソーシャルワークそのものの実践者です。

以上の戦略をもって、僕たちは、世界の進行方向を「リカバリー」へと近づけていきます。
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※スライド資料はGoogleのNotebookLMでまとめたものです
