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銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十五話(最終回) わたしをバトルに連れてって

銀河フェニックス物語 総目次
第三十話(1)(2)(3)(4)(5)(6
第三十五話 まとめ読み版

 俺は一つだけ思い出した。
「白魔に追いつくあたりから、世界が白く輝いて、幸せだった」
「幸せ?」
「人生サイコーって感じ」
「全能感、多幸感、恍惚感か。おそらく、脳内物質の放出が起きてゾーンという感覚に入ったんだろう」
「どうすりゃそこに入れんだよ? それが知りてぇんだよ、俺は」
 
「ティリーさんがトリガーになったんじゃないのか?」
「違う」
「御台は、彼女がお前を救うと言っていた」
「違うっ!」
 俺は思いっきり首を振り、机をたたいて否定した。

「これから今日のバトルの映像を送る。何かをつかむヒントになるかも知れん」
「ありがとよ」

 アレグロがくれた映像を見る。
 撮影部隊がいろいろな角度から撮影した動画を、スタートからゴールまで一本に編集してあった。

 白魔は速いな。
 船のセッティングも上手いのだろう。マウグルアのバランスがいい。ライン取りも無駄がない。
 レーシングチームのオファーがあっただけのことはある。

 スタートの辺りの飛ばしは全て覚えている。

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 初速の馬力はマウグルアのがある。先に行かせた。

 俺はどこで追い越しをかけるかシミュレートしながら飛ばした。想定より白魔が速かった。序盤に先行させ過ぎた。
 申し訳ねぇが、ティリーさんにきついGをかけちまった。

 小惑星帯から最後のコーナーへ向かう。
 この辺りから俺の記憶はあやふやだ。

 凄いな、この俺の飛ばしの軌跡は。ティリーさん乗せてるのに危ねぇじゃねぇかよ。
 狭い小惑星の間をこすりもせず、よくこのスピードで飛びきったな。自分で言うのも変だが、人間技じゃねぇぞ。俺の師匠、『超速』カーペンターのテッグレスでのレースと感じが似てる。
 もう一度同じように飛べ、と言われてもできる気がしねぇ。

 
 ハゲタカ大尉と対戦した時もそうだった。
 大事なところで俺の記憶が欠落してる。
  
 久しぶりだ。あの境地に入ったのは。
 エースとバトルをした時ですら、ああはいかなかった。
 フローラと飛んだとき以来だ・・・。

 わからねぇ。

 いや、わかってる。俺の感覚は知っている。
 それを俺の頭が全身全霊で拒否している。

 アレグロが「ティリーさんがトリガーになったんじゃないのか?」と指摘した瞬間、俺ははじかれるように否定した。

 けど、俺は無意識のうちにティリーさんに言っちまった。
「ずっと一緒に飛んでくれ」と。

 フローラの時と同じだ。『あの感覚』が助手席と共有される。船でつながる。

 アレグロは何と言っていた。語彙力の足りない俺の代わりに言語化した。全能感、多幸感、恍惚感。それだ。

s22横顔笑顔カラー

 やべぇ、ティリーさんを俺のものにしてぇ。

 ティリーさんと一緒に飛ばしてぇ。
 ティリーさんに今すぐ会いてぇ。触れてぇ。

 『あの感覚』への欲情とティリーさんを独占したいって考えがぐちゃぐちゃに混じり合わさって、汚ねぇ絵の具みたいになってやがる。

 頭を冷やせ。

 わかってる。ティリーさんとはつきあえねぇ。
 そもそもティリーさんは、人殺しの俺に恐怖と嫌悪を抱いている。
 軍隊を持たないアンタレス人だぜ。俺が現役の連邦軍人だって知ったらどんな顔をするだろう。
 いや、言う訳にいかねぇんだ。俺が軍人で特命諜報部員ってことは。

 それだけじゃねぇ。
 褒められたもんじゃねぇ俺の過去。

 どうしたってティリーさんとつきあうのは無理だってこと。わかってるじゃねぇか。

 いいじゃねぇか。俺にはフローラがいる。

フローラとティリー

 俺は特定の女性とはつきあわねぇ主義。それで困ったことはねぇ。

 ティリーさんはバトルに付き合ってくれる女友だちだ。 
 一緒に飛んでくれればそれでいい。
 他の男とつきあわないでくれていたら、それ以上は望まねぇよ。

 俺は毛布を頭からひっかぶった。
 (おしまい) 第三十六話「クラスメイトと秘密の会話」へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」