銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十五話(最終回) わたしをバトルに連れてって
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・第三十五話 まとめ読み版
俺は一つだけ思い出した。
「白魔に追いつくあたりから、世界が白く輝いて、幸せだった」
「幸せ?」
「人生サイコーって感じ」
「全能感、多幸感、恍惚感か。おそらく、脳内物質の放出が起きてゾーンという感覚に入ったんだろう」
「どうすりゃそこに入れんだよ? それが知りてぇんだよ、俺は」
「ティリーさんがトリガーになったんじゃないのか?」
「違う」
「御台は、彼女がお前を救うと言っていた」
「違うっ!」
俺は思いっきり首を振り、机をたたいて否定した。
「これから今日のバトルの映像を送る。何かをつかむヒントになるかも知れん」
「ありがとよ」
*
アレグロがくれた映像を見る。
撮影部隊がいろいろな角度から撮影した動画を、スタートからゴールまで一本に編集してあった。
白魔は速いな。
船のセッティングも上手いのだろう。マウグルアのバランスがいい。ライン取りも無駄がない。
レーシングチームのオファーがあっただけのことはある。
スタートの辺りの飛ばしは全て覚えている。

初速の馬力はマウグルアのがある。先に行かせた。
俺はどこで追い越しをかけるかシミュレートしながら飛ばした。想定より白魔が速かった。序盤に先行させ過ぎた。
申し訳ねぇが、ティリーさんにきついGをかけちまった。
小惑星帯から最後のコーナーへ向かう。
この辺りから俺の記憶はあやふやだ。
凄いな、この俺の飛ばしの軌跡は。ティリーさん乗せてるのに危ねぇじゃねぇかよ。
狭い小惑星の間をこすりもせず、よくこのスピードで飛びきったな。自分で言うのも変だが、人間技じゃねぇぞ。俺の師匠、『超速』カーペンターのテッグレスでのレースと感じが似てる。
もう一度同じように飛べ、と言われてもできる気がしねぇ。
ハゲタカ大尉と対戦した時もそうだった。
大事なところで俺の記憶が欠落してる。
久しぶりだ。あの境地に入ったのは。
エースとバトルをした時ですら、ああはいかなかった。
フローラと飛んだとき以来だ・・・。
*
わからねぇ。
いや、わかってる。俺の感覚は知っている。
それを俺の頭が全身全霊で拒否している。
アレグロが「ティリーさんがトリガーになったんじゃないのか?」と指摘した瞬間、俺ははじかれるように否定した。
けど、俺は無意識のうちにティリーさんに言っちまった。
「ずっと一緒に飛んでくれ」と。
フローラの時と同じだ。『あの感覚』が助手席と共有される。船でつながる。
アレグロは何と言っていた。語彙力の足りない俺の代わりに言語化した。全能感、多幸感、恍惚感。それだ。

やべぇ、ティリーさんを俺のものにしてぇ。
ティリーさんと一緒に飛ばしてぇ。
ティリーさんに今すぐ会いてぇ。触れてぇ。
『あの感覚』への欲情とティリーさんを独占したいって考えがぐちゃぐちゃに混じり合わさって、汚ねぇ絵の具みたいになってやがる。
頭を冷やせ。
わかってる。ティリーさんとはつきあえねぇ。
そもそもティリーさんは、人殺しの俺に恐怖と嫌悪を抱いている。
軍隊を持たないアンタレス人だぜ。俺が現役の連邦軍人だって知ったらどんな顔をするだろう。
いや、言う訳にいかねぇんだ。俺が軍人で特命諜報部員ってことは。
それだけじゃねぇ。
褒められたもんじゃねぇ俺の過去。
どうしたってティリーさんとつきあうのは無理だってこと。わかってるじゃねぇか。
いいじゃねぇか。俺にはフローラがいる。

俺は特定の女性とはつきあわねぇ主義。それで困ったことはねぇ。
ティリーさんはバトルに付き合ってくれる女友だちだ。
一緒に飛んでくれればそれでいい。
他の男とつきあわないでくれていたら、それ以上は望まねぇよ。
俺は毛布を頭からひっかぶった。
(おしまい) 第三十六話「クラスメイトと秘密の会話」へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」