銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話(16) 恋の嫉妬と仕事の妬み
・第一話のスタート版
・第三十話 まとめ読み版① ② (11)(12)(13)(14)(15)
「あいつらがアリオロンの盗人ちゃんかよ。誰もいなくなるのを待って火事場泥棒ってか」
敵ながら、効率いい仕事だ。
年中稼働している防犯システムがワトキンスの要求で切れていて、しかも、仕事途中で社員が避難したから、普段は三重のロッカーの鍵も今は暗証番号のみだ。
「レイター、この窃盗犯を捕まえてくれ。ワトキンスはアリオロンと連携している。彼らの目的がわかった」
「あん?」

「フイールの技術を盗み、XKZ液体爆弾の制御に応用するつもりだ。フイールの非公開技術を使えば、爆破時間の調整ができる」
使い勝手のいい液体爆弾が作れるってことかよ。
「資料を持ち出されたら、厄介だな。こいつは特別手当をはずんでもらわねぇと」
俺の要求をスルーして、アーサーは続けた。
「ワトキンスは現在無職。アリオロンに亡命して、液体爆弾開発のためXKZの研究を続けるつもりなのだろう。アリオロンの工作員が七階で情報を入手したら、ワトキンスと合流し逃亡する手筈とみられる」
「ってことは、泥棒ちゃんが資料を盗み出すまでは、ワトキンスは爆破しねぇな」
「安心はできない。ワトキンスが勝手にXKZを起爆させる可能性はある」
「んなことしたら、味方もろとも死ぬぜ?」

「ワトキンスは、興奮し精神不安定な状態だ。死んでも構わないと考えて、衝動的に他人を巻き込む恐れがある。中の人質が彼の機嫌を損ねないことを祈るのみだ」
「まじかよ」
ティリーさんは、すぐに地雷を踏むぞ。
* *
サブリナは爪を噛んでいた。落ち着かないときの癖だ。

警察は公式に発表していないけれど、情報ネットワークのまとめサイトによれば、どうやら、立てこもりの犯人はライバル社の元研究員ノア・ワトキンス氏。
ワトキンス氏はフイールの開発者ロットリンダ研究員を、産業スパイと告発しているようだ。
情報が無いと不安。
でも、いくら情報があっても今の自分には何もできない。
その時、誰かがフェニックス号の居間に入ってきた。レイターさんが帰ってきたのかと振り向いた。
「サブリナ」
驚いた。
そこにいたのは、彼氏のジョンだった。

「ジョン?! どうして?」
「どうしてじゃないよ。君がフェニックス号にいるとレイターから聞いて、飛んできたんだ。どうして君は、僕に連絡を入れてくれないんだ。僕の通信も無視して」
わたしはあわてた。
「だって、あなた、きょうは授賞式でしょ」
時計を見る。ちょうど式が始まる時間だ。
「サパライアン所長に頼んできたから大丈夫だよ。式場とここヨマ星系が近くてよかった」
のんびりとした笑顔がわたしをいらつかせる。研究所のサパライアン所長はジョンの上司。

でも、この賞はジョンのものだ。
「この授賞式がどれほど大切か、わかってないの?」
ジョンは、浮世離れしている。
きょうは若手研究者の登竜門、ザルダック財団賞の授賞式だ。
ジョンが見つけたバローネ理論がその大賞に選ばれたのだ。
授賞式にはマスコミもたくさんくる。
そこで語った抱負が記事になり、注目され、さらに大きな賞へと結びついていく。
世界的権威のキンドレール賞だって、狙えるかも知れない。ジョンにとっては、この先の人生がかかった大事な日だ、というのに。
「ジョンが、学生時代から続けてきた研究が世界に認められたのよ」
ジョンは緊張しながらも、きょうを楽しみにしていた。その晴れ舞台を、サパライアン所長に渡してしまった。
「でも、サブリナの方が大事だよ」
だから、恋は嫌なのだ。
人生を踏み外す。 (17)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」