銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話(17) 恋の嫉妬と仕事の妬み
・第一話のスタート版
・第三十話 まとめ読み版① ② (11)(12)(13)(14)(15)(16)
大人になって家を出たわたしは、何度も母に言った。
「父とは、別れなさいよ。わたしと一緒に暮らそう」
母は、困った顔でわたしに言った。
「サブリナ、わたしはやっぱり、あの人のことが好きなのよ」
暴力による支配は愛ではない、といくら伝えても母は理解しなかった。母は父に尽くすことに生きがいを感じていた。
恋は盲目、とはよく言ったものだ。
この世界に男性は沢山いるのに、なぜあの父を好きだ、と言うのかわたしにはわからない。
母は愚かだ。
わたしは父の側に立ちたい。愛されれば支配する側になれる。
愛したら人は負けるのだ。
正常な判断ができなくなって、目の前のジョンのように、人生の大事なチャンスすら、棒に振ってしまう。
わたしは後悔していた。
きちんとジョンに連絡を取らなかったことに。
「わたしは大丈夫だから、心配しないで」と、一言声をかけておけばよかったのだ。
わたしとしたことが、こんな簡単な選択を誤った。
それにしても、レイターさんはお節介だ。
今日の授賞式がジョンにとってどれだけ大切か、あの人はわかっていた。わたしたちが祝勝会を開くことも知っていたのだ。
「レイターさんが、ジョンに知らせなければよかったのに」

「どうしてそんなことを言うんだい?」
ジョンが小さな目を見開く。
「だって、わたしは怪我もしていないし、立てこもりに遭ったわけでもないのよ。人質に取られているのはティリー先輩で、ジョンが来る意味がないわ。ジョンの将来にとって、人生にとって大事な授賞式なのよ。比較したらどっちが大事か考えるまでもないわ」
わたしは感情的になって声を荒げた。
「サブリナ、君はいつも、正しい答えを出そうとする」

「そうよ。間違ってはいけないのよ」
間違った選択をしたら、父にぶたれてしまう。
*
ジョンと出会ったのは、新入社員の頃だった。
たまたま、社員食堂で隣の席になった。わたしは本社で働くほとんどの人の顔と役職を覚えている。
ジョン先輩は研究所の有望株だ。わたしからあいさつした。
「新入社員のサブリナです。ジョン先輩はすごいですね、今年も早々と特許を取られて」

情報も集めているから雑談も得意だ。
わたしは近くにいる同僚は不愉快にさせるけれど、少し距離があるお客さまや上司からは好感を持たれる。
何度かあいさつするうちに、気がついた。ジョン先輩がわたしのことを好きだということに。
わたしは情報を集約し計算する。
先輩と付き合うことのメリットを。そして、デメリットと比較する。
容姿は冴えないけれど、そこはわたしは気にしない。彼には才能がある。のんびりし過ぎているけれど、わたしが振り付ければ、出世もまちがいない。
いい人だ。優しく、そして、何よりわたしを愛してくれる。
愛される側が決定権をにぎる。
父のように、人生をコントロールする側になれる。
ジョン先輩を彼氏にする選択は、正解だ。
告白したのは、わたしからだった。
「先輩、わたしとつきあって下さいませんか?」
ジョンはまるでプロポーズのような返答をした。
「ぼ、僕は君を幸せにすることを誓うよ」
週末にはデートをした。
ジョンは気の利いたお店も何も知らなかった。
わたしは、自分の行きたい映画やイベントにジョンを誘った。彼は興味があろうがなかろうが、何一つ文句を言わず、笑顔でついてくる。
都合のいい男性だ。 (18)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」