銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話(18) 恋の嫉妬と仕事の妬み
・第一話のスタート版
・第三十話 まとめ読み版① ② (11)(12)(13)(14)(15)(16)(17)
つきあわせたお礼に、わたしはジョンの家でご飯を作った。料理作りはわたしの趣味のようなものだ。
彼は、何でも美味しそうに食べた。
わたしが支配する側。
ジョンと過ごす、計算の必要がない時間は楽しかった。
ジョンは宇宙船レースを観るのが好きだった。つき合って見ているうちに面白さにハマった。
就職活動の際、わたしはクロノスのほかに、ベンチャー企業のライネッツ・スチュワート社から内定をもらっていた。

若き経営者が生み出す、最先端の情報産業は面白そうだった。
けれど、わたしは計算した結果、クロノスへの就職を選択した。
人生を預けるにはスチュワート社は事業の成否にムラがあり危険だ。でも、思い入れはある。
そんな縁から、宇宙船のS1レースではチーム・スチュワートの船を応援した。
*
「サブリナ、君はいつも、正しい答えを出そうとする」
ジョンの言葉に、否定的なニュアンスが含まれていた。こんなことは初めてだった。
わたしは反論する。
「そうよ。間違ってはいけないのよ」

一生懸命に情報を集めて、正しい解を導き出せば、人生に幸せが待っているはずなのだ。DV男はきちんと排除する。不安定要素の多い就職先も避ける。
「わたしは今回、あなたの将来の邪魔になった。これは、誤まった選択だったわ」
「邪魔じゃないよ、サブリナ。僕が自分でここへ来たかったんだ。だって、君はとっても怖がりじゃないか。サブリナを一人にしておきたくなかった。この選択は、僕の中では正解だ」
「・・・」
ジョンが来るまでの間、わたしは恐怖で何度も嘔吐した。
ジョンは気がついていた。
わたしが極度の心配性で、耐えられないほどの不安に陥っていることに。
* *
さて、あいつらをどうするか。
階段をのぼりながらレイターは動画を見ていた。
コッペリ社七階の開発管理課で作業を続けるアリオロンの盗人。
大柄と小柄の男二人組。全身を対刃防弾スーツで覆って、コメディアンのコンビみたいだ。
頭部はヘルメット仕様。銃も刃物も致命傷は負わせられねぇな。肉弾戦か。

アーサーの奴は、窃盗犯を捕まえろって言ってたが、確実に仕留めねぇと証拠隠滅のためにワトキンスに爆破命令を出す恐れがある。
ティリーさんを守るためには、殺すしかねぇ。
身体のでかい方は見張りだ。もう一人のチビがロッカーの暗証番号キーを解読して開けようとしている。
首絞めてる時間的余裕はねぇな。
一撃で首の骨を折る。楽しい仕事じゃねぇが、しょうがねぇ。
しかし、二人同時は無理だ。見ればわかる。訓練された動き。あいつらだって素人じゃねぇんだ。
まず、見張りを殺る。
あいつらが俺に気付いてないアドバンテージを、最大限まで生かさせてもらうぜ。
*
七階の構造は頭に入ってる。
さっき案内された奥の会議室の横に、あいつらの視界に入らないドアがある。
防犯システムが切れてるお陰で無施錠だ。音を立てずに部屋へ忍び込む。しゃがみ込み、オフィスの机で身を隠して近づく。
二人を目視で確認した。もう少しでロッカーの鍵が開きそうだ。時間がねぇ。
俺は机の影に隠れて、腕に着けた携帯通信機の短縮ダイヤルを押した。

PPPPPP・・・
俺の二メートル先にある卓上通信機の呼び出し音が、大音量で鳴り出した。二人がビクッと音のなる方を振り向く。
俺の想定通り、オフィスの中をロボットが近づいてきた。さっき、俺とサブリナさんを案内した旧式の受付ロボットだ。
人工アームで机の上の通信機の受話スイッチを押す。
「はい、こちらコッペリ社でございます。現在、担当者は席を外しております」
盗人の二人は、自分の仕事に戻った。
俺は続けざまに通信機を操作する。
受付ロボットの近くで呼び出し音が一斉に鳴り出す。ロボットが一つずつ通信機をオンにして対応する。
俺がループで架け続けているから、切っても切っても鳴りやまない。
PPPPPP・・・。PPPPPP・・・。
「はいこちら、コッペリ社でございます」
PPPPPP・・・。
盗人たちも様子がおかしいことに気づいた。
見張りの大男がゆっくりと受付ロボットに近づく。もう一人のチビは背中を向けて解錠作業に集中している。
さあ、大男が俺の間合いに入った。
男の背後から飛び出し、大男の太い首に腕を巻きつけ、口をふさぐ。
PPPPPP・・・。
着信音が隠れ蓑になる。チビの奴は作業に必死で気付かない。俺のシナリオ通りだ。
とどめを刺すため、力を入れる。その時、 (19)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」