銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話(19) 恋の嫉妬と仕事の妬み
・第一話のスタート版
・第三十話 まとめ読み版① ② (11)(12)(13)(14)(15)(16)(17)(18)
「レイター、殺すな」
アーサーの声が耳の無線機から聞こえた。
俺の身体が一瞬固まる。
敵はその隙を見逃さなかった。一気に反撃してきた。
俺の完璧なシナリオが崩れる。不意打ち失敗。次のシナリオへ移行だ。
ちっ。
大男の奴、想定より力が強い。俺の腕を引きはがしにかかる。
アーサーの奴が余計な情報を俺に入れる。

「ワトキンスと彼らの通信は遮断した。爆破指示の恐れはない。安心して捕まえろ」
安心じゃねえよ。こいつらは俺を殺す気だ。
接近戦、大男の馬鹿力で俺の優位性が崩れる。
バスッ。
胸に強烈な痛みと衝撃が走った。肺が潰れる。息ができねぇ。
争いに気付いたもう一人のチビが、銃で俺を撃った。この戦闘服は防弾仕様だ。死にはしねぇが、銃弾は人力を上回る破壊力だ。
意識が飛ばねぇようにするので精一杯だ。
俺の力がゆるむ。形成が逆転された。
怪力大男が両手で俺の首を絞めにきた。すげえ握力。息ができねぇ。目の奥がチカチカする。やべえ。
もう一人のチビが再度、背後から俺を撃とうと狙ってやがる。もう一発撃たれたら終わりだ。俺は間違いなくこの怪力大男に絞め殺される。
苦しい。のどがつぶされる。脳に血が回らねぇ。
右手で相手の指の隙間を探す。
左手で腰に付けた電子鞭を振るう。
叩くんじゃない、大男の両足首に巻き付けて引っ張る。投げ縄の要領。自動巻き取りモードにしてある。電子鞭から手を離す。
いくら怪力でも機械の力には勝てねぇ。
大男の右足と左足が、くっつくようにしてそろい、バランスを崩す。
今だ。大男の指の隙間に俺の指をねじ込む。隊長のバルダンなら指をつかむだけで人を殺せる。
大男の奴、不安定な体勢になりながら、さらに締めてきた。俺の指がちぎれそうだ。一体どこからこのパワーが出てきやがる。
銃を持ったチビが、あわてて援護射撃した。
俺はぐっと力を入れ敵の薬指一本を引きはがしながら、身体の軸を回転させた。くるりと俺と大男の向きを変える。
バスッ。
大男が盾となり、銃弾が奴の背中に当たる。
「ぐあっ」
同時に、思いっきり大男の首筋に側面から手刀をあてる。脳震とうを起こして大きな体が倒れる。
はあ、はあ。

怪力大男の足に巻き付いた電子鞭は、簡単にははずれねぇ。
一人目、捕獲終了。
ロッカーが開く音がした。
やべっ。あわてて振り向く。
デジタルペーパーを手にしたチビが走り出した。まずい、フイールの機密資料を取り返さねぇと。
速い。
大男はパワー。チビはスピードか。
チビは足に履いたブースターブーツで空中を移動始めた。
銃でチビの背中を撃つ。衝撃は与えたが、あいつも訓練されている。資料を落としたりしねぇ。
このまま七階の窓をぶち破って外へ飛び出す気だ。
チビが窓に飛び込む。
やべぇ。間に合わねぇ。逃げられる。俺の特別手当が・・・。
* *
コッペリ社の十五階で、ティリーは、立てこもり犯ワトキンスの話を聞かされていた。
爆発的に売れた速乾洗剤フイールは、ワトキンスさんの研究が盗まれて作られたものだった。
ワトキンスさんが怒るのも無理はない。
「お気持ちはわかります。でも、このやり方はよくないと思います」

「うるさい!」
怒鳴られてわたしは肩をすくめた。
つい、本音を言ってしまった。でも、こんな立てこもりじゃなくて、人に迷惑をかけない方法というものがあるはずだ。
ワトキンスさんが、わたしに顔を近づけた。こめかみに青筋が浮かんでいる。
「お前、やり方が良くないと言ったな、わしが何度コッペリ社に抗議文を送ったと思ってるんだ。どれだけ言っても、当方に問題はない、の一点張りだ。直接出向いてみれば、そこの若造に木で鼻をくくったような対応をされて、わしの悔しさがわかるか!」
ワトキンスさんが怒鳴りながら銃を人質の若者に向けた。
「すみません」
男性社員は震えて下を向いた。まずい、今にも引き金を引きそうだ。
やり方が良くない、と言ってしまったわたしのせいだ。何とかしなくては。
「け、警察に訴えてみてはどうでしょうか?」
「被害届は出したが、受理されなかったんだ」
「じゃあ、メディアに告発してみるとか」
「告発状をマスコミ各社に送った。だが、誰も取り上げてくれない。他にどうしろというんだ?」
経済スパイ法違反の事件だと言うのに、警察もマスコミも動かなかっただなんてひどすぎる。
その時、いいアイデアを思いついた。 (20)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」