銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (46)
・第一話のまとめ読み①~(10) ②~(20) ③~(30) ④~(40)
・ (41) (42) (43) (44) (45)
神殿の隠し小部屋の奥にエレベーターがある。
これが神殿から外へ出る最後のチャンスだ。
アドゥールに背を向けて歩きながらオルダイは頭を振った。
俺のやっていることは間違っているのか。
アドゥールの声が頭にこびりついている。「重力制御の管理権を握って事態を混乱させようとしている」と。
その通りだ。この先の策もなく、制御装置のパスワードを変更した。
アドゥールはアリオロンと手を組んで一律税を回避すると言っていた。民の怒りは急速におさまるだろう。
だが、それでいいのか?
エレベーターのドアの横にあるスイッチを押した。
教皇陛下専用だ。
だから普段は誰も使わない。これに乗れば一気に下へ降りられる。
ドアが開いた。レイターと二人で飛び乗る。
レイターが行き先階を設定する。お、おい。操作が間違っている。
「お前、それは上昇ボタンだ」
慌てて止めようとした俺をあいつはゆっくり制した。
「折角ここまで来たんだから、神サマ拝んで帰ろうぜ」

「な、何を言っているんだ? この退路をふさがれたら終わりだぞ」
エレベーターが急上昇しはじめた。
途中から壁面が透明な硬化ガラスになり外の下界の様子が見えた。
群衆が神殿を包囲している。
いや、神殿だけじゃない。一ノ丸、二ノ丸を超えてどこまでも続いている。
エレベーターのドアが開いた。
その先は教皇のフロアー。
このまま下りのボタンを押して降りるんだ。
レイターは迷いもなく教皇の執務室へと入っていく。
俺は後に続いた。
俺はどうしてこいつを止めないんだろう?
こいつが教皇と対峙した時、俺はどうするのだろう?
まずい。判断力が落ちている。
部屋の中心へと足を進める。
中央電算室とつながったいくつものパイプが床と天井を貫いている。
その横にあるコントロールパネルの前に、白い髭をたくわえた教皇が座っておられた。
われわれに気づかないほど一心不乱にキーを叩いていらっしゃる。
レイターが声をかけた。
「じいさん。忙しそうだね」
教皇は顔を上げずにつぶやいた。
「どうしても重力制御装置がコントロールできない」
「いくらやっても無駄だぜ。パスワード変更しちまったから」
教皇は手を止めてゆっくりと顔をあげた。
「お主、今、何と言った?」
「聞こえてただろ」
教皇の視線が俺に向いた。
「オルダイ・バルボア、そちは近衛兵の隊長であったな。今、何が起きている?」
教皇には逆らえない。
「おそれながら教皇陛下。重力制御装置の管理は現在、銀河連邦に移っております」

「それが何を意味するか、そちならわかっておろう。この星の崩壊だ」
「そうかな? この星が崩壊するか、賭けるかい?」
レイターが教皇に言った。
「そちは銀河連邦の者か」
「そう。俺はレイター・フェニックス。あんたがこの星の運命を司る神様だか知れねぇが、俺は崩壊しねぇ方に賭けるぜ」
こいつ、教皇陛下に対し口のきき方が無礼だ。
教皇が俺を見た。
「オルダイ、そちは国民議会の開催を求めて近衛隊長を辞めたのであったな」
「はっ」
陛下がご存じだったとは。俺は恐縮して頭を下げた。
「我々ラール王室が、なぜ、議会を置かずやってきたとそち等は思う?」
レイターが答えた。
「独裁がしたかった、って訳じゃなさそうだな」
「絶対王政のこの星にもかつて議会があったのだ」
教皇の言葉に俺は驚いた。
初めて聞く話だった。
歴史の授業ではラールの神すなわちラール王室による統治がこの星の始まりと教わった。
高い技術力を持つ我々の祖先は、元々、衛星に住んでいた。
だが、彗星が激突することがわかり、科学者たちが重力制御の技術を開発して惑星ラールシータへと移住した。
そして、重力制御装置を扱える者たちは、この星を司るラールの神とあがめられこの星を支配した。 (47)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」