銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (47)
・第一話のまとめ読み①~(10) ②~(20) ③~(30) ④~(40)
・ (41) (42) (43) (44) (45) (46)
教皇が我々を見つめる。
「その昔、衛星からの移住後に発足したラールシータ政府は、銀河連邦とアリオロン同盟の両方から加盟を求められた。我らの祖先の議会は高重力制御という独自の技術を持つラールシータはどちらにも属さぬことが賢明と考え、永世中立星を宣言したのだ」
「へ~ぇ。議会がちゃんと機能してたんだ」
レイターが相槌を打つ。
「だが、その後も、銀河連邦もアリオロン同盟も多額の資金援助をちらつかせて加盟を迫ってきた。我々の技術を狙っていることは明白だ。わかっていても、目先の利益に目がくらむものだ。どちらについたら有利か、高い金額を得られるか、考えるものが出てくる。議会は混乱した。支援は甘い毒薬。その誘惑を断ち切り、この星の自主自立を維持するために我々の祖先は議会を廃止し、全ての決定権をラール王室に一本化したのだ」

「ふ~ん。ラール信教は重力制御の技術を守るための統治の仕組みって訳か」
レイターは態度は悪いが頭は悪くない。
連邦軍の皇宮警備は政治学や社会学もきっちり仕込まれているのだろう。
我々は今も重力制御技術の根幹を公開していない。
「しかし、宇宙一世紀も経てば綻びもでてくる。世界中で高重力技術も進歩する。わが星の経済も厳しくなった」
「一律税は不満を誘ったな」
「読み誤ったのだ。この国難を全てのラールの民で乗り切ろうという意図であった。決して弱者を切り捨てようというものではなかった。だが民には理解されなかった」
その説明は我々に届いていない。
「国民議会で決めればここまで不満はたまらなかったんじゃねぇの」
レイターは俺が考えていることと同じことを口にした。
「議会が復活すれば、また、銀河連邦とアリオロン同盟の綱引きに弄ばれるのだ」
「そうとも限らねぇ。簡単だよ、王室は拒否権を持てばいいんだ。内政は議会に任せて、外交は王室がやってもいいし。やり方はいくらでもある」
教皇が目を細めてレイターを見た。
「俺は連邦の皇宮警備やってたからいろいろ王室見たけど、国民が信じられねぇ王様ってのはホントかわいそうだな」
トントン。
部屋をノックする音と同時に廊下の奥のドアが開いた。
「兄殿、話があるのじゃ」
ガーディ王弟の声だ。
どうする? 俺はレイターを見た。
あいつは俺にウインクしながら教皇の後方に下がって直立不動のポーズを取った。
おれもあわてて横に並ぶ。二人で教皇の護衛のフリをして気配を消した。

「入りなさい」
「兄殿、重力制御装置に異常でも発生したのか?」
入ってきたのはガーディア社の社長、ガーディ王弟だった。
「原因はわかった」
重力制御装置の管理は教皇の仕事だ。
「それは良かった」
ガーディ王弟はタブレットペーパーを取り出した。
「兄殿、急ぎで済まぬが、この勅令にサインを貰えぬか」

文書を読む教皇の顔色が変わった。
「そなた何を考えておる。アリオロン同盟に加盟すると言うのか」
「王室の円卓会議で既に決議をしたのじゃ。後は兄殿のサインだけ」
先ほどの円卓会議の決議だ。
「ガーディ、そなたもわかっておろう。この星は永世中立で成り立っておることを」
「わかっておらぬのは兄殿じゃ。もはや、高重力産業だけではこの星はやっていけぬ。兄殿はしょせん技術者じゃ」
「アリオロンからはどのような条件を持ちかけられたのだ?」
「金銭的な援助じゃ。兄殿、外を見てくれ、もう、我々王室一族だけではこの星の統治は無理じゃ。アリオロンの支援を受けて一律税を廃止する。さすれば民も納得する」
レイターが一歩前に出た。
「頼みがあんだけど」 (48)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」