フランスのホストファミリーの家までの坂道を、26年ぶりに登って気づいたこと
2025年5月、アメリカ人の夫とともに、1ヶ月かけてフランスを旅しています。
この旅の中で、私にはどうしても行きたい場所があった。それは、26年前に語学留学をしていたアルプスの麓の町・シャンベリー。そして、毎日30分かけて山を登って帰宅していた、ホームステイ先の家までの坂道だ。
Googleマップで見ても確信が持てなかった記憶は、実際に歩いてみると不思議なほど鮮明に蘇った。とっくに忘れていたと思っていた古い記憶が一気に押し寄せてきた、そんな一日の記録。
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26年ぶりにホームステイ先への坂道を登る
私は26年前、スイスとイタリアの国境に近いアルプスの麓の町シャンベリーに、フランス語学留学で5ヶ月間滞在していた。今回、その懐かしい街を再び訪れるためにシャンベリーにやってきた。
今回、シャンベリーで夫にどうしても見せたかった景色が、私が26年前にホームステイしていた家までの道。残念ながら、ホームステイ先の家庭そのものとは連絡が途絶えているけど、家がある場所を見に行きたかったのだ。
ホームステイ先は、丘の上にあった。朝は、ホストファザーかホストマザーが車で学校まで送ってくれ、帰りは途中までバスに乗り、バスを降りてから30分くらい歩いて山を登って家に帰るという日々。その景色を、死ぬまでにもう一回、見てみたかった。

バスを降りたら、この丘を登っていく。ひたすら30分、ずっと上り坂。





マウンテンバイクのおじさんに励まされる
二人で汗だくでゼーゼー言いながら歩いてると、後ろからマウンテンバイクに乗った陽気なおじさんがやってきて、
「おい頑張れよ!もうすぐお城だよ!俺なんかもう70歳だけど、こうして元気に自転車漕いでるんだから、あんたたち若いのはもっと頑張らないと!」
と言いながら、華麗に私たちを抜かしていった。

このお城、個人の家で一般公開してないので、26年前も一度も中に入ったことはない。毎日このお城を見ながら、「このお城が見えたら、もうすぐ家に着く!」と思いながら歩いていたことを思い出す。お城も、その背景の山も、26年前の思い出と変わらず美しかった。
26年前と変わらない場所、変わった場所
家の近くの牧草地には、26年前には羊がいた。羊を見ながら、「あの羊たちが見えたら、家はもうすぐそこ!」と思いながら毎日歩いていた。でも、残念ながらもう羊は飼われていないようで、いなかった。

ついにホストファミリーの家へ
このあたりからは古い記憶を頼りに、「確か、この芝の上を歩いたはず」と、毎日家に帰っていた道を思い出して歩く。

ホームステイしていた家は、googleマップのストリートビューで事前にチェックしていたが、どの家だったのか確証が持てなかった。でもこうして実際に毎日歩いていた道をたどると、「ああ、絶対にここだ!この家のこの部屋に住んでた」と明確に思い出し、いろんな記憶が蘇ってきた。


あの家族は、今もこの家に住んでるのかな。
いや、もう26年も経ったら子どもも巣立っただろうし、違う人が住んでるかも・・・
ピンポン押してみようかな、でもホストマザーの名前も覚えてないし・・・
と、結局勇気が出ず、そのまま静かに立ち去った。

当時、私がホームステイしていた家には、お父さんとお母さん、そして21歳の息子と12歳の娘がいた。娘は私に懐いてくれ、よくトランプで一緒に遊んだものだった。
ホストマザーの意外すぎる提案
帰り道の山登りについては、ホストマザーにこう言われていた。
「あの道はほとんどこの辺の住民の車しか通らないから、バスを降りたらヒッチハイクして、家まで乗せてもらったらいいのよ。もちろん他の場所ではヒッチハイクなんて勧めないけど、この道は大丈夫だから」

「え、外国でヒッチハイクなんて危ないんじゃないの・・・?」と内心思いつつ、23歳の純粋な私は、お母さんの言う通りに親指を突き上げて車を止めて、見知らぬ人に家まで送ってもらっていた。
今はどうかわからないけど、26年前はみんな親切に乗せてくれたし、危険な目に遭ったことも一度もない。天気がいい日は歩いたけど、雨の日や疲れている日は車をつかまえるようにしていた。

イタリア人男子とヒッチハイクを試みるも
そのうち、同じホストファミリーに、私と同い年くらいのイタリア人の男の子がやってきた。私は、先輩として彼にヒッチハイクのやり方を伝授しようとしたが、彼と二人で車を止めようとすると、何度やっても車が止まってくれないことに気づいた。
おそらく男女二人でヒッチハイクとなると、乗せる方も警戒するのだと思う。なのでその後編み出した方法は、彼を木陰に隠しておいて私一人で車を止め、止まってくれたら彼を呼び寄せ、一緒に乗り込むという方法でだった。(あの時の運転手さんたち、騙すつもりはなかったんです。ごめんなさい・・・)

リシャール(イタリア名は「リカルド」)という名前のイタリア人男子は、私が一緒じゃない日に一人でヒッチハイクに何度か挑戦したそうだ。でも、「男だと、なかなか乗せてくれる車がないんだ」と言って、そのうち諦めて毎日歩いて帰るようになった。

ここにいたから今の私がある
他にも、書ききれないほどたくさんの思い出がある。この景色を26年ぶりに見られて、忘れたくない記憶を思い出すことができて、良かった。
夫は「また26年後にもう一回来る?」と言っていたが、死ぬまでにまた来られるかな。アラフィフになった今、「この景色は死ぬまでにもう一回見られるだろうか」と旅先で思うことが多くなった気がする。
今回、昔住んでいた場所や通っていた学校を改めて訪れて、ここでの日々があったから今の自分がいるんだなと実感した。この場所でたくさんのいい友人と先生に出会い、この自然豊かな環境の中で、遊びの誘惑も一切なく勉強に打ち込むことができて、本当に幸せだったと今さらながら思った。

来る前は、「昔5ヶ月だけ住んでたとこになんて、行ってどうなるの」と思っていたけど、本当に来て良かった。自分がいかに幸せだったかを思い出し、ここで手に入れた経験、いただいたご恩を、今自分の周囲にいる方たちに少しでも返していきたいと思った。
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