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あなたは優しく噓をつく|第6話|「あなただけですよ」その言葉で2年を失った

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告白して振られた。

彼女を作る気はない。

結婚願望もない。

一人が楽。

誰とも付き合うつもりはない。

そう言われた。


じゃあ終わりだ。

普通ならそう思う。

私もそう思った。

でも終わらなかった。

毎日LINEは来る。

電話も来る。

食事にも誘われる。

社外研修に私が行くと聞けば、自分も立候補してついてくる。

振ったのはお前だよな?


本当に「一人が好き」なのか?

私にこんなにつきまとっておいて、

毎晩連絡よこしておいて、

一人で研修も行けないくせに、

全然「一人」じゃないよね!


何度もそう思った。

おかしい。これ、おかしいよ。

ちゃんとシグナル感じてたんだよ。


でもね。

人間って不思議なもので。

言葉より行動を信じるんだよ。

だから私は、

「彼女は作らないって言ったけど、きっと何か事情があるんだろうな」

って勝手に解釈した。

今思えば、

都合のいい解釈だった。

そうして1年が経ち、彼も新人ではなくなった。

私が教育係から外れると、今度は彼の下に新卒の女子がついた。

その女子が彼をロックオンした。


若い。

ゆるふわ系。

素直風。

私より10歳以上年下。

そりゃ勝てない。

私は面白くなかった。

でももっと面白くなかったのは、

彼の行動だった。



その女の子に付きまとわれて困っている。


そう私に相談してきた。

「アマノさん、どうしたらいいと思います?」

知らんがな。

嫌なら断ればいい。

そう思った。

彼のこの手の相談は毎晩続いた。


でも、変だ。

彼の相談内容がだんだんおかしな方向へ。

「その子が仕事の相談乗ってほしいというから、ご飯奢ってあげましたよ。偉いですか」

ってLINEがきたんだけど。

偉いのか?

とりあえず、いつものノリで返したけどさ。

「偉いです!後輩想いですね」

すると、

「電話していいですか」

なんだろ。電話とりましたよ。

すると、いかに彼女が仕事ができないかの愚痴。

そして、彼がどんなにフォローしているかという苦労話。

これ、私どう反応すれば良いのよ。


「あなたが優しいから、甘えているのでは?」

言ってやった。

すると彼は声を大にして「勘弁してくださいよ!」と。

私、もっと彼から彼女のことは何とも思っていないっていう言葉を聞きたかったから、焚きつけた。

「彼女はあなたのことが好きなのかもね」

「かまってほしいんだよ」

すると、彼。

「それって僕と付き合いたいってことですか」

何この反応。私、ショックだったけど、「そういうこと」って投げやりに返した。

「そんなの無理ですよ。休日にみなとみらいとか一緒に歩いてるところを誰かに見られたりでもしたら、耐えられません」


…え。


彼女が嫌、ではないんだ。

しかも、想像、具体的すぎんだろ。

「一人がいいから」でもないんだ…



「じゃあ、あなたもまんざらでもないのね?」

私が聞くと、彼は

「まんざらですよ!僕は一人がいいんで!」

と怒ったけれど。

だから私、

「それなら、彼女はあなたの優しさを好意と取っている可能性があるから、少し距離おいては?」

とアドバイスした。


「そうします!」


って、言ってたのに。


数日後。

私は見てしまった。




非常階段から二人でこそこそ出ていくのを。

なんで、エレベーター使わないの?ここ5階だよ?

昼休みになって、ランチに出かける社員が数名、

エレベーターのところに並んでいたけど、

全然乗れる人数よ?

なのに、二人でこそこそ。

非常階段へ消えていった。


エレベーターで降りた私。

少しエントランスで待ち伏せしてやった。

彼ら、非常階段口から回りを気にしながら出てきた。

私と目が合って、私、手を振ったんだ。


彼は軽く会釈したけど、

彼女は私を見るなり、彼を急かして

二人でランチに出かけて行ってしまった。


背後で同僚が

「アマノさん、ランチ?一緒にどう?」

と声かけてきた。


そうだよね。これが普通の反応じゃない?

同僚は居合わせた社員たちみんなに声かけた。

そうだよね。普通、こうなるよね。


その晩、彼からLINE。

ランチのことには一言も触れない。

私、”女”が出ちゃった。悔しくて。

「もう、私はあなたの教育係から離れているので、ご自身の部下をしっかり面倒見てあげてくださいね」

って返信した。


電話がきた。

だから聞いた。

「付きまとわれて困ってるのに、なんで二人でランチ行くの?」

すると彼は言った。

「僕、はめられたんですよ」

は?

10歳以上年下の新卒に?

お前何言ってんの?

って思った。

でも彼は本気だった。

いや。

本気でそう思い込みたかったんだと思う。

王子様型危険生物の特徴。

自分が選んだことを、

自分の責任にしない。

好かれたら嬉しい。

チヤホヤされたら嬉しい。

でも責任は負いたくない。

だから全部、

相手のせいになる。


ここで、私は目を覚ますべきだったんだ。

でも、できなかった。

彼が言ったから。

「こんなに毎晩連絡してるのに。そんな人、アマノさんだけですよ!」

あなたは特別って、言われちゃったから。

私。恋愛ゾンビのまま、結局彼を切れなかった。

そして迎えたバレンタイン。

私は手作りチョコを渡した。

最後の悪あがきだった。

去年は、高級チョコをあげた。

手作りより、本気度が伝わるって勘違いしてたんだ。

500万円貢いだダメ男の時の癖でね。

お金は愛情と比例するって思ってた。

それはさておき。

今回の手作りチョコは、

私の煮え切らない気持ちの表れだった。

チョコをあげて気持ちを断ち切る。

どうせ彼は振り向かないから

お金はあまりかけたくない。

でももし、少しのチャンスがあるのなら…

手作りに込めた想いが伝わればいい。

そんな思いでチョコを渡したバレンタイン。


人間ジャングルは奥が深い。

でも今ならわかる。

このジャングルを作ったのは彼だけじゃなかった。

私もせっせと木を植えていた。

恋愛ゾンビのまま。

自分の手で。

そして迎えたホワイトデー。

私はようやく、

そのジャングルから脱出することになる。

その話はまた今度。

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