ちょっと病院関係者に牽制しておきます。
(序盤の挨拶、自己紹介等省略)
彼女に関しては、貴院の持っている情報量は実はかなり制約されているはずです。
1.彼女の生育歴の重要な部分、特に父親が統合失調症の母親に対して繰り返し身体的暴力を振って、母親がそれに包丁で応戦したことすらあるという家庭環境の中で、いつ見かけ上の静寂な平和が破られて両親が深刻な身体的暴力を伴う喧嘩を始めるかわからないという基本的な安全感のない状況は、彼女にかすかな変化の兆候に対する過敏なまでの警戒心を形成して行ったはずです。
こうした(中井久夫のいう)分裂病親和的な微分回路的な認知を生得的なばかりか生育環境的にも発達させざるを得なかった状況は、彼女に統合失調症的な傾向を遺伝及び環境両方の側面から見て輻輳的かつ相互作用的に強化せざるを得なかったと思います。
第2は、彼女が福祉施設に入所している間に責任者から受けた過剰なパターナリズムに基づく深刻な虐待レベルのモラハラに彼女が4年間以上耐えたという事実を病院側はご存じないだろうということです。
彼女は 施設長に認めて欲しくて本当に毎日毎日頑張ったそうです。
しかし彼女のそうした涙ぐましいまでの努力はむしろ裏目に出続けました。
「あなたの天狗の鼻をへし折ってやらないとね」
「あなたの言うことはすべて間違っている」
「あたしの言う通りにしていれば、すべてはうまく行きます」
「私は、あなたのためのことをことを思って、言っているんですよ」
「ちょっと黙りさい。まずは私の言うことを最後まで聞きなさい」
「どうしてそんな服買うの?お金はもっと大事にしなさい。そんな服、20歳過ぎたら恥ずかしくて着られなくなるわよ。もっとシンプルでずっと着られる服を買いなさい」
施設長の最後の発言には私は絶句しました。
「あのさー、
女の子
ってさあ、
自分が若くてきれいでいられるのはいつまでかな?っていつも思って生きてると思うの。だから、今のうちに着られる服は今着とかないとって思うの、当然やろが。
わかってないなあ、そのオバハン管理者。
なんとも<はずれくじ>引いてたね。
福祉の世界にたまにいるんだよ、そのテの人。
自分は自分が正しい、あわれな利用者を正しい道に教え導くために必要なことを言ってるだけ、とマジに思ってる。
そういう人は滅多にいないんどね。
でも、そういう人に変われって言っても無理。
もし僕が当時、君と会っているカウンセラーだったとしたら、別の施設、紹介してます」
・・・電話の向こうで、彼女がわんわん泣き出したことは、言うまでもないですね。
そして、
軽い女?
ふざけんな
重すぎるっつーのー
軽い女?
ふざけんな
重すぎるっつーのー
軽い女?
ふざけんな
重すぎるっつーのー
軽い女?
ふざけんな
重すぎるっつーのー
と繰り返して歌い出す彼女。
「だって、女の子だもん!」
「だって、女の子だもん!」
「だって、女の子だもん!」
「だって、女の子だもん!」
「だって、女の子だもん!」
(リフレイン)
最後に彼女に贈った言葉。
君は、施設で大人しく「いい子」にしている、従順な子羊ではなかったんだろう。
むしろ、天真爛漫な、いきいきとした女の子だった。
みんなのヒロインだった。
(施設の劇で「シンデレラ」やったのは彼女だったらしい)
でも、それが「いじわるな継母」である施設管理者には嫉妬されたわけだ。
でも、君は、
立派な、メスライオン
だったんだと思う。
その気になれば、男を食って、生きていけるくらいの。
なお 私は、職業としては、精神科病院臨床経験も長い臨床心理士 ではありますが、彼女からは 料金を徴収してカウンセリングをしている関係ではありません。
つまり、一個人として、カウンセリング能力を持った人間が彼女と関わりを持っているということに過ぎず、「多重関係」には該当しないと思います。
実際 彼女に対しては、今後どのようにかかるかについて【プランA】と【プランB】を私の方から明確に提示いたしました。
つまり、
【プランA】 :
もし彼女が私とカウンセラーとクライエントとしての関係を望むのであれば、私は今後彼女に対して私情を持ち込むことはしない、それどころか、 例えば、もし彼女が今後 新しく若い彼氏を作りたくなったとすればそのことについて私は相談を受ける側にまわることを生きる張り合いとして引き受けることに徹するということを伝えています。もちろん その場合は 料金をいただくということになりますが。
【プランB】 :
これは 統合失調症や 自閉症という精神疾患に対しても十分な対処能力を持つ1個人としてのカウンセラーが、彼女が 精神障害者であるということを十分了解した上で個人的な関係を引き受け続けるという方向性です。
もちろん、ここには双方の意思と同意が形成されていけば、真剣に将来を考えていいということも含意されているわけで、そのことははっきり彼女に伝えています。
もちろん この【プランA】と【プランB】 は、今の段階でどちらかを選んでしまねばならないという性質のものではなく、2人の関係性の今後の展開に応じて、そのどちらかを選んで「いかざるを得ない」であろうという見通しであるにすぎないわけですが、彼女に対しても「現段階でこれについて答えが欲しいというわけではない、最終的には彼女の意思であり 選択である」とはっきり伝えています。
これに対して 彼女は、現段階では 具体的な返答はせず、ただ単に、
チョコレートが欲しい
という、誠に、ASDと統合失調症のmixtureでないとあり得ない、autisticな次元での言語使用で返答をしてきました。
これは、定型発達者的な言語に翻訳すれば、
あなたに私に関わり続けては欲しい。
あなたから私は何かを 獲得し続けたい。
私を「食べさせて」欲しい。
などといった含蓄があるということになるかと思います。
そこで私はそれに対して、さらに3つの選択肢を示しました。
1.そのチョコレートを郵送で病院に送ってほしいというのならば それに応じる
2.そのチョコレートを持って病院を私が訪問し病棟の受付の人にそれを預けて帰るということもできる。
3.そのチョコレートを持って病院を私が訪問し正式にお見舞いするということにして、専門家としての私が担当医師を始めするスタッフと情報を共有するという積極的な対策に打って出るということもできる。
これに対して彼女が選んだのは1.の郵送という形ですので、先日お送りしたような形で送らせていただきました。


彼女がこの選択をしたということは、私が病院スタッフとの接点を専門家としては全く持たないまま、つまりカウンセラーとしての側面というものを病院に対しては全く直接は示さないという形で、自分と私とのプライベートな関係というのをむしろ純粋に大事にし続けたいという意思表示だと私は理解いたしました。
ただし、彼女が、施設長からの虐待経験をここまで生々しく語ることができる段階に達したということは、諸刃の剣ではないかという認識を私は抱いておりました。
一般に虐待経験のデブリーフィングというのは、一方では抑圧されていた感情の想起と再体験であり、感情の安定と解放に貢献する可能性はありますが、同時に彼女のように統合失調症レベルの自我の脆弱性を持っていた場合には、自分自身が生々しく思い出せるようになってしまった感情の「フラッシュバック」に対して、それを自分自身で受け止め、消化していくだけの「容器(container)」…Bionのいう意味での....としての「自我境界」を維持する能力が極めて脆い(fragile)状態にあるとは想定できました。
彼女は一方で安定しては来てはいましたが、他方で、その施設長が現在ものうのうとして生きていると思うと憎いというようなことも話すようになっていました。
そこで、私は現在作業所にも勤務しているという特権を利用してその施設に連絡を取り、彼女の施設リーダーのその後の消息について尋ねたのですが、現在妊娠で休暇中ということでした。
私は自分の所属する福祉施設が今後彼女が快方に向かった場合に社会復帰やグループホームの世話などに関して担当する用意がすでにあり、同僚スタッフとはすでに了解があるので、彼女の今後について特にご迷惑をおかけするということはないだろうということだけをその施設電話に出たスタッフに伝えるに留めました。
さりげなく聞いた範囲では、彼女が以前いたその施設について語っていたことがらとその施設スタッフの言っていたことは 綺麗に一致しておりました。
もちろん、彼女が虐待などを受けていた可能性などについては一言も確認しようとするわけもなく、ただ彼女がその施設の中で当時のスタッフがよく覚えているメンバーの一人であることを確認できたというだけのことですが。
私が彼女に対して、その施設のリーダーが残念ながら今もそこで勤務していることには変わりがないようだということを伝えたところが、彼女と電話ができた 最後の機会となりました。
私の判断では私は現実の施設長が現状でそういう状況にあるということについて、フランクに彼女が知っておく方が望ましいと判断したわけですが、これはちょっと微妙な判断だったかもしれないという思いはあります。
それこそ、その施設長がその施設をすでに辞めているなどという展開でしたら、彼女と祝杯をあげていたところかもしれません(笑)
LINEが既読にもならないところか、彼女のスマホが最初は留守電への転送、そして現在は それすらなくなったということはスマホの電源が自然に消耗したままということだと思います。
おそらく現在の彼女は 閉鎖病棟の中のしかも1人で過ごす部屋で毎日を過ごさざるを得ない 病態水準になっているものと思われます。
しかし、今申し上げてきましたような彼女の これまでの経歴という背景を病院スタッフの皆様はほとんど全くご存じないと思われます。
つまり 彼女 が体験している幻聴的な、人から批判されるメッセージというのは、実は現実の親や施設責任者から受けた虐待という経験の反映という「具体的な原因」があってのものであり、単なる精神病的な内的ファンタジーとしての妄想というわけではないと考えられるわけですね。
このことまで 視野に入れなければ、単に彼女に休息を取らせ投薬するだけでは彼女のそうした精神病的な混乱は容易には収束しないと思われます。
とりあえず、彼女のそのような状況と、私との彼女に対する関わり方のスタンス、そして彼女との間で、彼女がまだ安定した頃に形成していた共通理解がどのようなものであったかということについてお伝えいたしました。
すでに述べたように、彼女は自分が関わる病院スタッフと私の直接接触は望んではいなかったわけですが、こうして彼女の閉鎖病棟の中の独居房での生活が長期化していると思われ、彼女との直接連絡が取れないという状態が漫然と続くというのでは、彼女の回復という観点から見てもpositiveな対応ができるという治療的環境にあるとも判断できませんでしたので、敢えて、彼女には無断ではありますが、彼女についての具体的な情報提供という形でこの書面を送らせていただくという.一歩踏み込んだ対応をすることにしたわけです。
このことをご理解いただき、一緒にご検討させていただければと思います。
すでに彼女の母親とは、たまたま彼女と同席した際に電話にお出になり、ご挨拶したことがありますが、現在統合失調症で精神科病院に入院中と思われる彼女の母親自体の連絡先は私は存じておりませんので、彼女が彼女の母親に対して私との接触を認可するという段取りを取らない限りは、私が彼女あるいは スタッフの皆様と面会するということは手続き上できないという形になっていると思います。
ただ、こちらから、ただ漫然と待つ以外に採ることができる手立ては、こうした書面によるご連絡を、まずすることかな、と判断いたしました。
よろしくご検討のほどお願い申し上げます。
